非日常の景色が広がる「貨物線」の旅!鉄道マニアだけでなく旅好きの心をくすぐる鉄道ツアーの体験とは

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「貨物列車」と言われて、人は何を思い浮かべるだろうか。
鉄道は、日本の物流を一手に引き受けていたように、そもそも貨物の輸送を目的として敷設されることが多かった。
古くは石炭輸送を目的として、北海道や北九州では網の目のように路線が張り巡らされていたことを考えれば、分かっていただけると思う。

しかし戦後となり、道路網が整備されるにつれて自動車での貨物の輸送が著しく成長し、昭和40年以降は鉄道が貨物輸送に占める割合は大きく減少した。

現在に至っては、輸送重量(トンベース)では自動車が約9割と圧倒的なシェアを占めるのに比べて、鉄道は約1%でしかない(国土交通省Webサイトより)。
しかし輸送距離を合わせて考えた「トンキロベース」では、自動車が約60%、内航海運が約30%で、鉄道は約4%のシェアを維持している(同)。

最近では地球の温暖化対策に配慮し、CO2排出ベースで地球に優しい鉄道での貨物輸送をJR貨物もアピールしている。
また東日本大震災発生時に、道路網が寸断されたため、特別な貨物列車を仕立てて東北地方へガソリンを輸送したことも記憶にあたらしい。

これらの災害時にも鉄道の貨物輸送は、現在でも活躍しているのだ。

特に首都圏などの大都市圏は旅客列車の輸送密度が高いこともあって、こうした鉄道での貨物輸送のために、専用の「貨物線」を引いて対応していることもある。

首都圏の路線で有名なのは、以下のような路線がある。
・一部が湘南新宿ラインと共用されている山手貨物線や東北貨物線
・東京湾沿いや東海道線と並行して走る東海道貨物線
・武蔵野線の終点である府中本町から鶴見に至る武蔵野貨物線
・鶴見から桜木町間の高島線
・小岩から金町間の新金貨物線
・小岩から越中島へ行く小名木川貨物線

ちなみに武蔵野線や京葉線は、当初は貨物用のバイパス線である東京外環状線の一部として整備されている。

こうした貨物線は、旅客営業路線ではないので、通常は乗車することができない。

しかし通れないからこそ通りたいと思うのは鉄道マニアならではの心理だ。
実は、こうしたマニアの心理を上手に刺激し、くすぐった「貨物線ツアー」という企画があるのだ。

ドワンゴが主催している「ニコニコ超会議」に合わせて昨年まで5回にわたって走った、鉄道マニアでもある元カシオペア向谷実さん企画の特別列車「超会議号」も、首都圏の貨物線を縦横無尽に走ることから人気だった。

今回紹介する「貨物線ツアー」もこれと同じで、旅程は以下のようなものだ。

走行距離約240キロを1日約7時間かけて走る、かなり壮大な旅になっている。
・池袋駅を朝出発して山手貨物線を通り、りんかい線へ進入
・そこからそのまま京葉線の路線に入って外房線誉田駅へ
・折り返して総武本線に入り新小岩駅へ
・折り返して新金貨物線経由で松戸駅へ
・折り返して常磐貨物線を経由して田端操車場へ
・折り返して山手貨物線に入り、横須賀線にスイッチしたら逗子駅へ
・折り返して根岸線を経由して高島線へ
・横須賀線に戻って品川駅が終着

このツアーのポイントは、いくつかある。
・普通は乗れない常磐貨物線と高島線、新金貨物線に乗れること
・りんかい線→京葉線
普段であれば新木場で止まるところだが、そのままぶち抜いて進行する。
これまたマニア心をくすぐる路線設定なのだ。
・横須賀線から根岸線に入るというのもレアである

筆者個人としては常磐貨物線や山手貨物線はすでに超会議号で乗った経験があるので、特に興味を引かなかった。しかし、まだ乗ったことのない新金貨物線と、りんかい・京葉線貫通はなかなか興味をそそられたのだ。

