理論空燃比よりも燃料が少ない状態で燃焼すること

 リーンバーンというのは、エンジンの燃焼についての用語です。燃料は空気中の酸素を使って燃焼します。そのときに、燃料と空気の量は一定の比率があります。これを理論空燃比(ガソリンエンジンでは14.7(空気):1(燃料))といいます。その比率よりも燃料が多ければ、燃焼せずに燃え残ることになり、排気ガスの中にHC(炭化水素)が出ていきます。

 逆に燃料が少ないと、燃焼が不安定になったり、燃焼しなかったりして、エンジンが上手く動かなくなります。それがリーンバーンという状態です。しかし燃費を向上させるために、燃料が少ない状態でも上手くエンジンを動かしたいので、技術開発によってリーンバーンが可能になったのです。

 なぜリーンバーンが燃費を良くするのか? それはガソリンエンジンではスロットルがあり、空気の吸入量を制限しているからです。ガソリンエンジンでは基本的に吸い込んだ空気の量で出力が決まります。だから必要な出力分の空気量だけに調整するために、スロットルで絞っているというわけです。

 しかし絞っているということは抵抗になっているわけで、エンジンが本来吸い込もうとしている力をロスしていることになります。エンジンブレーキというのがありますが、スロットルが全閉でエンジンの吸気抵抗が最大になっている状態です。クルマを減速させるほどの抵抗が発生するんです。

 リーンバーンでは燃料の量が少ないわけですが、それは逆にいえば空気の量が多いのです。つまり同じパワーを出力しているものの、スロットルボディは通常の燃焼よりも開いているので、吸気抵抗が少なくなります。その少なくなった吸気抵抗の分が燃費を良くするのです。

 ディーゼルエンジンはなぜ燃費がいいのか? それは燃料の持つカロリーが10%くらい高いことが前提にはあります。しかしディーゼルの燃焼では燃料と空気の量がどうにでもなるので、リーンバーンでも何ら問題ありません。パワーは燃料の量で決まり、空気の量はどうでもいいのです。だからディーゼルにはスロットルがなかったのです。ただ現代のディーゼルでは排気ガス対策のためにスロットルが付けられています。

 リーンバーンには排気ガス対策の面で、大きな問題があります。ガソリンエンジンの理論空燃比は14.7ですが、リーンバーンでは30とか40、あるいは50といったような空気が多い状態で燃焼させます。その状態そのものはあまり問題になりません。しかしパワーが必要な状況、つまり多くの燃料を入れたい場合には通常の燃焼に切り換える必要があります。

 リーンバーンから通常燃焼に切り替わる時、燃焼室内の環境が大幅に変化します。そしてその時に大量のPMやNOxが出てしまうのです。とくにNOxは浄化するのがイチバン厄介で、そのために燃料を使うことになるので、燃費が悪化してしまいます。

 それを避けるために、ゆっくりと燃焼状態を切り換えたくなるのですが、そうするとアクセルを踏んでいるのに、いつまでもパワーが出てこないという現象になってしまいます。その場合もまた、ドライバーが多めにアクセルを踏んでしまうことで、結果的に燃費が悪化してしまいます。

 燃焼を切り換えるのは、そういった不都合があります。だからパワーが必要な時は燃焼を変えずに過給圧を高める、というのがひとつの答えになりますが、その場合はターボラグによってレスポンスを維持することが難しくなってしまいます。

 そうしたリーンバーンの将来が、HCCI(予混合圧縮着火)ということになります。排気ガスがクリーンなのが特徴ですが、効率の高さも同時に実現します。世界に先駆けて市販する予定のマツダでは、熱効率が30%向上すると言っているので、燃費も15%くらいは向上するかもしれません。ただ理想をいえば、点火プラグのない=通常燃焼に切り換えないHCCIになってもらいたいですね。