「ホワイト企業」がベストな就職先、と考えない理由

写真拡大 (全2枚)

政府が本腰を入れ「働き方改革」を進めていることもあり、多くの学生が就活において「働き方」や「ワーク・ライフ・バランス」への関心を強めている。

しかし私は、就職活動中の娘に「良いブラック企業へ行きなさい」と言った。

2018年卒は売り手市場だ。人材の争奪戦に直面する多くの企業が残業削減や手厚いワーク・ライフ・バランス施策の取り組みをアピールし「ホワイト企業」のイメージを打ち出す中、尋常でない長時間労働やサービス残業を強いるブラック企業が敬遠されるのは当然だ。

しかし、学生にとってその後の人生を大きく左右する最初の企業選びの基準が、労働時間の長さや福利厚生の充実ばかりに注目していることに違和感を感じる。

深く考えて娘に言ったのではないが、私の思う「良いブラック企業」は、成長につながる難易度の高い仕事を若いうちから与え、時間でなく、成果で評価する。結果として長時間労働になる可能性があるが、それを良しとする企業だ。慢性的な長時間労働はなく、社員が成果を出せるよう働き方にも裁量を与え、同時に責任も持たせる。

「自由と責任はワンセット」ということを明確に伝え、柔軟でメリハリのある働き方を推奨する──。いくつかのそういう企業が頭をよぎったのだ。

高まる大手企業志向

「2018年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、学生の大手企業志向は52.8%で、2010年卒以来8年ぶりに過半数を超えた。「自分のやりたい仕事/職種ができる会社(38.1%)」や「働きがいのある会社(15.1%)」はともに5年連続で減少。それに対し、「安定している会社(30.7%)」、「給料の良い会社(15.1%)」は2年連続増で、どちらも過去最高となった。

「自分のやりたい仕事/職種ができる会社」は回答項目中で1位だったものの、割合としては過去最低。大手企業志向の上昇に伴い、安定や給料への関心が向上している。

学生の就職観は前年までと同様「楽しく働きたい(29.7%)」が首位。2位の「個人の生活と仕事を両立させたい(26.2%)」は5年連続で割合が増加しており、就職活動におけるワーク・ライフ・バランスの重視が見てとれる。



調査結果をまとめると、就活生の求めるものは、残業が少なく、福利厚生が良く、安定している、つまり「ホワイト」の大手企業なのである。売り手市場と言われている昨今の就活市場で、多くの学生がそのような厚遇を望むのは自然なことで、実際、そのような企業への入社は以前よりしやすくなっている。

しかし、かつてないほどの速さで技術革新が進み、それに伴う非連続の変化が起きているのは承知の通り。学生が求める「安定」を約束する長期雇用は難しくなってきているのが現実だ。

会社に何を望んで就活するかは個々人により大きく異なり、それぞれの自由。しかし、親として自分の娘に企業選びで求めて欲しいものは、「安定」や「ワーク・ライフ・バランス」よりも、実力を高めて成長できること。それが将来、自分が望む働き方や生き方を手にする「戦略」となるからだ。

仕事上の知識、スキルや経験がない新入社員は、試行錯誤しながら貪欲に働き、仕事を学んでいく。不効率に働くしかできないから長時間労働になることが多々あるだろうが、20代の意味のある長時間労働はその後のキャリアに大きく貢献する。実力を確実に身につけることによってのみ、前進できる転職や起業が可能になる。

まずは目の前の仕事に没頭してパフォーマンスを出し、求められる人材になって欲しい。チャンスがあればストレッチアサイメントも自ら進んで担い、能力を磨き上げていくのだ。特に女性は出産などの不確定要素があるため、女性だからと遠慮せず、早目に負荷の重い仕事を担わせてくれる企業はありがたい。

就活の時にワーク・ライフ・バランスは考えない。若いうちはそれを求める前にやることがあるのだ。ワーク・ライフ・バランスは与えられるものでなく、貢献したことに対する報酬。良い仕事した後に交渉し、それでも個々人にあった働き方を認めないような会社ならば、辞めることも一つの選択肢だろう。

さて、2015年末、野村総合研究所と英オックスフォード大学との共同研究により、10〜20年後に日本の労働力人口の約49%が人工知能(AI)やロボットなどで代替可能だと発表され、社会に深いショックを与えた。

AIの進展はホワイトカラー労働者の雇用だけでなく、組織の在り方も大きく変えていくだろう。残念ながら一昔前に素晴らしく機能した終身雇用や年功序列などの日本型雇用システムは変化の激しいデジタル時代とのマッチングが良くない。また、加速度的なテクノロジーの進展により、大手企業といえども5年後、10年後には存在していないかもしれない。企業は短命化するが、人間は長寿化する現実に対して、大切なことは将来を見据えた準備だ。

必要とされるスキルの価値が急変していくことはわかっている。そのような厳しい現実へのベストな対応策は「常に学び続けること」だ。良いブラック企業では、必要に迫られるからにしても「学び続ける習慣」も身につけることができるのではないだろうか。

今から10年たった時、娘が私を恨んでいないことを願うばかりだ。