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●数年分の耳垢がたまっていたケースも

耳の奥がかゆかったりムズムズしたりすると、耳かきや綿棒で耳垢を取りたくなってしまうものだ。もしかすると、どうしても気になって毎日のように耳垢を取っている人もいるかもしれない。

多くの人が日常的に行っている耳かきではあるが、「耳かきをしすぎて耳の穴が痛くなってしまった」「自分ではきちんと耳垢が取れているのかわからない」などの悩みもよく耳にする。今回は慶応義塾大学の神崎晶医師に、耳垢の上手な取り方や注意点をうかがった。

○耳垢は自然と排出されるもの

「耳鼻科の医師として多くの患者さんを診てきましたが、医師の目から見ると、ほとんどの人が耳かきを『やりすぎている』という印象を受けます。耳かきをしすぎると、外耳炎などのトラブルを引き起こす可能性もあるので注意していただきたいです」

神崎医師によると、人間の耳垢は、わざわざ取らなくても自然と外に排出される仕組みになっているのだそう。食事や会話など、顎を動かす動作で外耳道と呼ばれる道から自然に外に出ていく。逆に自分で耳かきをすることで、自然と外に出るはずの耳垢を中に押し込んでしまっているケースもあるという。

「耳垢を中に押し込みすぎると、耳の穴がふさがって耳が聞こえにくくなることもあります。押し込まれた耳垢を耳鼻科で取り除くこともできますが、何層にもなっている耳垢を取り除くのは非常に大変ですし、取っている最中に痛みを感じることもあります。溜まった耳垢に細菌が繁殖して、炎症を起こしてしまう可能性もあるので注意しましょう」

○ベストは耳鼻科で耳垢を取り除くこと

神崎医師は「耳垢を取る頻度は数カ月に一度で十分」と話す。耳の穴の中を顕微鏡などで見ながら取るのが理想だが、なかなか家庭での実践は難しい。そこでベストな方法として、耳鼻科で専門のドクターに耳垢を取ってもらうことをあげる。

「耳鼻科では保険診療内で耳垢を取ることができます。ケースバイケースではありますが、難しい耳垢でなければ費用は両耳で数百円、数分あれば取れてしまいます。顕微鏡で耳の穴を拡大して見ながら、吸い取ったりかき取ったりします」

普段から頻繁に耳かきをしているという患者の耳の穴に、数年分と思われる耳垢がたまっていたこともあったとのこと。それだけ、自分で耳垢を取るのは簡単なようで難しい作業だというわけだ。

●子どもの耳かきは難聴につながる可能性が

親が小さい子どもの耳垢を取ってあげるという家庭も多い。しかし、これも実は危険な行為だと神崎医師は指摘する。

「お母さんがお子さんの耳かきをしているときに耳かき棒が鼓膜に刺さったり、鼓膜を貫通して耳の骨にぶつかったりしてしまい、お子さんが難聴になってしまったという症例もゼロではありません」

どんなに母親が注意していても、子どもが急に動いてしまい事故につながるケースもある。また、子どもが痛がっているのに「耳垢を放置しているのは不潔だから取らなきゃダメ」と、無理に耳垢を取ろうとしたくなるかもしれない。

ただ、子どもが痛がっているということは、何かしら方法が間違っている可能性がある。そんなときは、決して無理強いをしてはいけない。子どもの耳垢も、大人同様に耳鼻科で取り除いてもらうのがベストなようだ。

○水やオイルの使用はNG?

水やオイルを使用して耳垢をやわらかくすると、耳垢が取りやすくなるという話を聞いたことはないだろうか。実際のところは、オイルや水を使用すると耳垢がスポンジのように膨張し、耳の穴をふさいでしまう危険性があるそうだ。

「耳の穴が耳垢でふさがってしまうと、耳が聞こえにくくなる可能性がありますし、耳垢も取りにくくなります。乾燥している耳垢であれば自然にポロリと剥がれ落ちるのに、水分を含むことで穴表面の皮膚に耳垢が付着してしまうのです。世の中には、乾いた耳垢ではなく、ねっとりした耳垢が出る体質の人もいらっしゃいますよね。ねっとりした耳垢の方が皮膚に付着しやすいので、溜まりやすいという特徴があります」

医療機関では、耳垢をやわらかくする耳垢水(じこうすい)という薬品を使用して耳垢を取るケースもあるそうだが、耳垢水は一般的には市販されていない。市販のオイルや水を耳かきに使用するのは、オイルの種類を問わず推奨できないとのこと。オイルを直接耳に入れるのはもちろん、指や綿棒にオイルをつけて耳に入れるという方法も好ましくない。そのほか、殺菌加工が施されていない市販の綿棒は先端に菌が付着している可能性があるため、綿棒で耳の穴をかきむしるのも望ましくないとのこと。

では、耳の穴がムズムズして我慢できないかゆみを感じた際は、どのように対処すればいいのだろうか。

「耳の穴の奥まで綿棒や耳かき棒でかきむしらずに、表面をやさしくこするくらいなら大丈夫でしょう。しかし、そもそも耳の穴がかゆいときは、外耳炎など耳垢以外が原因になっている可能性があります。体質によっては、花粉やほこりが付着してかゆみを感じることもあります」

強いかゆみや違和感がある場合は耳かきだけで解消しようとせず、耳鼻科で相談してかゆみ止めの軟膏などを処方してもらうのがいいそうだ。

●耳垢・耳かきが原因で発生する病気

最後に耳垢にまつわる病気についても、神崎医師に解説してもらった。以下にまとめたので参考にしてほしい。

耳垢栓塞(じこうせんそく)

耳垢が大量に溜まって耳の穴をふさいだり、狭くしたりしてしまう病気。難聴や耳の閉塞感、耳鳴りといった症状に加え、まれに喉の違和感や胃の不快感が生じる。心当たりがある人は、耳鼻科で耳垢が溜まっていないかどうかチェックしてもらうとよい。

外耳道湿疹

耳掃除のしすぎで外耳道を保護してくれる耳垢まで取ってしまうと、皮膚が荒れて湿疹ができることがある。耳鼻科で処方されたステロイド軟膏や抗生剤を使用して治療するのが一般的だ。

外耳炎

耳の穴から鼓膜までの部分に炎症が起こる症状を指す。外耳炎になると耳に痛みを感じることがあり、耳を引っ張ったり押したりすると特に強く痛みを感じる。1〜2日程度で症状がやわらぎ、もともと異常がなかったのであれば数日で自然治癒する場合もある。だが、3日以上経っても改善が見られなければ、耳鼻科を受診するように。放置して重篤な症状に見舞われるケースもまれにあるため、注意が必要と覚えておこう。

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