牛乳石鹸で有名な牛乳石鹸共進社が公開したWEBムービー「与えるもの」篇が「意味がわからなすぎる」とネット上で話題になっている。

6月に公開された同ムービーでは、俳優の新井浩文さんが3人家族の父親を演じている。描かれているのは、息子の誕生日の一日だ。ゴミ出しをしてから出社し、妻に頼まれて誕生日ケーキとプレゼントのグローブを買う男性。しかし終始浮かない顔をしている。どうやら自分の父親と父親になった自分を比べて悩んでいるらしい。

「あの頃の親父とはかけ離れた自分がいる。『家族思いの優しいパパ』。時代なのかもしれない。でも、それって正しいのか?」

「この人物の家族思いで優しい場面が何一つない」

せっかくケーキとプレゼントを買ったのに、男性はすぐに帰宅せずに部下と飲みに行ってしまう。帰宅すると妻に「なんで飲んで帰ってくるかな」と責められるが、話し合いを拒み「ちょっと風呂入ってくる」と風呂場へ。ここで牛乳石鹸が映し出される。

翌朝、出社するためにバスに揺られる男性が映し出され、「さ、洗い流そ」というフレーズでCMは締めくくられている。どうやら、父親のあるべき姿についての悩みを洗い流して気持ちを切り替える、という趣旨のようだ。

ムービー公開された当初は特に話題になっていなかったが、8月中旬からネット上で「何故こんな不可解なCMを…?」といった困惑の声が相次いだ。

「結婚生活とか子供の誕生日とかめっちゃ煩わしい…っていうこの男の気持ちを洗い流してさっぱりってこと?」
「CF制作の電通マンと牛乳石鹸幹部の本音なのかな。『家族イベントも家事の分担も重荷。疲れる』って?そんなに男性中心の親世代が懐かしいの?洗い流すって何を?」

「この人物の家族思いで優しい場面が何一つない」という指摘もあった。ゴミ出しをしたり、息子の誕生日ケーキを買って帰ったりするというのは、一昔前の父親に比べれば「優しい」ということなのかもしれない。しかし多少家事を手伝ったところで、息子の誕生日に飲んで帰ってくるような父親を「優しい」とは感じられない人もいたのだろう。

同ムービーがあまりに不可解なため、「子供がすでに死んでしまっていて、それを受け入れられずに子供の誕生日を祝おうとする妻の言動に耐えられなくなってすべて洗い流してなかったことにしたい男の物語なんじゃないですかね」といった奇妙な解釈まで登場した。

こうしたネットの反応を受けてか、新井浩文さん本人が8月16日、「うちの事は嫌いでも、牛乳石鹸は嫌いにならないでください」とツイートしていた。

「若手社員を泣かせて洗い流そうってどういうこと」

牛乳石鹸共進社の公式サイトでは、「『家族思いの優しい父親』が増えつつある昨今、そこに収まっていながら、今のままでいいのかと感じる父親の葛藤」を描いたと説明している。一昔前の家父長的な父親像に回帰したいということなのだろうか。

牛乳石鹸は他にも、「さ、洗い流そ」という言葉の添えられた広告ポスターを多数公開。中には笑顔を浮かべたOL風の女性の横に「今日も若手社員を泣かせてしまって。自責の念でいっぱいです」というコピーが書かれたものもあった。それについても、

「若手社員を泣かせて洗い流そうってどういうこと」
「笑顔で言うことじゃない」

といった声が上がっている。若手社員を泣かせておいて、笑顔で「洗い流そ」うとする女性に動揺した人が多かったようだ。

広告を作成したのは、広告代理店大手の電通。同社は7月、サントリービールが新発売した『頂(いただき)』のPR動画を公開したものの、「女性を性的に描いている」といった批判が相次ぎ、すぐに公開を中止していた。そのため「炎上芸」と揶揄する人もいた。

牛乳石鹸共進社には、現在取材を申し込んでいる。回答があり次第、追記する。