もちろん、こうした特別なツアーは、その存在が知られると、予約開始後、あっという間に売り切れてしまうのが世の常だ。
筆者も通常の申し込みには間に合わず、キャンセル待ちで、ようやく運よく当選したので参加できたというほど難関なのだ。

ちなみにこのツアーの定員は150人。なんとキャンセル待ちしていた人数は600人。
旅行代金は大人1人2万2000円で、お昼のお弁当とお土産グッズが付くものの、ちょっと高すぎという声もあったようだが、この列車には「宴」(うたげ)という6両編成オールグリーン車のお座敷列車が使われることも考えると、まあ妥当な価格なのかなといったところだろう。
なお「宴」列車は、2012年に走った第1回の超会議号でも、さまざまなところを通るミステリートレインとして運行されたことがある。

ではここからは、実際に乗ったリポートをお届けしていこう。
ツアーは7月15日と7月22日の両日に行われた。
筆者が参加したのは7月15日の回だ。

さて当日である。テツの朝は早い! 8時半に池袋駅北口に集合だ。
受付を済ませたら団体ツアーによくあるバッジを渡され、参加者であることを分かるようにする。
ツアーの募集としては「お1人様」「家族向け」などいろいろなパターンがあったらしく、グループがいくつかできていた。筆者は1人なので当然お1人様コースだ。どうやら、お一人様コースだからキャンセルが出たようだ。

顔ぶれを見てみると、9割方は男性。しかも30代〜50代といったところだろうか。
ただし全体を見渡すと、夫婦で参加している人や、子供と来ている人、女性の1人旅などもいて、かなりバリエーションがある感じだ。

基本的には“テツ分”は濃い感じではあるが、女性1人で参加されている方の中には、ただ旅が好きだからという理由で来られた人もいた。女性でかつ、年配の方もいたのが意外だった。


宴の車内


ちなみに宴だが、先ほども述べたようにグリーン車専用車。
今回の運行は「グリーン車指定席急行」という扱いなのだという。急行なんだ。ふーん。あと全部の車両がお座敷となっており、畳敷きだ。
掘りごたつ風になっている車両と、そうでなくただの畳敷きだけの車両がある。
筆者が乗ったのは掘りごたつ風の6号車。筆者は足が少し悪いのでこれはちょっとうれしかった。
ちなみに6号車は末端の車両。最初は最後尾だが、途中で何度か進行方向が切り替わるので、先頭になる場合もあったので、これはよかった。

列車は8時59分発。その3分前に入線してきた。そして定時発車だ。


お決まりの「団体」表示


まずはひたすら山手貨物線を走る。
これは埼京線や湘南新宿ラインが走る線路と同じなので、あまりありがたみがない。

そして大崎に到着。
ここで車掌と運転手が、りんかい線の方に代わる。
車掌は3人体制でなんか物々しい感じだ。ただ、こうした特別列車に乗ることを楽しんでいるようにも見えた。車掌さんだって同じだよね。もともと乗客以上に鉄道が好きなんだから。

そして山場の新木場である。
りんかい線は新木場までで、ここから先の京葉線へ入ることはめったにない。
今回の目的の1つが、発車してから40分でまず訪れた。
新木場からはJRの運転士さんと車掌さんが搭乗してきた。定刻通り2分の停車ののち、9時44分に出発した。


いよいよ新木場を出発


京葉線との接続だが、りんかい線からの線路が回り込んで入るようになっており、京葉線からの方が高速で突入できるように配線されている感じだ。
ちなみに新木場から先に接続している線路はさびており、通常では走っていないことがよく分かる。

その後は京葉線をひた走り、蘇我へ。そして外房線に移ったあとは、誉田駅まで進む。10時32分着。誉田駅では8分の停車時間が設けられ、この時はドアも開いて外に出られた。


新木場駅を発車し、京葉線に



誉田駅では外房線の普通列車と隣り合わせに


そして誉田駅でひっくり返って、筆者の乗っている6号車がここからは先頭となった。
もう一度外房線を戻って蘇我に行き、そこからは総武線に入って千葉を経由し、新小岩信号所まで走る。

