VRで6500万年前の恐竜に出会おう! 空間移動型体験VR「ABAL: DINOSAUR」はジュラシック・ワールドだった

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夏休みに、恐竜に会いに行くと言う特別な思い出づくりができる時代になった。

それが、空間移動型VR体験「ABAL: DINOSAUR(アバル:ダイナソー)」だ。

この「ABAL: DINOSAUR(アバル:ダイナソー)」は既存のVR体験とは異なる「空間移動型」だ。
これまでにないリアリティ溢れる体験ができるのだ。

VR体験を実現する「ABALシステム」について簡単に解説したのち、「ABAL: DINOSAUR」の体験レポートをお届けしよう。

■ABALシステムとは?
「ABAL: DINOSAUR」は、ABALシステムにより、いままでにないリアルな体験(ABAL体験)ができる。

株式会社ABALは、
株式会社wise:リアルタイムCG・VFX分野に強みを持つ
株式会社A440:画像認識・位置測定・空間認識技術等を活用したソフトウエア、ハードウェアの企画・開発を行う
ROBOT:劇場映画を中心としたエンタテインメントおよび広告制作を行う
この3社がそれぞれノウハウを持ち寄り設立されたジョイントベンチャー企業。

VR空間内を自分の足で自由に歩いて、触って、多人数で楽しめる空間移動型VRシステム「ABALシステム」を開発し、ROBOTは同社の独占的営業窓口権を保有している。


株式会社ABAL は、3社がそれぞれノウハウを持ち寄り設立されたジョイントベンチャー企業


ABALシステムは、独自開発により、非常に軽量な装備でVR空間を歩くことができるのが最大の特徴だ。
ユーザーが身に付けるのは、軽量のHMDと手足のトラッキングターゲットのみ。
ほかのVRシステムに有りがちな、画像処理用PCを背負ったり、有線のディスプレイを装着したりする必要はない。

VR体験中は、オブジェクトに触れたり、多人数による共有体験ができたりと、ワイヤレスにより広い行動範囲を実現している。世界中の競合システムと比較しても類を見ない画期的なVRシステムなのだ。

●「ABAL体験のポイント」
ABAL体験のポイントは、
・触る
・共有
・超軽量
の3点だ。


ABALの仕組み。ユーザーサイド



「触る」
「ABAL」では、ユーザーはヴァーチャル空間内に存在する物(オブジェクト)に自分の手で触れることができる。
また、対象物にマーカーをセットすることで、そのオブジェクトを動かすこともできる。

「共有」
複数のユーザーでひとつのヴァーチャル空間を共有することができる。
現実と同じように相手の存在を認識することができるので、友達と手を繋いだり、ハイタッチしたり、時には助けを求めたりすることもできる。

「超軽量」
装備は軽量なヘッドマウントディスプレイ(HMD)とマーカーのみ。
完全なワイヤレスシステムのため、ユーザーの動きの制約が少ないのが特徴だ。
ヴァーチャル空間内を自由に歩きまわったり、跳ねたりすることも可能だ。

●「ABALの仕組み」
「ABAL」は、空間にセットされたモーションセンサーが
・ユーザーの位置情報
・全身のアクション
を感知する仕組みだ。
センサーの台数を追加することで、「会議室程度」から「スタジアム規模」まで、どんな広さの実空間にも対応できるという。


ABALの仕組み。システムサイド


■想像以上に凄い!まるで現実のような恐竜の世界が目の前に広がる
「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」は、今年で4回目となるテレビ朝日が六本木ヒルズで開催している夏の大型イベント。
テレビ朝日、六本木ヒルズを中心とした多数のエリアで、音楽ライブ、人気番組関連の飲食ブース、番組アトラクションなど様々なイベントを実施される。

「ABAL: DINOSAUR」は、この「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」の一角で一般公開されているVR体験イベントだ。




舞台は6500万年前の恐竜がいた世界。
体験者は恐竜たちの世界を歩きまわり、“巨大彗星”が現れるその時を目指して旅をする。
恐竜の大きさや声など、VRを通して、リアルに感じとることができるのだ。
最大同時体験者数は6名。コンテンツ時間は約15分。

来場者は、頭にHMD(Gear VR)、両手足にトラッキングターゲット(手×2個、足×2個、計4個)を装着する。
トラッキングターゲットはマジックテープになっており、スムーズに着脱することが可能だ。
来場者は、この状態で部屋の中を歩きまわることになる。


HMDとトラッキングターゲット


部屋には、モーションキャプチャーカメラが設置されており、マーカーをリアルタイムで読み取ることによって、来場者がどういう動きをしているのかを把握している。
来場者ごとにマーカーの配置は異なるので、個人を確実に特定、識別できる。
HMDのVR映像では、自分やほかの来場者は、ポリゴンで表示される。


モーションキャプチャーカメラ


スタッフによると、現在のVR体験システムの多くは、映像を見ながら移動したり、オブジェクトに触ったり、ほかの人とコミュニケーションをとることができない。

理由は、VR体験システムを実現するために、バックパックを背負ったり、配線があったりするからだ。

「ABAL: DINOSAUR」のABALシステムでは、バックパックは必要なく、データのやり取りも無線で行われるため、従来のVR体験システムになかった自由に歩き回るなどのリアリティ溢れる体験をすることが可能になった。


