福岡を率いる井原監督。長崎戦では4試合ぶりの黒星を喫し、攻撃面での課題を認めた。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全3枚)

 シュート数は福岡の10本に対して、長崎はわずか2本だった。しかし、この数字に反して凱歌を上げたのは、2本のうちの1本でゴールネットを揺らしたアウェーチームだった。

 
 2位・福岡と5位・長崎が対峙したJ2・28節、注目の上位決戦。順位を物語るかのように、試合の主導権は福岡が握った。岩下敬輔と冨安健洋のCBコンビを軸に相手の攻撃を弾き、攻めては最前線に入るウェリントンのパワーと高さを生かしてゴールに襲いかかる。シンプルなパターンではあるが、今季の福岡が勝点を積み上げて来た形で流れを引き寄せた。しかし、誤算だったのは前半終了間際の失点だ。
 
 45分。島田穣のCKに対応したウェリントンと駒野友一のポジションが重なると、ボールを搔き出せずにまさかのオウンゴール。先手を取られた福岡は後半に入ると、前半以上の圧力で敵陣に攻め込んだ。
 
 しかし、相手を押し込んでいたなかで起こった不運な失点は、最後まで福岡に重くのしかかる。次第に焦りが生まれ、中盤の組み立てのミスからボールを失う場面が多発。これを嫌ってなのか、前半以上にロングボールを前へ入れて、強引にこじ開けようとするも淡白な攻撃で相手に脅威を与えられない。終盤になると、相手は6バックでさらに強固なブロックを構えてきた。
 
 結局、福岡のストロングポイントであるパワーを生かしたアタックは最後まで不発。1点差を追いつけず、痛恨の敗戦を喫することとなった。
 
 シュート数やポゼッションで相手を大きく上回っても、決定打が生まれず、逆に相手にワンチャンスを決められて敗れるという展開は、サッカーというスポーツでは往々にして起こり得る事象だ。ただ福岡の場合、こうした展開がやや多いかもしれない。今季の敗戦のほとんどがこのパターンによるものだからだ。5月以降に喫した敗戦6試合のうち、5試合は先にリードを奪われ、相手にそのまま逃げ切りを許している。
 
 その要因は先制点を許すと、攻めが単調になってしまうからに他ならない。とりわけ、ビハインドを背負うとウェリントンのパワーに頼りがちな部分があり、攻めが単調になっている。この試合でも失点を喫すると、攻撃が空中戦に偏る傾向が散見。その点に関しては井原正巳監督も「最後はロングボール中心になりましたが、あれだけ引かれるとサイドからのボールが多くなってしまう」と話し、「先制点を許してしまうと我々の攻撃が行き詰まってしまう」「引かれた相手に対しての崩しは今後の課題」と改善が急務であることを認めた。
 空中戦に頼りがちな攻撃を改善する意味で、今後の鍵を握りそうな選手がいる。7月24日に横浜から加わったドリブラーの仲川輝人だ。
 
 この試合では60分からピッチに立つと、左右に流れながら好機を演出。アタッキングサードで攻撃に変化を生み、相手の脅威となった。ただ、その効果を感じさせたのはわずかな時間。75分過ぎから再びパワープレー気味のアタックが主となると、仲川の持ち味は効果的に発揮されなくなった。
 
「福岡がパワープレーから変化して(ドリブルなどでもっと仕掛けて)くれば、自分たちは対応できなかったかもしれない」
 試合後に敵将の高木琢也監督もこう話しており、ドリブルで掻き回し、背後のスペースを使えば、より相手に脅威を与えられるだろう。また、アグレッシブな仕掛けはペナルティエリア内でのPKを誘発する可能性を秘めており、仲川のプレーがより生かされるようになっていけば得点のバリエーションが広がるはずだ。
 
 次節の相手は勝点6差の3位・名古屋。今後の昇格争いの行方を左右する大一番となるが、ウェリントンは累積警告のため次節から2試合ピッチに立てない。しかし、エースの不在は、逆に言えば仲川を生かした攻撃を成熟させる好機でもある。「自分がもしスタメンで出るのであれば、準備はできている。アビスパに来てチャンスは作っているけど、点が取れていない。チームの勝利のためにも自分が点を取って勝たせたいという気持ちが強い」とは仲川の言葉。横浜からやってきた25歳のドリブラーが、福岡を再び上昇気流に乗せるキーマンになるだろうか。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)