15年目を迎えるラグビーの日本最高峰リーグ「トップリーグ(以下:TL)」が8月18日に開幕を迎える。16チームがしのぎを削る今季の優勝争いは、例年以上に混沌としそうな予感だ。


オーストラリア代表103キャップを誇るマット・ギタウ

 昨季全勝でシーズンを駆け抜けたサントリーサンゴリアスが連覇を達成するか、もしくはFB(フルバック)五郎丸歩の復帰した昨季2位・ヤマハ発動機ジュビロが悲願の初優勝を遂げるか、はたまた2015-2016シーズンまで3連覇を果たしたパナソニックワイルドナイツが覇権を奪還するのか――。さらには「トップ4の常連」神戸製鋼コベルコスティーラーズの浮上、低迷しているトヨタ自動車ヴェルブリッツの復活、最多優勝5回を誇る東芝ブレイブルーパスの巻き返しなど、開幕前の興味は尽きない。

 リーグの試合方式は、今季から一新された。昨年からサンウルブズが2月中旬〜下旬開幕のスーパーラグビーに参戦することになったため、その準備期間を確保すべく、今季から日本のTLシーズンは1月中旬で終了する。結果、昨季までの16チーム総当たり戦を行なうことがスケジュール的に困難となり、「レッド」と「ホワイト」の2カンファレンス制で実施されることになった。

 各チームは所属するカンファレンス内で1試合総当たりのリーグ戦7試合と、別カンファレンスのチームとの交流戦6試合で計13試合を行ない、各カンファレンス上位2チームが日本選手権を兼ねた総合順位決定トーナメントに進出する。そしてTLの決勝は2018年1月13日。舞台は東京・秩父宮だ。

【レッドカンファレンス】 ※カッコ内は昨シーズンの順位
サントリー(1位)、神戸製鋼(4位)、NTTコミュニケーションズ(5位)、トヨタ自動車(8位)、東芝(9位)、クボタ(12位)、近鉄(13位)、NTTドコモ(下位リーグから昇格)

【ホワイトカンファレンス】
ヤマハ発動機(2位)、パナソニック(3位)、リコー(6位)、キヤノン(7位)、NEC(10位)、宗像サニックス(11位)、コカ・コーラ(14位)、豊田自動織機(15位)

 それでは、TLで優勝を争う各チームのキーマンを紹介しよう。偶然だが、フランスの強豪チームで欧州王者3回を誇るトゥーロンから3人の選手がTLに加わった。これは世界におけるTLの市場価値が高くなったことを示す出来事だろう。

 毎年あと一歩のところで優勝を逃しているヤマハ発動機には、元日本代表FB五郎丸が2シーズンぶりに復帰する。海外では出場機会に恵まれなかったものの、「(試合に出たくて)ウズウズしています」と宣言したとおり、練習試合では「15番」をつけて3試合に先発。すでに清宮克幸監督も8月18日のトヨタ自動車との開幕戦での起用を明言し、「(五郎丸が)出る前と同じヤマハではない。五郎丸が帰ってきてメリットがある。化学変化を期待したい」と自信を口にした。

「(キックの)当たりはいい」という五郎丸は、8月最初の練習試合でも新ルーティンでキック6本をすべて成功。「(ワールドカップが開かれる)2019年までどう盛り上げていくか。TLも大事な要素なので、その盛り上がりにひと役買えれば」と語り、そのプレーでラグビーの魅力をアピールすると意気込む。

 一方で、その五郎丸が「トゥーロンで感銘を受けた選手」として名指しした選手も、「優勝請負人」としてサントリーにやってきた。オーストラリア代表の「ギッツ」こと万能BK(バックス)マット・ギタウだ。

 178cm・95kgと体格は決して大きくないが、視野が広くスキルも高い。オーストラリア代表で103キャップも積み上げた名選手だ。トゥーロンでも数々のタイトルを獲得し、今季から満を持してTLに挑む。

 サントリーを昨季優勝に導いた沢木敬介監督は、ギタウのことを「動きながらもコミュニケーションが取れて運動量も豊富。自分たちのラグビーに合っている選手」と評する。インサイドCTB(センター)を任される一方、SH(スクラムハーフ)流大(ながれ・ゆたか)やSO(スタンドオフ)小野晃征とともにゲームをコントロールする役目も担うだろう。

