ユース年代の国際大会として毎年恒例となっているSBSカップ(8月10日〜13日)が、今年も静岡県内各地で行なわれ、U-18チリ代表が3戦全勝で優勝を果たした。

 このところ、コパ・アメリカ(南米選手権)の2連覇や、コンフェデレーションズカップ準優勝など、A代表が世界的強豪のひとつに数えられるまでになったチリだが、そのベースはこうした育成年代の強化にあるのだと実感させられる、大会制覇となった。

 さて、翻(ひるがえ)ってU-18日本代表はというと、こちらは1勝2敗の3位に終わった。

 最終戦でU-18チェコ代表に2-1と勝利し、最下位こそ免れたものの、初戦ではU-18チリ代表に1-2、第2戦では静岡ユース(静岡県選抜)に0-1と連敗。2年後のU-20W杯出場を目指すチームとしては、不安が募る結果となった。

 1勝2敗という結果もさることながら、それ以上に気になったのは試合内容だ。18歳以下の精鋭たちが集められているといっても、まだまだチームとしての体(てい)をなしていない。それが、今大会でのU-18日本代表を見た、率直な印象である。

 過去の成績を見ればわかるように、この大会でU-18日本代表が3位や4位(最下位)に終わることは決して珍しくない。地元開催で、非常に高いモチベーションでこの大会に挑んでくる静岡ユースに敗れることも、(是非はともかく)驚きには値しない。

 しかし、数字上の結果はともかく、これほどU-18日本代表が内容的に乏しかったことは珍しい。

 U-18日本代表を率いる影山雅永監督が、「チームとしての活動はこれが3回目で、今回は半分くらいが(初めて招集された)新しい選手」と話すように、本格的なチームの立ち上げから半年余りのこの時期、チーム作りはまだまだ始まったばかりである。

 J2のファジアーノ岡山を率いた経験も持つ指揮官は、「チームとして(どう戦うか)というより、選手同士がお互いを知り、そのなかでハーモニーが少しずつ醸成されていけば、という状態」だと、現状を語る。

 確かに、選手個々がそれなりに優れた技術を持っていることは、ボールを持ったときのプレーからもわかる。だが、それらの一つひとつがすべてぶつ切り。ボールを持った選手はそれほど狙いが感じられないパスを出せるところに出し、パスを受けた選手も(ボールを)受けてから次にパスを出せるところを探すといったことの繰り返しでは、シュートチャンスを作るどころか、なかなか攻撃を組み立てることができないのも当然だった。

 とはいえ、本当に気になったのは、もっともっと基本的な部分。ルーズボールの奪い合いで負けないとか、しっかり体を寄せて簡単にかわされないとか、サッカーのベースとなるべき「戦う」という要素が不足していたことである。

 影山監督も、最初のチリ戦を迎えるにあたり、「1試合目で世界基準のプレー強度に慣れて、2試合目から(いつもどおりのプレーが)できました、ではダメなんだ」と選手に話し、初戦からタフさや力強さを求めていたようだが、それが形となって表れることは少なかった。

 しかも、日本選手の倍はあろうかというほど、選手の体に厚みがあるチリを相手に、スコア以上の内容で圧倒された初戦を経て、迎えた第2戦。フィジカル的には互角以上に戦えるはずの静岡ユースを相手にしてもなお、戦う姿勢に火がつくことはなかった。

 それどころか、サッカー王国・静岡のプライドから「日本代表とはいえ、同年代の相手には負けられない」という静岡ユースの気迫が上回っているようにさえ見えた。

 影山監督は「そこに、選手を持っていけなかったのは自分の責任」だと付け加えたうえで、こう語っている。

「今日(静岡ユース戦)の相手は、自分たち自身。この大会は(勝敗を争うだけでなく)、代表に入りたい、勝ちたい、点を取りたいという者を選考する場でもあるが、そういう渇望を出した選手もいれば、出していない選手もいる。戦術的にやるべきことはたくさんあるが、(それ以前に)ここでやらなきゃという気持ち(が大切)。勝ちたい、点を取りたいという気持ちを持っている選手だけでチームを作っていきたい」

 結果的に、最終戦でようやく目を覚ました選手たちは、体格で日本を上回るチェコを下すことができた。これはこれでひとつの成果ではある。

 だが、これが今後彼らが出場するであろうU-20W杯、あるいは東京五輪のグループリーグなら、2敗した時点でゲームオーバー。目を覚ますチャンスが2度もありながら、みすみす逃し、3度目でようやく火がついたのでは、遅きに失する可能性は十分にあるのだ。

「球際で負けないとか、戦うというサッカーをやるうえでの基礎のところができていない。そこは自分が一番大切にしているところだが、ひとりでは成り立たない。全員でやれなければいけないが、選手個々でバラつきがあった」

 静岡ユースに敗れた試合後、そう話していたのはDF石原広教である。


U-18日本代表の中心選手となる石原広教

 早生まれ(1999年2月生まれ)の石原は、すでに湘南ベルマーレのトップチームに所属しており、U-18日本代表の中心をなす1999年4月以降生まれの選手よりも1学年上にあたる。それだけにU-18日本代表に招集されるにあたっては、「しっかり声を出したりして、チームを引っ張っていく、と心の中で思っていた」。

 今季J2で首位を走る湘南にあって、石原はすでに8試合(うち7試合先発)に出場しており、現在のU-18世代では数少ない(今回の招集メンバーでは唯一)、Jリーグで公式戦出場経験を持つ選手だ。本人も「経験という点でも、僕はJで試合に出ているので、他の選手に伝えられることがたくさんあるはず。そういうところは意識してやっている」と語る。

 そんな石原が日常的にプレーしている湘南は、Jリーグ屈指の”戦えるチーム”。J1、J2を問わず、これほど足を止めずに戦い続けられるチームは多くないのだから、彼の目にU-18日本代表の現状が物足りなく映るのも無理はない。石原が続ける。

「日本代表として戦う以上、そこ(戦うこと)は外してはいけないところ。影山監督からもミーティングで言われているが、選手同士でもしっかり話して、全員が同じように戦う気持ちを持てるようにしたい」

 もちろん、代表チームという性質上、活動機会が限られる。選手にしてみれば手探りでプレーしなければならない部分が少なからずあり、思い切ったプレーがしにくいという側面はあるだろう。

 それでも、石原は「確かに連係がかみ合わないところもあるけれど、(肝心なのは)戦術どうこうではない。性格的に落ち着いている選手だとしても、もっと闘志を出せるし、もっと戦える。戦術の前に、まずは目の前の相手に負けないこと」だと語気を強める。

 彼らはまだ18歳以下の選手たちであり、いまだ成長途上。経験を重ねることで覚えていくこともたくさんある。すでにトップチームでリーグ戦に出場している選手が少なくないチリなどと比べれば、あらゆる意味で経験不足は仕方がないことでもある。

 とはいえ、世界との差を少しでも埋めるべく成長スピードを上げていくには、2度の失敗で気づくところを1度の失敗で気づくようにし、1度の失敗で気づくところを失敗する前に気づくようにしていかなければならないのだ。

 それを考えれば、彼らに拍子抜けするほどの物足りなさがあったことは否めない。

 前途多難――。今大会のU-18日本代表を、厳しいようだが、あとは上がっていくだけという期待も込め、そんな表現で総括しておきたい。

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