フリーペーパーは、非常に自由度が高いメディアです。それゆえに、作る人の思想や熱意が誌面に色濃く反映されます。

そんな個性豊かなフリーペーパーを作っている人はどんな人なんだろう?

フリーペーパー専門店「ONLY FREE PAPER」スタッフが、数ある作品の中から特に気になるものを選出し、作者にお話を伺う連載「フリーペーパー学」。

第3回目は、東京都奥多摩町の公式タブロイド『BLUE+GREEN JOURNAL』を制作する、株式会社ミゲルの宇都宮浩さんと曽田夕紀子さん。

仕事上のパートナーであり実生活では夫婦でもあるお二人は、2015年に奥多摩町に移住。現在は自宅と都心の事務所を行き来しています。

そんなお二人に、町の公式媒体として作っている本誌や移住のことについて伺いました!

BLUE+GREEN JOURNALとは?

印象的な写真やイラストを軸に、ガイドブックでは伝えられない奥多摩町の奥深き魅力を発信する、奥多摩町公式の無料タブロイド。2016年創刊。

手前から順に『BLUE+GREEN JOURNAL』1号、2号、3号

都心から奥多摩へ移住

--都会暮らしだったお二人が、奥多摩に移住することになった経緯はなんでしょうか。

曽田:もともと私は田舎暮らしがしたいと思っていたんです。彼は全然ノリ気ではなかったんですが、奥多摩に遊びに行くようになって、ここだったら現実的に都心で仕事をしつつ暮らせるなと。それでゆるく物件を探すようになって、2年後くらいにこの家を見つけました。

宇都宮:都会暮らしに慣れていたので、川で普通に泳げることにまず感動しました。川遊びって子どもの頃からあんまりやったことがなかったから。今は週に2、3回はお茶の水の事務所に行きますが、それ以外は奥多摩で仕事をしています。

奥多摩のご自宅に住む猫たち。奥は都心時代からの同居猫「モス」、手前が最近仲間入りしたという「さとる」。

誰にも束縛されない、自由な紙媒体を作りたい

--奥多摩への移住から1年経たないうちに『BLUE+GREEN JOURNAL』を創刊していますが、移住前から発行の準備をしていたのですか?

曽田:普段から雑誌や書籍の仕事をしているので、奥多摩の魅力を発信する紙媒体を作りたいねという話は前からしていました。で、こちらに移住してたまたま聞こえてきた町内放送で<元気なまちづくり推進事業>というものを知り、急いで調べて資料を作って、その1週間後にプレゼンに行きました。

宇都宮:今まで受注の仕事を忙しくやってきたので、誰にも束縛されないで自分たちの思う良い紙媒体を作りたい、という気持ちがお互い高まっていたんです。そのタイミングで<元気なまちづくり推進事業>の存在を知りました。

--町の事業ということなので、内容には町の意向もかなり反映されているのでは?

曽田:最終的にはこれを見て移住者が増えたら良いね、というのは町の意向とも一致しているのですが、具体的な内容についてはほとんど私たちが自由にやっています。無料配布というのも、多くの人に手に取ってもらえるということでこちらから提案しました。


--本誌は町内ではほぼ100%の認知率とのことですが、地元の人からの反応はどうですか?。

宇都宮:「イラストが面白い」とか「すごくいいね」という声を予想以上にもらっています。町のオフィシャルマガジンということで役場が駅やバス停に置いてくれたり、あとは観光案内所や飲食店などにも置かれています。

曽田:回覧板でも回してくれていて、奥多摩の人はみんな知ってくれています。

宇都宮:デザイン性にこだわっているので「文字が読みづらい」と言われることもありますが、ペラペラとめくりながら「見ていて楽しい」「なんかすげえ!」と感覚的な面白さを伝えることも、タブロイドとしての機能だと思います。

本屋さんに売っている雑誌から、そういう面白さがどんどんなくなっていると僕らは感じていて……『BLUE+GREEN JOURNAL』はできるだけ思い切ってやる場にしたいという考えています。

曽田:フリーペーパーやインディーズ系の雑誌は突き抜けた発想のものが多いじゃないですか。それはやっぱり、編集長やアートディレクターが強い思いを持って作っているからで、雑誌ってそういうものだと思うし、自分たちもそういうものを作りたいなと思っています。

奥多摩移住のメリットとデメリット

--都心から奥多摩に移住し、環境がガラッと変わったと思いますが、生活面ではどんな変化がありましたか?

