「メッシ・ロナウド時代」

 そう表現しても、大袈裟ではないだろう。現在のサッカー界はリオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドという2人の”怪物”を中心に回っている。彼らの主戦場と言えるスペイン、世界最高峰のリーガエスパニョーラではなおさらだ。

 しかし、2人ともすでに30歳を超えた。後継者が生まれるタイミングは近づいている。いくら絶対的な選手とはいえ、新鋭が出てこなければサッカー人気も萎(しぼ)んでしまうのだ。

 今シーズンのリーガで、メッシ・ロナウド時代を突き破る可能性のある候補は3人いる。


スペインスーパー杯バルセロナ戦でゴールを決めたマルコ・アセンシオ(レアル・マドリード)

 その筆頭は、レアル・マドリードのマルコ・アセンシオ(21歳)だろう。左利きのアタッカーで、昨年スペイン代表でもデビューを飾っている。トップスピードでボールを操る能力に優れ、ゴールを叩き込むパワーと技術を持つ。

「天性の体格のよさ」

 そう言われるほど肉体、骨格が際立つ。スペイン人の父とオランダ人の母という血によるものか。父はマジョルカ島の出身。トップテニスプレーヤーのラファエル・ナダルを生んだように、同島出身者は基礎的な身体能力が高いと言われる。一方、オランダ人は大柄で骨太。ちなみにマルコという名前は、オランダの伝説的FWマルコ・ファンバステンに由来している。

 ただし、フィジカルなアスリート能力はアセンシオの一端に過ぎない。

 アセンシオは常に相手の裏をかける。ワンフェイントで逆をつき、抜き去ることができる。一方で、ドリブルそのものに執着はない。より効率的な判断を選び、広く鋭いビジョンで的確なスルーパスも放てる。それを防ごうと密着マークが来たら、今度はそれをひょいと外し、際どいシュートをネットに叩き込む。知勇兼備の無双感が漂う。

「スペインにいる選手の中で、最高のタレント」

 慎重なビセンテ・デルボスケ(EURO、W杯で優勝した元スペイン代表監督)にそう言わしめたほどだ。

 特筆すべきはその落ち着きだろう。

「チャンスは必ず巡ってくる。自分は自分を誰よりも信じてきた」

 アセンシオ本人は語るが、プレーに迷いがない。人間として成熟している。これには15歳で母親を亡くしていることも関係しているという。

 昨シーズンはレアル・マドリード1年目で、リーグ戦は23試合3得点。数字的に際立つものはないが、20歳で王者レアル・マドリードの準レギュラーにたどり着いた。

「子供の頃からあこがれのジダン(監督)の近くで毎日学べる。こんな贅沢はない」

 そう語るアセンシオは、虎視眈々と牙を研いでいる。

 もうひとりの候補は、ミランからバルセロナに復帰したジェラール・デウロフェウ(23歳)だ。

 2011〜12シーズン、ジョゼップ・グアルディオラ監督が率いた最強バルサで、17歳にしてデビュー。「メッシを凌ぐ天才」という声も上がった。しかし謙虚とは言えない性格が災いし、重用されなかった。ありあまるエゴを理由に放出された。

「ジェラールは野心的な選手で、才能も申し分ない。しかし、犠牲的精神やチームの中での役割を学ぶ必要があった」

 当時、バルサBで監督をしていたエウセビオ(現レアル・ソシエダ監督)は振り返っているが、その述懐がすべてだろう。

 しかし、デウロフェウもプレミアリーグのエバートン、セリエAのミランなどを渡り歩いて「大人になった」と言われる。まだまだ「個の力」に頼ったプレーを見せることもあるが、ひとりで崩し切る技量は武器でもある。ネイマールの移籍後はその穴を埋め、メッシと息の合ったプレーを見せている。

「バルサを出て行ったときとは、別人として戻ってきた」

 そううそぶくデウロフェウだが、まずはネイマールの幻を消すことが仕事になる。

 最後のひとりは、レアル・ソシエダのミケル・オヤルサバル(20歳)だ。レアル・ソシエダの下部組織スビエタは年代ごとにハビエル・デ・ペドロ、アントワーヌ・グリーズマンなど優れた左利きアタッカーを輩出しているが、オヤルサバルはその系譜を継ぐひとりと言える。

 11歳までは水泳にどっぷり(サッカーは友人と作ったチームでトーナメントに出る程度だった)浸る。自由形、平泳ぎの選手として地域大会で優勝するほど励んだおかげか、腰が強く、持久力も高い。左足で繰り出すパスは「MAGICO」(魔法)と表現されるが、センスと同時に当たりに動じない点が目を見張る。

 一昨シーズンは18歳でトップチームのレギュラーを確保。昨シーズンは主力としてチーム最多のアシストを記録した。リーガ1部での試合経験は前に挙げた年上の2人を凌ぎ、ゲームを戦うことで成長しつつある。

「(水泳じゃなく)サッカーを選んでよかったよ。ボールを蹴ると気分が落ち着くんだ」

 ちなみに3人は今年、U-21欧州選手権をスペインU-21代表として戦い、準優勝。すでにフル代表でもデビューしている。もし彼らが来年のロシアワールドカップでスペインの主力になっていたら――。

 それは8月18日に開幕するリーガの戦いにおいて、3人がメッシ・ロナウド時代への挑戦者として認められたときだろう。

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