ここでもう一度ひっくり返って、見所のその2、新金貨物線へと入ることになる。
新小岩信号所には11時20分着。ここで7分間の運転停車(ドアが開かず止まっていること)である。


今回の旅ではいろいろな車両とすれ違った。これはEF65 1000番代。40年くらい前にはブルートレインを牽引した電気機関車だ


新小岩信号所を11時27分に出発した後は、線路をいろいろと切り替わり新金貨物線へ。新金貨物線は、単線の貨物線だ。
ちなみにこの路線を営業路線にしようという地元の動きもあるらしく、たまに地元の方を対象とした乗車ツアーも組まれているようだ。
葛飾区を縦に走っている線路なので、確かに営業路線となったら便利かもしれない。
筆者の住んでいる近くにある小名木川貨物線(越中島支線)と一緒に営業路線化してくれないかと思った。橋桁がすでに設置されているなど、一応複線で走られるように用地も確保されているみたいなのだが。

松戸には11時51分着。5分間の運転停車ののち、11時56分に出発。ここでもう一度ひっくり返るので、筆者の乗る6号車はまた先頭車両となる。


新金貨物線。新小岩信号所で転進したので6号車は最後尾


そして常磐線をひた走り、三河島の手前で常磐貨物線に入り、この後は田端信号所を目指すことになる。
田端信号所はいろいろな貨物列車が入線して止まっているので、見ているだけでも楽しい場所だ。ここでもまたEF65 1000番台を発見した。
筆者のように中学生の頃ブルートレインに憧れたものにとっては、栄光ある機関車なのだ。

しかしこの田端信号所、途中のどこかに止まるのかと思ったら、何と入線したのは、その先は草むらという場所に。ある意味これもレアな感じである。
田端信号所には12時12分に到着。出発は13時4分というかなり長い運転停車となった。そこで、この間にお弁当を頂くことにする。


この先は草むら。突っ込めません



駅弁としてはかなり奮発されている感じ。買ったら1000円以上するかも。おいしかったです


長い運転停車ののちはひっくり返って再び山手貨物線に。
ここから大崎を経由して今度は横須賀線の線路に入る。鶴見、戸塚、大船、と進んで逗子で一旦停車。

ここには14時37分着。8分間の運転停車ののち、ここでまたひっくり返って14時45分に逗子を出て次は大船へ。ここからは根岸線へ移る。

実はこれもチェックポイントだ。
横須賀線の線路から根岸線に入るのもかなりレアなケースなのだ。


貨物線を走るので、いろいろな電気機関車に会えるのがうれしい。これはEH200とEH500が並んでいるという萌えポイント



ここが横須賀線から根岸線に入るポイント。あまり走らないのでやっぱり線路がさびてる


根岸線を走った後は最後のチェックポイント、高島貨物線に。桜木町を出た後ポイントで切り替わり、貨物線に入線する。新鶴見信号所に15時46分に入った後はここでもしばらく院展停車。15分の待ち時間ののち、16時1分に出発だ。もう旅の終わりが近づいてきている。再び横須賀線の線路に戻った後、品川に16時14分着。


新鶴見信号所でもたくさんの電気機関車に出会う。電機好きとしてはかなり萌えた



品川着。お疲れ様でした


というわけで朝9時から、夕方の16時まで、約7時間の長い旅は終わりを告げた。

今回の企画は、旅行会社の担当の方が鉄道好きで、どうしても企画したいとかなり前から温めていたのだという。しかし、通常は通らないところのため、企画を進めるのにはかなり難航したらしく、GOサインが出たのはゴールデンウィークの最中だったそうだ。
社内のプレゼンでもなかなか魅力が伝わらずに苦労したのだとか。

しかし今回の実績があれば、次はまた新しい企画を考えてくれるに違いない(と信じたい)。

「鉄道 ツアー」には、多くの人が知らないだけで、実は今回のように掘り出し物の企画はかなり多いのだ。

「鉄道 ツアー」でネット検索して、自分のお気に入りのツアーを見つけたら、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。


今藤弘一