ヒラヒラ&ピンクが大好きな、キラキラなごやっ子が朝から元気に歩く名古屋。駅ナカの喫茶店で、彼女たちから一発目の一撃をくらった。
「な、な、なんだこの光景は…!?」
 フォー、タコス、ピロシキ…。東京で暮らしていると、世界中の食を愉しむことができるけど、都心からわずか360キロしか離れてないこの名古屋で、未体験の食のインパクトを体感できるとは…。
 この名古屋メシ暴食弾丸旅のきっかけは、「ぷらっとこだま」というツアー商品に出会ったことから。事前購入と指定された「こだま」に乗ることで通常料金よりも2割以上安い新幹線の旅ができるというワケで、飛びついた。

名古屋メシの世界へダイビング

 朝から賑やかな名古屋の駅ナカ。ほぼ満席の老舗喫茶店で、名古屋の女子たちが喰らいついていたあの小倉トーストを、いただきます!
 こんがり焼き色が付いた厚切りトーストに、甘みさっぱりの小倉がドンと添えられ、生クリームがふわっと載る。
「こんなメニュー、誰が考えたの?」
 半信半疑でほお張ると、あれれ?
 バターの塩加減と小倉の甘さ、クリームの濃厚さが一体。う・ま・い!
 一発目から甘味系をほお張ったせいか、味噌串カツ、手羽先と次々に食べ歩く。昼ごろには「一日分のカロリーを摂取しちゃったんじゃない?」と思うほど、名古屋メシにダイブした。
 喰ってばかりじゃイカンというワケで、ちょっと「鉄分を補給」といく。
 味覚の次は目と耳と鼻でレールのドキドキをと、狙っていた現場がある。
 名鉄築港線に残っている「ダイヤモンドクロス」というお宝だ。
 ダイヤモンドクロス、またの名を直交クロスともいうレールの平面交差で、文字通り90度で線路が交わる現場だ。
 旅人を魅惑する直交クロスが現役で存在するのは、愛媛の大手町駅付近(伊予鉄高浜線・大手町線)や、高地のはりまや橋駅付近(土佐電後免線・伊野線・桟橋線)など、数えるほど。
 築港線の大江と東名古屋港の間に残る朽ちた直交クロスは、築港線のレールだけ使用されていて、それに直行する名古屋臨海鉄道(互いに別会社!)のレールには、列車の往来が消滅した。

名古屋港の歴史をリスニング

 それでも直交クロスを渡る名鉄築港線の電車の足音にじっくりと聴き入りたい、というワケで、金山から市営地下鉄名港線に乗り終点の名古屋港駅へ。ダイレクトに名鉄に乗ればいいものを、遠回りして、名古屋港駅周辺を徘徊してから、その「会場」へ向かう。
 鉄道と船舶の中継地点として、国鉄時代に繁栄を築いた名古屋港駅(貨物駅)の盛衰を目の当たりにする。
 かつて存在した広大な貨物ヤードのレールは剥がされ、貨車ひとつない殺伐とした地に立つ。むかしは潮風に混じって油の匂いが漂ってたのか…。
 遠くには、レール輸送用のJR東海キヤ97の姿が見えるが、彼も「休職状態」でポツンと残された感じ。
 ちょっとアンニュイな気分のまま、クライマックス会場へと歩く。
 築港線の「直交会場」に到着。ひとりドキドキの現場は、鳥のさえずりとトラックの走る音だけで、静か。
 格子状に重なる見事な線路。朽ちたレールと鈍く光る現役レールとの、直交コラボレーションともいえる。
 踏み切りの音が聞こえてきた!
 向こうから、ヘッドライトを灯した名鉄築港線の電車がやってきた。
 ゆっくりと、その直交クロスのポイントに接近する。その次の瞬間。
 ダダダダダダダダと通過音の重奏!
 いままで、聴いたことのない電車の足音に、ちょっと陶酔。ひとり拍手。
 この心地よい余韻のまま、「こだま」に乗ればいいのに、地下鉄の駅ナカで、あんかけスパゲティなる名古屋メシを、胃袋へ。これもまた、う・ま・い!
「もうダメ、限界。帰ろ」
 そう思って名古屋駅の新幹線ホームに上がると、きしめん屋から流れ出るかつお節の匂いが、手招きしていた。

この連載は、社会福祉法人 鉄道身障者福祉協会発行の月刊誌「リハビリテーション」に年10回連載されている「ラン鉄★ガジンのチカラ旅」からの転載です。今回のコラムは、同誌に2012年10月号に掲載された第6回の内容です。

鉄道チャンネルニュースでは【ラン鉄】と題し、毎週 月曜日と木曜日の朝に連載します。

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