by Jeremy A.A. Knight

AMD Ryzenという強力なライバルの登場で、CPUのロードマップの変更を余儀なくされているIntelが、新たに第9世代Coreプロセッサーとなるコードネーム「Ice Lake」の存在を明らかにしました。プロセスルールの微細化と機能向上を繰り返す「チック・タック」がすでに「チック・タック・タック+」の3ステージ制に変更されていましたが、そのルールさえも崩れることになる見込みです。

Ice Lake Processor Family

https://www-ssl.intel.com/content/www/us/en/design/products-and-solutions/processors-and-chipsets/ice-lake/overview.html

Intel Officially Reveals Post-8th Generation Core Architecture Code Name: Ice Lake, Built on 10nm+

http://www.anandtech.com/show/11722/intel-reveals-ice-lake-core-architecture-10nm-plus

IntelのCPUに関する情報を公開するコードネームデコーダに、「Ice Lake」というコードネームが登場しました。第8世代Coreプロセッサーに含まれるという表記もあります。



ただし、Ice Lakeは第8世代Coreプロセッサーの後継シリーズになるとの説明もあり、「第9世代Coreプロセッサー」シリーズと考えることも可能です。なお、プロセスルルールは「10nm+」となるようです。



ちなみに、「Ice Lake」についてIntelは2017年6月にTwitter上で触れたことがありました。





第8世代Coreプロセッサーに関しては、メインストリーム・デスクトップ向けの「Coffee Lake」シリーズが急遽、前倒しで市場に投入されるという情報が出されていました。なお、Coffee Lakeに関しては、2017年8月21日にIntelから正式に発表される予定です。

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このCoffee Lakeシリーズの後継シリーズとしては、かねてから「Cannon Lake」というコードネームが知られていましたが、前倒しでリリースされることになったCannon LakeとともにIce Lakeというシリーズも前倒しで登場することから、Cannon LakeはCoffee Lakeとともに、第8世代Coreプロセッサーシリーズに含まれるという予想が出てきています。

変更が繰り返されて混乱しがちなIntelのロードマップを整理するべく、AnandTechが世代別に表にまとめています。まだ公式発表が出されていないCannon Lakeが最初の10nmプロセスで製造され、Ice Lakeが同じ10nmプロセスのプロセス改良版の「10nm+」で製造される第9世代Coreプロセッサーとして登場すると推測されています。



従来、Intelはプロセスルールの微細化と新マイクロアーキテクチャ導入による機能向上とを交互に繰り返す「チック・タック」方式を採用していましたが、14nm以降、プロセス微細化が難航しており第6世代Skylakeシリーズの後継である「Kaby Lake」シリーズを「14nm+」というプロセス改良版で登場させて「第7世代」と銘打って2017年1月にリリースしました。Kaby Lakeの中身はSkylakeのマイナーチェンジ版であり、本来は「Skylake Refresh」とでも言うべきところを新世代CPUとして販売したというわけです。これにともない、2世代ごとに改良していくチック・タック方式は、3世代ごとに改良していく「チック・タック・タック+」方式に変更されることになりました。

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しかし、Coffee Lakeシリーズが「14nm++」という14nmの続・改良版プロセスで登場することで、「チック・タック・タック+・タック++」という4シリーズ方式とでも呼ぶべき状態になることが予想されています。ちなみにIntelが公開しているプロセスルールと性能向上を示した図では、「14nm++」は「10nm」や「10nm+」をやや上回るとされています。



仮に、Intelが第8世代Coreプロセッサー世代で「14nm++のCoffee Lake」と「10nmのCannon Lake」を登場させるならば、同世代でプロセスルールが異なるモデルをリリースすることになり、市場の混乱は避けられそうにありません。この理由について、AnandTechは「新しいリソグラフィーノードへの移行能力にある」と推測しています。

初の10nmプロセスを採用するCannon Lakeでは、高い歩留まりを追求する上でダイサイズが大きなCPUは不適当です。このため、Cannon LakeではTDPが15W以下のモバイル向けのCPUとして歩留まりを維持しつつファブのリソグラフィー技術の改良を進め、TDPが35W以上のデスクトップ向けCPUでは14nm++のCoffee Lakeを使う、というわけです。難航する10nmプロセスが洗練されて、大きなダイを歩留まり良く製造できるようになるまでの時間稼ぎを行い、10nm+の第9世代CoreプロセッサーIce Lakeにつなげるという戦略ではないかとAnandTechは予想しています。



Ice Lakeシリーズの登場は2018年から2019年と予想されていますが、Coffee Lakeシリーズの発表がある2017年8月21日に、Ice Lakeシリーズの内容に関する何らかの発表があるかもしれません。