「(サントリーの)アタッキングラグビーは好き。外国人選手は毎試合いいプレーをすることが望まれるが、それをいいプレッシャーと受け止めたい。個人で最高のプレーをするだけでなく、チームで成功することが自分の一番の成功だ」

 ギタウは34歳のベテランらしく、チームの勝利を第一にTLでの抱負を語った。五郎丸が復帰したヤマハ発動機と、ギタウが加入したサントリーの対決は、9月2日のTL第3節。東京・秩父宮ラグビー場での一戦は、シーズン前半の山場のひとつとなるだろう。

 そして、もうひとりのトゥーロンからの大物選手は、昨季8位と低迷したトヨタ自動車にやってきた。古豪復活を目指すトヨタ自動車は、今年3月に世界的名将を招聘した。2007年ワールドカップで母国・南アフリカ代表を優勝に導いたジェイク・ホワイト監督だ。ワールドカップ優勝監督がTLのチームを率いるのは初めてのこと。この電撃就任により、トヨタ自動車は一気に今季のダークホースとなった。

 元日本代表監督のエディー・ジョーンズの盟友でもあるホワイト監督は、「(サントリー時代にTLで優勝した)エディーから紙に書いた(TLを制するための)レシピをもらった」と冗談を飛ばしつつも、「トヨタ自動車を変える。FW戦ではフィジカルに戦い、ディフェンスではタフな選手を揃え、強さを出していきたい」と力強く語る。

 そのホワイト監督が「優勝を知る男」としてトゥーロンから呼び寄せたのが、2007年ワールドカップでともに美酒を味わったFL(フランカー)ジュアン・スミスだ。196cm・116kgと恵まれた体躯を持ち、モールやラインアウトだけでなく、ボールキャリアとしての能力も高いオールラウンダーである。トゥーロン時代はギタウとともに国内外のタイトル獲得に大きく貢献した。

 ルーキーながらチームキャプテンに指名された帝京大出身のFL姫野和樹とともに、スミスは新生トヨタ自動車の象徴となるだろう。ワールドカップを制したホワイト監督とスミス、そして「常勝軍団」帝京大出身の姫野のウィニングカルチャーがチームに根づけば、今季トヨタ自動車が大きく飛躍を遂げることも決して夢ではない。

 そして最後は、王座奪還を狙うパナソニック。HO(フッカー)堀江翔太、SH田中史朗、WTB(ウィング)山田章仁ら日本代表が揃うTL優勝候補は、手薄だったLO(ロック)を3人加えるなどさらに強化を進めた。そのなかでも今季、TL新人賞候補と見られているのがSO/CTB松田力也だ。

 帝京大出身の松田は大学選手権の5〜8連覇に貢献した若手有望株で、大学3年時に代表初キャップを獲得。今年6月の日本代表でも存在感を示し、すでにサンウルブズでのデビューも果たした。

 パナソニックのロビー・ディーンズ監督に話を聞くと、「必ずメンバーのセレクションに関わってくる」と、松田の能力を高く評価している。大学生トップリーガーとして昨季活躍したSO山沢拓也や、帝京大の先輩でTL2年目のCTB/FB森谷圭介らとともに、ルーキーながらSOやインサイドCTBでゲームメイクを担うことになるだろう。

 パナソニックの司令塔には、TLのMVPに2度輝いた元オーストラリア代表のベリック・バーンズが君臨している。だが、松田はパナソニック入りを決めた理由を「自分が一番成長できるチームと思った」と言うように、ポジション争いをむしろ歓迎しているようだ。「バーンズは偉大な選手ですし、僕らがSOに入るときと彼が入るときではチームに対する影響が違いますが、自分もそうなれるように毎日積み重ねたい」と語る。

 2019年ワールドカップまで、あと2年あまり。日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは今秋以降に「メンバーを固定していく」と明言しており、日本人選手にはTLでも高い精度のプレーが求められている。一方で、来日したトップレベルの外国人選手のプレーも必見だ。今季も日本最高峰リーグを心から楽しんでほしい。

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