浦和がスルガ銀行チャンピオンシップに臨むまでの過程に目を向け、榎本哲也は多くの人への感謝を惜しまなかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[スルガ銀行 CS] 浦和レッズ 1-0 シャペコエンセ/8月15日/埼玉
 
 浦和のGK榎本哲也がシャペコエンセに味方の倍以上となる11本のシュートを浴びながら無失点に抑え、1-0の勝利とスルガ銀行チャンピオンシップのタイトル獲得に貢献した。ブラジルのクラブならではの力と技術を備えたアタッカー陣との対戦で要所をしっかり締めて、ベテランらしい存在感を示したものの、試合後の榎本は終始謙遜していた。
 
「スカウティング通りでした。相手が体格的に自分たちより大きいことは分かっていたので、まず気持ちで負けず、その差をしっかり先に身体をぶつけたりすることで埋められました。僕らは競り合いで一度も負けていませんでした」
 
 34歳のベテランGKはそのように試合を振り返り、「スカウティング通りでした」と繰り返した。しかし一方で、「ただ、この試合に僕が出ることについては複雑な気持ちでした……」と胸中を明かしていた。
 
「昨年のルヴァンカップ優勝までの積み上げがあったからこそ、今日を迎えられたわけです。多くの人にとって、いろいろな想いがあったはず。その状況のなか、起用してくれた(監督の)堀さんと土田さん(尚史GKコーチ)には感謝しています」
 
 さらに、榎本は西川周作とともに意外な人物の名前を挙げた。
 
「大谷くんにも、本当に有難うと言いたい」
 
 今季、浦和から新潟に完全移籍したGK大谷幸輝のことだ。昨季は浦和の第2GKとして、ルヴァンカップの準々決勝と準決勝の計4試合のゴールマウスを守り切り、10年ぶりの国内主要タイトル獲得に大きく貢献した。その浦和を支えてきたもうひとりの守護神への賛辞を惜しまなかったのだ。
 
「だからこそ、僕がこの試合に出ていいのかと思っていたけれど、選んでくれた監督のためにも、結果を残すことしか考えていませんでした」
 
 今月加入したブラジル人DFマウリシオのデビュー戦でもあり、守備の連係面は不安視された。ところが「僕もAチームで出場するのは初めてだったけれど、守備中心にリスクマネジメントするバランスを心掛け、その点でのマウリシオとの関係性は良かった」と、むしろ新助っ人と波長が合い良いリズムでプレーできたことも貴重な収穫となった。
「(甲府戦、シャペコエンセ戦と)無失点が続き、いい流れができていますね」
 
 守備再建が浦和の課題と言われてきただけに、榎本はホッと安堵したように微笑んだ。しかし、それは同時に、3年半に渡って西川の独擅場と言えた「浦和の守護神」の争いに、しっかり食い込んできたことを意味するはずだ。

 小学生時代から27年間お世話になった横浜を離れ、人生初の移籍という挑戦の道を選んだ。そして、ようやく訪れたチャンスで結果を残した。

 それでも自分自身への賞賛はむしろくすぐったそうにして、この日の舞台を用意してくれたすべての人への感謝を惜しまなかった。そんな34歳の心優しきニューカマーが、不振に喘いできた浦和をぐっと力強く押し上げる。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)