『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』(J.C.コリンズ/日経BP社)

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人並み以上に仕事の成果を上げている。日々の生活も充実している。それは悪くないことだが、「これぐらいでいいかな」と満足してしまうビジネスパーソンが多いと経営コンサルタントの小宮一慶氏は語る。一流の人は、「もうこれでいい」と思うのではなく、「まだやれることがあるのではないか」と考えている――。

■「なれる最高の自分」を目指す人がなぜ少ないのか?

講演でビジネスパーソンの皆さんに「なれる最高の自分」を目指すことが大切です、とお話をすることがあります。なぜなら、多くの人が現状に満足してベストの自分を発揮していないからだと感じているからです。

「GoodはGreatの敵」

これは、全米1435社の中から、大きな飛躍を経験し、以後15年間にわたってその実績を維持した11社を分析した『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』(J.C.コリンズ/日経BP社)の冒頭の言葉です。Goodとは「そこそこ良い」状態。そうした現状に満足し、より高み(Great)を目指さない人が多いことに著者が警鐘を鳴らしているのです。

このGoodとGreatの差が、一流と二流の差ではないか。私はそう感じています。

とりわけビジネスパーソンは「仕事で自己実現」をする度合いによって人生の充実度が大きく変わってきます。好むと好まざるとにかかわらず、ほとんどの人は20代〜50代の気力知力体力が充実した「人生の一番良い時間帯」を仕事に投じています。

一代で上場企業を築いた経営者の「共通点」

その仕事において、もし「自己実現」ができないとすれば、それはとてももったいない。私が言う「自己実現」の大前提とは何か。それは前述した「なれる最高の自分」を目指すことです。そして、実際に目指すときにとても大切なこと。それは自分にとって「なれる最高の自分」とは何かを「具体化」することです。

経営コンサルタントである私の顧客のなかで、一代で上場企業を築いた方が何人かいらっしゃいます。その仕事ぶりをそばで見ていると彼らは個人としても経営者としても、常に具体的な目標設定をしてその“最大値”のパフォーマンスを目指し、さらにそれを更新しようと日々工夫を凝らしています。

■「散歩のついでに富士山に登った人はいない」

「なれる最高の自分」を目指すことはとても大切なことなのですが、「具体化」をしなければ、ただ単に「頑張っている」と言っているのと同じことになりかねないのです。残念なことに、こうしたタイプのビジネスパーソンは少なくありません。

私が好きな言葉に「散歩のついでに富士山に登った人はいない」というのがありますが、人はどのような目標を持つかで行き着くところが違うのです。

皆さんはどんな目標をお持ちですか。

安定した仕事をしていると、特に目標を持たなくても、毎日が無事に過ぎていきます。また、忙しいと目の前の仕事に必死に取り組むあまり、目標を忘れがちです。

毎日必死に働く=「近所を散歩」しているだけの人

忙しい毎日は「充実の証し」と言えるかもしれません。

しかし、目の前のことばかりで“いっぱい、いっぱい”になってしまっては、よくありません。せっかく達成できる人生の目標、つまり「なれる最高の自分」を忘れることにもなりかねないからです。毎日、目の前のことを一所懸命にきちんとこなすことを否定するわけではありませんが、それだけで24時間が終わっているとすれば、毎日必死に近所を「散歩」しているだけでどこへも到達できない可能性があります。

アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領は「足は大地に、目は星に」とおっしゃっています。せっかく、一所懸命働くなら、何か目標を。それも遠くにある「なれる最高の自分」となるための大きな目標を目指してそれに向かって進んでいくほうが、人生がより充実するのではないでしょうか。

■常に上がっていく人、いつまでも上がらない人

とはいえ、「なれる最高の自分」を具体化すると言っても、それはなかなか簡単なことではありません。私だって、自分の「なれる最高の自分」をはっきりイメージできているかと言えば、心もとないのが本音です。

そういった状況で、私が心掛けているのは、「1年後」の「なれる最高の自分」です。ずっと先の「なれる最高の自分」を漠然と意識しながらも、具体的に「1年後」を考えるのです。「1年後」ならかなり具体的に考えられるのではないでしょうか。

私の場合は、個人的な目標として1年内に「10冊本を出版する」、「100カ所以上で講演する」「100本テレビに出る」などを掲げています。

人は、思ったものにしかなれません。成長していくイメージをしないと、時間はただ流れていくのみです。

そういった意味で、繰り返しになりますが、目標を持つということ、それも「なれる最高の自分」を意識した目標を持つことがとても大切なのです。

私自身のことで言えば、もうひとつ意識していることは、自分の「人生のステージ」が上がっているかどうかです。それも1年単位で考えます。ずっと同じレベルの仕事をしていてはだめなのです。「仕事の内容や質が上がっている」「相手をするお客さまのレベルが上がっている」「付き合う人たちの質が上がっている」……。そういうことを実感できれば「人生のステージ」は確実に上がっています。

一歩踏み込み「なれる最高の自分」を目指せば頂が見える

ビジネスパーソンの皆さんにもうひとつ、伝えたいことがあります。それは「一歩踏み込む」の大切さです。

毎日、目の前のことをこなしていく際に、あと一歩踏み込めるかどうか。「もうこれでいい」と思うのではなく、「まだやれることがあるのではないか」という視点で、自分のやっていることを冷静に分析するのです。「Good」で満足していないか。もっと高みを目指すことができるのはないか。そんな意地悪目線を自分の中に持つのです。

そこまで自分を追い込まなくても仕事はきっとこなせるでしょう。誰も文句を言わないかもしれません。しかし、私の経験上、それでは周囲から「さすが」と評価されるレベルの仕事には達していないことのほうが多い。

もちろん、時間的や経済的な制約はあります。私も少し大きな病気を経験したことがありますので、身体を壊すほどに仕事をしてはいけないと思います。しかし、制約の範囲内でも、もっとやれることはたくさんあるのではないでしょうか。

「一歩踏み込み」ながら、「なれる最高の自分」を目指して生きる。最初はちょっとしんどいかもしれませんが、やってみる価値はあると思います。続ければ、富士山の頂が見えてくるかもしれません。

(小宮コンサルタンツ代表、経営コンサルタント 小宮 一慶)