「ABAL: DINOSAUR」を体験中の筆者


今回、「ABAL: DINOSAUR」は、テレビ朝日の1階アトリウムに設置されていた。2フロアに分かれており、来場者は最初のフロアでHMDとマーカーを装着する。準備が完了したら、「ABAL: DINOSAUR」の始まりだ。

最初のフロアでは、他の来場者とハイタッチをしたのち、スポンサーである「ほけんの窓口」のオブジェクトを時計回りに渡して行き、6500万年前の恐竜世界への扉を開く。
扉の向こう側(次のフロア)に一歩足を踏み入れると、上空に体が浮上し、6500万年前にタイムスリップする。


「ABAL: DINOSAUR」の映像


来場者は、イカダに乗って川を下って行く先に恐竜たちが住む世界がある。
移動途中で様々なイベントが待っていて、手すりにつかまったり、橋を渡ったり、蜘蛛の巣に引っかかったりする。
実際には、現実世界で小道具を使っているだけなのだが、触覚によるリアリティは確かに感じる演出も楽しい。
そして、“巨大彗星”が現れる感動のラストに突入するのだ。

映画「ジュラシック・パーク」をご存じであれば、あの世界を冒険していると思っていただけると良いだろう。
筆者は仕事柄、いくつかのVR体験をしているが、これほどリアリティ溢れる体験は初めてだった。


「ABAL: DINOSAUR」の映像


■VRに没入するスピードが圧倒的に違う - ABAL尾小山社長
イベント会場にて、株式会社ABAL代表取締役尾小山良哉氏にお話しをうかがうことができた。

ABALシステムが従来のVRと大きく違う点は、
・VRの世界へすぐに入れる
・共有体験のVR
・VR内のオブジェクトに触れる
の3点があげられる。

「VRに没入するスピードが圧倒的に早いというのが最大の売りとなっています。」
と、ABAL尾小山社長。

実際に体験してみたが、まさにその通りだった。映像だとは知りつつも、すぐに現実世界のように思えてくる。
これは、実に不思議な体験だ。


株式会社ABAL代表取締役尾小山良哉氏


「ABAL」では、ウェアビリティやレイテンシーの問題を徹底的に研究することで、VR体験中に、いわゆる「VR酔い」にならないようにしているとのこと。安全性にも十分な配慮されているのだ。

「今年の夏は、いろんなところでVRコンテンツをやっていますが、自信を持って僕ら一番と言えるかなと思っています。」
と、ABAL尾小山社長は語ってくれた。
筆者はいろいろなVRコンテンツを見ているが、たしかに現状では、ABALシステムが一番か知れないというのが素直な感想だ。

どのVRコンテンツも全方位360度まではほぼ同じだ。
しかし、3Dのクオリティには違いがある。

ABALシステムの3Dは、現実と見間違うほどのリアリティがあるのだ。

「ABAL: DINOSAUR」では、ウェアラビティを上げるためにHMDのディスプレイにサムスン「Galaxy S8」を使っている。
画質だけでいえば、バックパックタイプにすれば、もっと映像クオリティは高くできるわけだが、なぜ、サムスン「Galaxy S8」を使用することにしたのだろうか?

そこには、画質とリアリティ体験での、気づきがあったという。


HMDのディスプレイにサムスン「Galaxy S8」を使っている


ABALシステムは、2年前からプロジェクトをスタートさせた。
その中で「体験のクオリティは、映像のクオリティに関係ない」ということに気がついたという。

「ウェアラビティを上げることが体験のクオリティを高める」
このことに気付いたことで、そこから開発を進めた。

「体験のクオリティが高ければ、映像のクオリティはハードウェアの問題なので、時間軸的に上がってくるでしょう。今はスマートフォンでやっていますが、今後はスタンドアローン型VRというのがこれから出てくると思います。そのときに一気に画質が高まるというのは想像に難くないと思います。」(ABAL尾小山社長)

ABAL尾小山社長によると、今一番やらなければならないことは「体験を作ること」だという。
そのため、リアルな体験を具現化するため、映像のクオリティは切り捨てたのだ。
映像のクオリティについては、あとから必ず追いついてくるという。

確かに、今回の「ABAL: DINOSAUR」では、映画「ジュラシック・パーク」の中にいるような体験ができた。

ただ「見ている」のではなく、『体験できる』なのだ。」

これがほかのVRシステムとの大きな違いでもある。


「ABAL: DINOSAUR」の映像


ABALシステムでは、体験者の頭と両手足の計5箇所にマーカーを装着している。

なぜ、5箇所なのか?

