第35回日本美容皮膚科学会総会・学術大会

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2017年7月29日〜30日に、大阪で第35回日本美容皮膚科学会総会・学術大会が開催された。

最新の美容皮膚科学に関する知見が発表されるなか、「レーザー脱毛」「永久脱毛」という広く知られているようにも思われる施術を取り上げたのは、レーザー指導専門医の乃木田俊辰医師(新宿南口皮膚科院長)だ。

レーザーで幹細胞を熱破壊している

レーザー脱毛は一般的になったイメージもある施術のひとつだ。長期的な効果が期待できるため、「永久脱毛」と呼ばれることもある。

しかし、乃木田医師はそもそも医学的には「永久に(施術を受けた人が死ぬまで)毛が抜け続けること」を証明するのは不可能だと指摘する。

「1995年に初めてレーザー脱毛を確認したハーバード大学のロックス・アンダーソン教授は、『永久減毛』という言葉を提唱しています。永久脱毛という言葉は非常にポピュラーになりましたが、少なくとも医師は永久脱毛とは正しくは永久減毛であると正確に理解していなければいけません」

永久減毛の定義は「一定の脱毛治療を行った後に、毛の本数が著明に減少した状態が体の各所の毛周期より長期間に渡って維持されていること」とされている。この「長期間の減毛」というのは、治療が終了しても6、9、12か月間経っても安定して減毛した状態を保っていること。それを実現するために重要なのが、レーザーの当たる部位だ。

脱毛に用いられるレーザーは1980年代に確立された「選択的光加熱分解理論」という理論に基づき、メラニンなどの色素に反応し無色には反応しない性質を持っている。この性質のおかげで表皮を火傷させることなく、メラニン色素のある毛を産生する組織だけを破壊することができる。

乃木田医師によると、毛を産生する幹細胞が存在する「バルジ」「皮脂腺開口部」「毛乳頭」の3か所にレーザーを照射して熱破壊することで、初めて長期の脱毛が可能になるという。

「注意が必要なのは、レーザー脱毛が永久脱毛を意味しないという点です。エステのレーザー脱毛は不完全な幹細胞の破壊しかできないようになっており、一時的な減毛は可能ですが、長期間の効果は期待できません。永久減毛が可能なのは医療脱毛だけです」

幹細胞の完全な破壊は医療行為となり、エステサロンで提供すれば違法となる。そのためエステサロンでは不完全な破壊、つまり一時的な減毛しかできないのだ。

医療脱毛で使用されるレーザーは、1999年に米ライトシェア社が米食品医薬品局(FDA)に「Permanent hair reduction(PHR)」、つまり永久減毛できる機器として認定を受け、2000年にはシネロン・キャンデラ社の「GentleLASE」も認定を受けていたが、日本ではレーザー脱毛装置は長く未承認の状態となっていた。しかし、2016年12月にはGentleLASEの後継機である「GentleLASE Pro」が、レーザーの選択的熱作用による長期的な減毛」という使用目的で医薬品医療機器総合機構から「医療機器製造販売承認」を取得している。

脱毛を受ける前に知っておくべきことは多数

皮膚科医にとっては常識だが、脱毛を受ける側がなかなか知らない重要なことは他にもある。まず、毛には周期があるという点だ。体毛は一度生えたらずっとそこに存在するわけではなく、一定期間成長すると抜け落ちてまた生えるというサイクルを繰り返している。つまり、毛が抜け落ちる時期にレーザーを当てても意味がなく、成長期にあてる必要があるのだ。

しかし、見た目で毛がどの時期にあるのかはわからないうえに、毛の生えている部位によって成長期と休止期の割合が異なる。頭皮の場合は85%が成長期なのに対し、ワキは30%。つまり1度レーザーを当てただけでは3割しか減毛できないのだ。

「毛周期があるため、レーザー脱毛は1回では終わりません。条件によって異なる可能性はありますがワキなら2か月に1回、5〜7回繰り返すことが重要です。患者は1回で終わると思い込んでいる人も少なくないため、私は1回では完了しないとしつこいほど繰り返し伝えるようにしています」

さらに重要なのが、うぶ毛の永久減毛は非常に難しく困難であるという点だ。前述のとおり、レーザー脱毛は色素に反応するレーザーを使うため、黒くて太い毛には反応するが、うぶ毛のような細く色も薄い毛には反応しにくい。一時的には減毛できても、長期間の減毛はほぼ不可能だと乃木田医師は言う。

「どうしても永久減毛したい場合、かなり強力なレーザーを当てる必要がありますが、当然火傷リスクが上昇します。うぶ毛のために火傷を起こしては何の意味もありません。レーザー脱毛は目立つ太い毛を確実に減らすことが目的の施術だと患者にも理解してもらう必要があります」

永久減毛ができる部位は限られている

ほかにも、日焼けしている肌では選択的光加熱分解が作用しないため施術前に日焼けをしてはいけない、毛を抜いてしまうとやはりレーザーが反応しなくなるので毛は抜かないで剃っておく、といった注意点を乃木田医師は挙げる。

「擦れて色素沈着している部位も施術は難しい。日焼けをしている人などに対し、『この状態の皮膚では施術できません』と拒否できる医師が良い医師だと言えるでしょう」

こうした諸注意を踏まえて乃木田医師は「全身の永久減毛はできない」と話す。施術をすること自体は可能だが、効果があるのは太く黒い毛の生えるワキや膝下、Vライン、男性のひげなど特定部位のみで、細い毛の生える腕や背中、肩、うなじ、フェイスライン、大腿などは困難なのだ。

「どうしても反応が悪い部位の施術をしてほしいと言われたら、夏の肌を露出するシーズンだけ見映えをよくすることならできますが、永久減毛はできませんと答えます」

乃木田医師は、実際には全身の永久減毛ができないとわかっているのに「全身の永久脱毛ができる」と答える医師には注意すべきだとも忠告する。

「細い毛やうぶ毛はレーザー脱毛することで濃くて硬い毛に変わってしまう硬毛症という副作用があることが知られており、特にレーザーの反応が悪い部位が好発部位です。頻度は10.5%程度で高くはありませんが、一度発症すると完治しません」

フェイスラインの脱毛を無理にした結果、ひげのような毛が生えてしまったという女性の例も少なくないという。手軽なイメージもあるレーザー脱毛だが、施術を検討している人はまず正しいレーザー脱毛の知識を把握して、医療機関に相談すべきだろう。

第35回 日本美容皮膚科学会総会・学術大会
シンポジウム11「脱毛のupdateと陰部のanti-aging」
座長:
塚原 孝浩 (つかはらクリニック)
乃木田 俊辰 (新宿南口皮膚科/東京医科大学)
演者:
乃木田 俊辰 (新宿南口皮膚科/東京医科大学)
塚原 孝浩 (医療法人 愛誠会 つかはらクリニック)
渡邊 千春 (千春皮フ科クリニック)
滿行 みどり (みどり美容クリニック・広尾)

医師・専門家が監修「Aging Style」