圧倒的な強さで連覇を続けるユベントス。どんなにあがいてもそれを阻止することができないローマとナポリ。そしてかつての栄光はどこへやら、ダメダメのミラノの2チーム。ここ数年のセリエAはこんな状況の繰り返しだった。しかし今週末から開幕する2017〜2018シーズンは、これまでとは少し異なった様相を呈している。

 とはいえ、やはりスクデット争いのポールポジションにいるのはユベントスだ。セリエAで前人未到の6連覇を果たした強さはだてダテではなく、テクニカル面でも突出している。ただ、これまでのようなライバルを寄せつけないほどの強さは、多少、影をひそめるかもしれない。

 今シーズン初の公式戦、ラツィオとのイタリアスーパーカップで、ユベントスはまさかの敗戦を喫している。なによりも大きいのは、ユベントスが誇る鉄壁の守備の象徴とされていたBBC(レオナルド・ボヌッチ、アンドレア・バルザーリ、ジョルジョ・キエッリーニ)トリオの崩壊だ。


ユベントスからミランに移籍したDFレオナルド・ボヌッチ

 連覇の立役者のひとりでもあったボヌッチが自ら望んでチームを後にしたこと、それもライバル、ミランに移籍したことはユベントスにとって大きなショックだった。チームのレジェンド、アレッサンドロ・デル・ピエロも「最初聞いた時は冗談だとしか思えなかった」と言うほどだ。

 ダニエル・ルガーニや、ボヌッチとトレードするような形でミランから加入したダニエル・デ・シリオといった若手イタリア人DFはいるが、彼らが新たな伝説を作り出すようになるにはもう少し時間がかかるだろう。

 もちろんユベントスも選手を奪われてばかりではない。昨シーズンから本格的に使い始めた4-2-3-1の攻撃的システムに合わせて、サイドの突破力に定評のあるドゥグラス・コスタをバイエルンから、イタリア人ファンタジスタ、フェデリコ・ベルナルデスキをフィオレンティーナから獲得している。

 トップのゴンサロ・イグアインは健在だし、誰も(特にネイマールの抜けたバルセロナ)が狙っているパウロ・ディバラには、エースナンバーの背番号10を与え、他のチームに移籍しないよう予防線を張った。

 常に勝利が至上命令となるユベントスは、リーグとチャンピオンズリーグ(CL)双方で結果を出すため、各ポジションに2人のレギュラークラスの選手をそろえようとしている。連覇を記録中のリーグよりも、3年連続決勝で敗れているCLのほうに気持ちが傾くのは否めないかもしれない。そこをすかさず突こうとしているのがナポリ、ローマ、そして復活の兆しを見せ始めているミランとインテルだ。

 中でもライバルの最右翼はナポリだろう。ナポリの強みは何といっても昨シーズンとほとんど変わらぬメンバーで戦えるということだ。マウリツィオ・サッリ監督の指揮するテンポの速いパスサッカーはチームに浸透させるのに時間がかかるが、移籍の噂のあったドリース・メルテンスやロレンツォ・インシーニェらもチームに残り、開幕からナポリらしいサッカーをすることができる。

 選手を一新するチームが多い中、スタートダッシュで差をつけることができるかもしれない。ここ数年、上位をキープしながら、どうしてもユベントスを越えられないナポリ。最後に優勝したのはまだマラドーナを擁していた1989〜90シーズンのこと。今年こそ、という気持ちは非常に強いだろう。

 その次に注目したいのはミラノの2チーム。ユベントスに次ぐ優勝回数を誇りながら、ここ数年まるで鳴かず飛ばずのインテルとミランだが、どちらも今年は最後の最後までスクデット争いに絡むと予想される。ただ、その理由はそれぞれ異なる。

 インテルの最大の武器は「監督」だ。新たに就任したルチアーノ・スパレッティ監督はバラバラ感の強かったインテルをほんの数週間でまとまりのあるチームに変身させてしまった。今のインテルは全てのプレーにきちんとした方向性があり、秩序だった動きができる。夏のプレシーズンマッチでは6勝1敗1引き分けの好成績で、バイエルンやチェルシーにも勝利しており、イタリア各紙は”夏のスクデット”をインテルに与えている。

 一方のミランの強みは「補強」だ。オーナーがベルルスコーニから中国企業に代わり、補強に巨額の資金を投入、まさに選手の”爆買い”を敢行した。ここまで獲得した選手は15人、使った額は2億ユーロ(約260億円)に達する。

 その中にはユベントスのボヌッチをはじめ、昨シーズン、ポルトでブレイクしたアンドレア・シウバ(移籍金3800万ユーロはミラン歴代3位)、ラツィオのキャプテンも務めたMFルーカス・ビグリア、ヤヤ・トゥーレ2世の呼び声も上がるブレイク中のフランク・ケシエ、そして開幕直前にはフィオレンティーナからニコラ・カリニッチも手に入れている。移籍金0の選手ばかり集めていた数年前に比べると天と地の差だ。

 サポーターの期待度も高まっており、シーズンチケットは発売初日から飛ぶように売れている。ただ、不安材料なのはGKジャンルイジ・ドンナルンマとDFアレッシオ・ロマニョーリ以外のレギュラー9人が変わってしまうことだ。新戦力がチームに慣れるには時間が必要だ。スパレッティに比べれば経験の浅いヴィンチェンツォ・モンテッラが、どれだけ早くまとめられるかが成功のカギを握る。

 ローマは昨シーズン2位。本来ならユベントスの最大のライバルとなるべきなのだが、他のチームに比べるとやや見劣りする。財政上の問題からモハメド・サラーやアントニオ・リュディガーなど多くの主力選手を売らざるを得なかった。

 新たに監督に迎えたエウゼビオ・ディ・フランチェスコは元ローマのMF。サッスオーロでの手腕を買われての抜擢となったが、ビッグチームを率いた経験はない。なにより25年間ローマに君臨したフランチェスコ・トッティのいない初めてのシーズンとなる。彼の不在はどうしてもチームに影響を与えるだろう。

 今シーズンからCLのイタリアチーム出場枠が4に増える。少し大きくなったパイを目指して、今挙げたチーム以外も上位を目指してくる。スーパーカップを勝ち取って勢いづくラツィオ、若手育成のうまいアタランタなども、あわよくばと思っているはずだ。また、今シーズンからセリエAには正式にビデオ判定、VARシステムが導入される。これが試合にどのような影響を与えるかも、注目すべき点である。

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