ABAL尾小山社長によると、
「体験軸を上げようとすると、手や足がピッタリと合っていることが重要です。モーションキャプチャーという技術を使って手足の動きをとらえていますが、マーカーが増えると、このトラッキングポイントが増えてきます。」
ポイントが増えると、スムーズな動きができなくなるのだ。

人間は、頭と両手足の5点で、人として認識できる。
必要最小限のマーカー数にとどめることで、体験者がスムーズなVR体験ができるようになっているわけだ。


手に装着したマーカー


HMDをよく見ると、「角」の先にマーカーが付いている。
実は、この「角」に行きつくまでが非常に大変だったという。
角にマーカーを装着したことで360度、どの位置からでもマーカーが認識できるようになったという。
万が一、角のマーカーが見つけられなくなると、ロストする(VRの世界から消えてしまう)という。
もちろん少しくらい隠れる程度であれば、ロストする心配はない。


HMDをよく見ると、角の先にマーカーが付いている


実は「ABAL: DINOSAUR」を体験していた親子のうち、母親のマーカーが認識できなくなり、母親がVRの世界から消えてしまったことがあったという。(実際には存在していたが、VR映像の中で消えたのだ。)
そのとき、子供は本当に母親が消えてしまったと思って泣きだしてしまったそうだ。
まさに現実と錯覚してしまうほどのリアル体験だったのだ。
それがABALシステムなのだ。

今回、VRの世界では、現実世界で触覚を刺激するものがいくつかある。
・手すり
・扇風機
・糸(蜘蛛の巣)
・発砲スチロール(橋)
などだ。
こうした実際の物体が、VRの世界のリアリティを向上させているのだ。


リアリティを出すだめの演出。発砲スチロール(橋)


「ABAL: DINOSAUR」の最大同時体験者数は6名だが、技術的にはすでに12名まで可能だというから驚きだ。
今回は7m×7mの部屋で6名だったので、他の人とぶつからずに済んだ。
当然、参加人数が増えれば、そのぶん広い部屋(空間)が必要となる。


7m×7mの部屋で、6名でVRを体験


「みんなの一斉パンチで恐竜を倒す」なんてVR体験はできるのか?
「できなくはありません。ただ僕らはゲーム体験を作っているわけではなくて、ストーリーテリングというのを非常に重要視しています。成功と不成功をVR体験するものをやりたいわけではないので、みんなで協力するゲームにはしていません。

もうひとつ理由があって、運用していく中で、ユーザーに渡して行く時間軸、つまりXタイムがどんどん伸びてくると、そのぶん運営がまわらないリスクになってきます。そういう部分は今回、非常にミニマムなかたちにしています。」(ABAL尾小山社長)

VR=ゲームと考えがちだが、ABALには映画に関連した会社が入っていることもあり、映像に近いアプローチからVR体験をユーザーに届けたい,という思いが伝わってきた。


「ABAL: DINOSAUR」の映像


ところで、このABAL社は、先日、ノートPCでお馴染みのVAIO株式会社と提携したばかりだ。

VAIO社との提携には何も期待しているのか? 伺った。

「我々の中では、ハードウェアのバックヤード(裏付け)はないんですね。いろんなものは既存のものを使っています。必ずしもVAIOオリジナルのものを作るかどうかの話ではないですが、現状、いろいろなガジェットがどんどん出てくるスピード感に、ハードウェアの知識ゼロでずっと着いて行けるかといえば、非常に疑問かなと思います。

現在、VR体験を通して、必要な要素が見えてきている段階だと思っています。それがある程度見えてきて揃った時に、一番良いハードウェアを開発することも可能かと思っています。そういう意味で、ハードウェアの知識、安心感を期待しています。」(ABAL尾小山社長)

ABALのシステムを制御しているコンピューターは何か? 
気になるところだろう。 しかし普通のサーバーレベルのもので、特別なものではないそうだ。


ビジネスとしてやっていく以上、マネタイズも気になるところだ。

「基本的に、ひとつのパッケージ化をしています。ひとつめとして、パッケージをベースにしたBtoBtoCというのは、やっていこうと思います。今までのVR会社は、けっこう収益化のモデルは難しかったと思うのですけど、ここで初めて実証実験が最終の段階をむかえている感じです。ここでまわる人数や予算、そういうものを鑑みたうえで、僕らのABALパッケージプランというものが出てくるかなと思います。」(ABAL尾小山社長)


ビジネスプランについて語る、ABAL尾小山社長


「それはひとつのパッケージプランとしての展開です。僕らがベースで考えているのは、この仕組みを使っていろんなものが生まれると思うので、BtoBみたいなものベースに製作開発を行うのもひとつあります。独自展開でBtoCをやることは、できたらよいと思いますが、今のところはもう少し先になると思っています。」(ABAL尾小山社長)

ABAL はVR体験システムとしては後発だが、オリジナルのストーリーを製作し、きちんと運用プランを考えて運営しており、いろいろなところからBtoBの商談がすでに来ているという。


「ABAL: DINOSAUR」の映像


今までの来場者で感動したことがあるという。
親子づれできた来場者のお父さんとお子さんが、VRの中で夕日を眺めながら自然に手を握ったことだ。
まるで、どこかに旅行したような体験を与えられたと思い、非常に感動したそうだ。

歩きまわって触れるVR体験ができるのは、現在のところ「ABAL: DINOSAUR」だけだ。
VRに興味がある人も、そうでもない人も、この夏に、是非、体験してみてはいかがだろうか。


ITライフハック 関口哲司