今季のJ1でここまで解任された監督。上段左から石井氏、ネルシーニョ氏、森保氏。下段左から渋谷氏、ペトロヴィッチ氏、三浦氏。写真:サッカーダイジェスト

写真拡大 (全2枚)

 2017年8月16日、神戸が成績不振を理由にネルシーニョとの契約を解除した(暫定監督は吉田孝行)。これで今季のJ1で解任された指揮官は6人目。ネルシーニョの他は、鹿島の石井正忠(後任は大岩剛)、浦和のペトロヴィッチ(後任は堀孝史)、大宮の渋谷洋樹(後任は伊藤彰)、広島の森保一(後任はヤン・ヨンソン)、新潟の三浦文丈(後任は呂比須ワグナー)という顔ぶれで、なかなかの“ハイペース”である。
 
 昨季のJ1で途中解任された指揮官が3人(FC東京の城福浩、新潟の吉田達磨、名古屋の小倉隆史)なので、現時点ですでに“倍”。それと比較すれば異常な数とも言えるが、ではなぜ今季は監督交代が相次ぐのか。
 
 あくまで推測ながら、その背景には『DAZN』参入(Jリーグは10年間で2100億円という放映権料を得た)による均等配分金、賞金のアップ、新たに設置された強化配分金の存在があると見る。
 
 ちなみに、均等配分金、賞金、強化配分金の金額は以下の通り。
 
均等配分金(カッコ内は昨季)
J1 3億5000万円(1億8000万円)
J2 1億5000万円(1億円)
J3 3000万円(1500万円)
 
賞金(カッコ内は昨季)
優勝 3億円(年間優勝:1億円、勝点1位:8000万円)
2位 1億2000万円(勝点2位:3000万円)
3位 6000万円(勝点3位:5000万円)
 
強化配分金(新設)
1位 約15億円
2位 約7億円
3位 約3億5000万円
4位 約1億8000万円
 
 今季から新設された「強化配分金」は、「前年以前のリーグ戦の成績に応じ、強化費に充当するためのもの。年度ごとの配分条件を満たせば、最長3年前まで遡って配分。クラブから見ると一度優勝し、その後各年度の条件を満たせば総額約15億円を配分予定」となる。

 細かい説明はさて置き、「強化配分金」に関して言えば、4位にまで食い込めば大きな収入を得るチャンスがあるというわけだ。各クラブにとって、これは大きな魅力である。
 昨季以上に収入が見込めるようになると、今後、クラブ間の格差がより大きくなる可能性はある。優勝すればするほどビッグマネーを手にできるわけで、その意味で見ている側にとってはJリーグにも正真正銘のビッグクラブが誕生するのではないかという期待感が高まる。
 
 真のビッグクラブへの第一歩──。それを踏み出すうえで、今季の均等配分金、賞金、強化配分金はいわば不可欠なのである。優勝がマストに映る鹿島や浦和あたりが下位に沈んだわけでもないのに前監督との契約を解除したのも、勝手ながら“優勝賞金などが手厚くなった今季は是が非でもJ1の頂点に立たなくてはいけない。それで他クラブに差をつける”と考えれば納得できる。
 
 今季のリーグ戦では絶対に躓きたくない、できれば優勝、少なくとも上位でフィニッシュしたい。そんな願望があるから、少しでも成績が落ち込むと政権交代に踏み切り、チームを立て直そうとするクラブが増えているのではないか。
 
 J1に残留するだけでも例年以上に金銭的な恩恵(均等配分金を見ればそれも分かるだろう)は受けられる。そう考えると、下位に沈む大宮、広島、新潟がそれほど躊躇することなく「次の監督へ」と手を打ったのも頷けるだろう。
 
 今後もこうした動きは続きそうだ。J1リーグは、監督にとってよりシビアな戦場になっている。

文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)