曽田:物理的にお店が少ないというのもあって、自炊をするようになりました。畑をやったり、味噌を作ったりとか、“日々の生活を楽しむ”ということを考えるようになりましたね。

宇都宮:あとは、生き物に優しくなった。

曽田:虫を殺さなくなりましたね。蛾とかもすごくいっぱいいて、最初はいちいち殺してたんだけど、もうきりがない。この環境では私たちがアウェイな身なので、殺生するということに抵抗が出てきました。

宇都宮:そこはめちゃくちゃ変わったね。あと車で走ってて鹿に遭遇したりとか、猿やイノシシが畑を荒らしたりとか、動物の気配を身近に感じるので、対生き物ということに関してはここではすごいアウェイ感がありますね。


--住んでいる人の雰囲気や距離感なども都心と違いますか?

曽田:都心にいた頃はご近所付き合いがなかったんですけど、こっちは大家さんが野菜をくれたり、一緒にバーベキューをしたりと距離が近いです。最近は奥多摩の移住者の仲間がどんどん増えてきました。

宇都宮:田舎暮らしがしたいとか、静かなところで子どもを育てたいとか、明確な理由があってちょっとしたハードルを越えながら来た人たちばかりなので、自分のやりたいことはやる、みたいな気質をみんなそこはかとなく持っていますね。食べ物や暮らしぶりとかも、自然に選択している感じが僕らにとっては心地良いし、学ぶところがあります。

--移住のデメリットは感じていますか?

曽田:デメリットが、思ったほどないんです。強いて言えば、以前は徒歩30秒でコンビニに行けるところに住んでいましたが、今は車で15分行かないとお店がないです。そういうのも慣れちゃえば全然不便じゃないんですけどね。

宇都宮:夫婦の関係性という視点でも、奥多摩移住はいいんじゃないかなと。こういうところに住むと協力し合わないと生きてけないんですよね。連携や気遣いが多少なりとも必要になっていくので、家庭円満になる人が多いんじゃないかな。

移住から2年ちょっとで、奥多摩は完全にお二人の暮らしと働くフィールドとなっているようでした。仕事面でも生活面でも信頼関係を深め続けるお二人を見ていると、奥多摩に移住するのもいいなあ〜と思えてきてしまいます。

オススメの「奥多摩ごはん処」TOP5

最後に、お二人に奥多摩のオススメごはん処を伺いました。

<第1位>お食事処 ちわき
1番のオススメは山菜の天ぷらが美味しい「そば天盆」。見落とされがちだけれど、わざわざ行く価値あり。川沿いで風情のあるお店(曽田)

<第2位>丹三郎 (たんざぶろう)
古民家をそのまま利用しているそばの店。魂のこもったそばとそばがきが非常に美味しい(宇都宮)

<第3位>蕎麦太郎カフェ
町民はワンコイン(500円)で食べられる。ここもやっぱりそばがオススメ(曽田)
店もシンプルで木の温もりがあって良い(宇都宮)

<第4位>三河屋(土蔵食亭)
宿屋として古くからやっているところで、蔵を食堂にしている。茶そばがオススメ(宇都宮)

<第5位>手打蕎麦 ごろう
御岳の駅の近くだから青梅市なんだけど、上品でつゆがとても美味しい(曽田)
そばが完売で食べられないことがあるので早めに行くといい(宇都宮)

特に指定はしなかったのですが、TOP5全てそば!というそば好きなお二人と、そば事情に恵まれた奥多摩でした。

また奥多摩町にはそば処だけでなく、移住を支援する魅力的な制度もたくさんありますので、自然に囲まれて人生を歩んで行きたいという方はぜひ調べてみてください!

なお、『BLUE+GREEN JOURNAL』配布場所一覧、およびこちらのインタビューのフルバージョンはONLY FREE PAPER HPにて公開中です。

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