小松菜奈、なぜ漫画原作映画で引っ張りだこに? 『ジョジョ』山岸由花子役に見る“スター性”

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 今さら説明するまでもないほど著名な原作漫画を、三池崇史監督が実写化した映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』が現在公開中だ。昨年9月に大々的に制作発表が行われてからというもの、とにかく話題が尽きない本作。東宝とワーナー・ブラザースがタッグを組んだ作品として映画関係者を驚かせるだけでなく、実写化不可能とされた原作を徹底的に再現するために、スペイン・シッチェスで撮影されるなど、これまでの日本映画に知らず知らずのうちに生まれていた“限界”を徹底的に打ち破った野心作なのである。

参考:『ジョジョ』小松菜奈が語る、“原作もの映画”への取り組み方「どれだけオリジナルにできるかが肝」

 今月4日に公開されると、どんな仕上がりになっているのかいち早く見ようとする観客が劇場に押し寄せた。彼らが目の当たりにしたのは、公開前の不安をすべて払拭するかのような見事な作り込みと、予想外によくできた“スタンド”(ジョジョの登場人物の特殊な能力の総称)描写に他ならない。すっかり“実写化モノ”映画の主人公が板についた山崎賢人の安定した変貌ぶりと、“最も信頼できる若手俳優”である神木隆之介のコンビネーションはなかなかのもので、原作の熱狂的ファンからも認めざるを得ないという声があがるほどだ。

 原作を忠実に再現した個性的なキャラクターが顔を並べる本作で、ひと際不思議な魅力を放っているのは、主人公・東方仗助が通う「ぶどうヶ丘高校」のクラスメート・山岸由花子を演じている小松菜奈だ。神木が演じる転校生の広瀬康一にやたらとつきまとう、容姿端麗で長い髪がよく似合う、ミステリアスな美女という設定は、まさに彼女にぴったりな役柄である。

 まずは序盤の教室の場面。神木が映し出される画面の奥にぼんやりとシルエットが浮かび上がるのだが、フォーカスが合っていなくても一目で彼女だとわかる。これは彼女の持つ“スタンド”なのではないかと思わせる、途方もないオーラだ。そんな彼女の出演シーンは決して多くない(2時間ある作品中で20分あるだろうか)が、いずれも神木演じる康一との登下校の場面だったり、英単語の復習をしたりと、平凡な青春ドラマの一場面のようなものばかりだ。

 ところがそんな中でも、口角をぐいっとあげた笑顔から、急に冷めた目つきに変わるなど、一寸たりともその不穏なスイッチをオフにすることはない。原作では「スタンド使い」の一人となる由花子ではあるが、この「第一章」ではまだその片鱗を見せることなく、あくまでもミステリアスな存在に徹するのだ。続編が作られるのであれば、クライマックスの彼女の表情がきちんと伏線として働くはずだが、まだその話を聞かないので何とも言えないところだ。

 ふと考えてみれば、小松のフィルモグラフィは漫画原作の映画化ばかりだ。デビュー作となった『渇き。』や、若手実力派キャストのアンサンブルが話題になった『ディストラクション・ベイビーズ』、そして昨年暮れにイメージを覆す魅力的なヒロイン像を演じ切った『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の3本を除くと、公開が控える『坂道のアポロン』も含めて、日本で制作された彼女の出演映画はどれも漫画が原作となっている。

 少女漫画のヒロインにも、本作のような少年漫画のヒロインにも向いているというのは、同世代の女優たちの中でも珍しいタイプではないだろうか。それを可能にさせているのは、彼女の醸し出す独特の雰囲気(もういっそ“スタンド”と言ってしまいたい)に他ならない。黙っていればミステリアスで取っ付きづらくもあり、口を開くとイメージ通りの冷めた雰囲気も、少しあどけない少女の雰囲気も出せる。

 これは一口に「演技力」というよりも、自身のイメージや雰囲気を作り出すことに長けた、モデル出身者特有の演技の巧さではないだろうか(本作の主演の山崎賢人にも同じことが言える)。だからこそ、すでに見た目や雰囲気まで決まっている漫画原作に向いている。役柄に見た目から近付きながら、自身のイメージを消さずにどちらも共存させる演技。それはスター性の高い役者という証でもあるのだ。

 今年1月に公開された映画『沈黙−サイレンス−』で、ハリウッドデビューを果たした小松は、少ない出番ながらも隠れキリシタンの若い娘を演じ、注目を集めた。さらに、毎年アメリカの映画情報サイト「TC Candler」が年末に発表している「世界で最も美しい顔100人」の最新版にノミネートされたことが報じられるなど、彼女の持つスター性は着実に世界に気付かれはじめている。

※山崎賢人の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記

■久保田和馬映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。