金正恩氏

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トランプ米大統領は16日、ツイッターに「北朝鮮の金正恩は非常に賢く、理にかなった判断をした」と投稿した。金正恩党委員長が、米領グアム周辺への弾道ミサイル発射を保留する見解を示したことを評価したものだ。

このやり取りに、ホッと胸をなでおろした人は少なくないだろう。

「粛正動画」を公開

正恩氏が、どれだけ本気でミサイル発射を考えているのか、また、発射が最終的に断念されるのかはいずれも不明だ。しかしいずれにせよ、発射が実行されれば「とんでもないことになるかもしれない」とは、誰もが感じる。そこへ向けて突き進むか、回避するかは、ひとり正恩氏の判断にかかっていたわけだ。

正恩氏はまんまと、世界の注目を自分に集めて見せたのである。

そんな正恩氏も、かつては何かする度に「ウザい」「めんどくさい」などと陰口を言われていた時代があった。とくに軍の兵士たちは、ささいなことで正恩氏からひどい目に遭わされていたこともあり、非常に辛口だったようだ。

(参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路

韓国紙・東亜日報の名物記者で、自身も脱北者であるチュ・ソンハ氏によれば、正恩氏は父・金正日総書記の後継者としての修業時代、抜き打ちで軍施設を視察することが多かったという。

チュ氏によれば、北朝鮮の最高指導者が視察を行う場合、現場は数カ月がかりで受け入れの準備を行う。正日氏の場合、現場が用意した動線に沿って見て回り、記念写真を撮って帰って行った。

ところが正恩氏は、抜き打ちで軍施設を訪れたかと思えば裏庭にまで入っていき、「タバコの吸い殻がなぜこんなに多いのか」などと言って激怒。その度に大幹部らがホウキを持ち出し、ゴミを片付けるあり様だった。

こうした正恩氏の振る舞いに対し末端の兵士らは、「青年大将同志(正恩氏)はせせこましい」と陰口を言っていたという。

また、正恩氏が厳しいのは民生施設に対しても同様で、2012年に平壌市内の遊園地を訪れた際には自ら歩道の雑草を引き抜きながら、「施設の更新は難しいとしても、手があるのにどうして雑草を抜かないのか」と怒りを露わにした。ちなみにこのエピソードは国内メディアで報道されたのだが、チュ氏によれば、このときまで最高指導者が怒った事実が明かされるのは異例のことだったという。

しかしその後の展開を見れば、これしきのことは牧歌的な出来事でしかなかった。

正恩氏は一昨年、スッポン養殖工場を現地指導した際、管理が行き届いていないことに激怒し、支配人を銃殺させた。それだけでなく、そのときの様子を動画で公開。一般庶民を震え上がらせたのだ。

こうした正恩氏の「キレやすさ」は生来のものであるとか、トイレも普通に使えないほどストレスの多い生活をしているためだとか、諸説ある。

ひとつ言えるのは、場当たり的に怒りをぶつけているように見えていた正恩氏も、今や世界を相手に、非常に危険で刺激的でもあるパフォーマンスを演じられる指導者に成長してしまったということだ。

正恩氏は、まだ33歳の若さである。このまま放置したら、いっそう手の付けられない存在にもなりかねない。

もっとも、あれほどの恐怖政治で抑えつけられ、北朝鮮国民が正恩氏の陰口を言わなくなったかと言えば、そうではない。北朝鮮の問題を解決する糸口は、もしかしたらこの辺にあるのではないだろうか。