競技者たちの技術追求と用具の進歩により、パラリンピックの競技記録は伸びる一方。走り幅跳びなどは“生身の世界記録”を抜くのも時間の問題だ

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“現代の魔法使い”こと落合陽一が、人類の未来を予言する『週刊プレイボーイ』本誌の月イチ連載『人生が変わる魔法使いの未来学』。

「もう人口減少を嘆くのはやめませんか? 人口が減ったって、やっていけるという自信が大切。将来に悲観する1億2千万人より、将来に自信と楽観を持つ6千万人のほうが強い」

昨年10月に東京都内で開催されたシンポジウムでそう語ったのは、将来の首相候補と目されている自民党の小泉進次郎議員だ。しかし、自信を持つといっても、一体どうやって?

今回のテーマは、まさにその答えとなる「超AI国家戦略」の話。前編記事に続き、人とコンピューター(人機)が高度に融合する社会を実現できれば、少子高齢化は日本にとって本当に大チャンスになりうるーー落合陽一はそう言うのだ。

■国家戦略スタートのリミットは2019年

―人間とテクノロジーのハイブリッドによって、オリンピック・パラリンピックとか、車いすバスケとか、囲碁とか、あらゆる競技やゲームが楽しくなるのはよーくわかりました。しかし、これがなぜ日本の国家再興戦略に結びつくんですか?

落合 それは、これからの日本がさらなる超高齢社会になるからですよ。

―高齢者とコンピューテーショナル・ダイバーシティって、なんかものすごく相性悪そうですけど…。

落合 いや、むしろ逆です。人間って、70歳超えたら全員ダイバーシティですよね。目が見えづらくなったり、手や足が動きづらくなったり、耳が聞こえづらくなったり、それらに命令を出す脳も衰えたり…。

―高齢者の“能力のばらつき”もダイバーシティだと。

落合 そこでも重要なのが人機融合です。最強の補聴器をつけるとか、めちゃくちゃ高性能な自動運転車椅子に乗るとか、目が見えなくてもAI搭載ゴーグルで補助するとか…。ほとんどの問題は人機融合で解決する。能力のばらつきをコンピューターが補正してくれるんです。

高齢化社会の最大の問題って、生産人口が減って社会全体の生産性が下がることですよね。だけど、人機融合したお年寄りは普通に生産人口になるんです。例えばトラクターが自動運転になれば、ラジコンみたいに操作して農作物を育てられる。しかも人口減少期に入ると住宅も土地も余るから、住居や農地、設備を農協が無償もしくは低額で貸し出すようにすれば、都市部から農村地区の移住者もかなり増えるでしょう。

このように、電気や水道や住居といったインフラが完全に整った社会で人口が減少するというのは、ものすごいチャンスになるんですよ。先日、自民党の小泉進次郎議員と話をしたんですが、小泉さんも「決め手は無人化と自動化だよね」と言っていました

おそらく、自動化イノベーションが行き渡った日本での適正人口は5千万人から7千万人くらいなんですが、今のまま少子化を放っておけば2060年頃には人口が8千万人を割り込むとの推計もあります。これはものすごくちょうどいい。自動化イノベーションはもともと何もなかったところに生産性を生み出すので、誰かが得して誰かが損するゼロサムではなく、純粋に豊かになりますから

―少子高齢化ニッポン最強説…すごい!

落合 逆に言うと、この分野に早く戦略的に投資を集めないと、日本は完全に手遅れになると思います。今のままだと、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後にすさまじい不況が来ることは目に見えているわけですから、遅くとも2019年には政府がそういう“明るい未来”を提示しないと、日本に対する投資がサーッと引いていってしまう。

それと、この国家再興シナリオにおいては、今、移民をたくさん入れて人口を増やそうとするのは完全に逆効果です。見かけのGDP(国内総生産)は一瞬上がるかもしれませんが、その後の生産性はものすごく下がってしまう。移民が社会に入ると、確かにダイバーシティの度合いは上がるけど、それが機能するまで20年から30年はかかりますからね。その間に、この国はもう再起不能になっていると思う。

―じゃあ、うまく人口を減らしながら人機融合を含めた自動化イノベーションを進めていければ、日本は少子化国家のモデルケースになる?

落合 まさにそのとおりで、 これは日本の重要な輸出品になります。中国が超高齢社会に突入する2025年から30年頃までに、この自動化イノベーションモデルを他国にも展開できるレベルまで高めておければいい。若い世代はここが最大のビジネスチャンスだから、ディープラーニングをはじめ、機械学習を用いて人間の数を増やさずに問題解決をする手法に慣れ親しんだり、勉強したりしておくべきでしょうね。

それと最近、もうひとつすごいことに気づいてしまったんです。こうやって人機融合を進めていくと、その先に「超知性=スーパーAI」の完成があるんですよ。

〈超(スーパー)AI=Σ(シグマ)ダイバーシティ〉

式で書くとこうなるんですけど。

―全然わかりません!

落合 腕の代わりになる機械、足の代わりになる機械、目の代わりになる機械、耳の代わりになる機械、記憶を補完する機械…と、それぞれにニーズがあり、投資が集まって開発が進んでいくわけですよね。で、その技術をすべて1台のロボットに搭載すると、“人間そのもの”ができるんですよ。それは強い人工知能というまではいかないかもしれませんが、自動化のための“人間の補集合AI”になるはずです。

―おおぉ!

落合 ダイバーシティの垂直統合こそが、スーパーAIへの最短ルートであるーーそのことに気づいたってことです。大事なのは、個々のニーズを見つけてお金を回収しつつ、全体としての最終的なゴールを見るということ。この戦略なら、日本はグーグルやアップルと真っ向から戦う必要もなく、ブルーオーシャンに一番乗りです

(構成/小峯隆生 写真/時事通信社)

●落合陽一(おちあい・よういち)

1987年生まれ。筑波大学学長補佐。同大助教としてデジタルネイチャー研究室を主宰。コンピューターを使って新たな表現を生み出すメディアアーティスト。筑波大学でメディア芸術を学び、東京大学大学院で学際情報学の博士号取得(同学府初の早期修了者)。最新刊は『超AI時代の生存戦略 シンギュラリティに備える34のリスト』(大和書房)