橋下徹"まず森友学園の土地を掘り返せ!"

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■「偏向報道」を批判しても支持率は回復しない!

今の安倍政権の対応を見ていると非常に危ない。安倍晋三首相があれだけ強烈に謝罪と反省の弁を述べたにも関わらず、政府の対応は従前と何ら変化が見られない。かろうじて加計学園問題において獣医学部の新設が文科省によって保留されたけど、これも安倍政権が主体的に保留にしたというよりも世間の反発が気になってなかなか認可ができないという印象を振りまいてしまっている。

一部インテリは、こんな問題は大した問題ではない! メディアの偏向報道が原因だ! 安倍政権の主張に間違いはない! などと主張しているが、そんなことを言ったところで支持率回復にはつながらない。他者を批判しておけばいい評論家ならではの主張だ。実際の政治は、メディアが偏向報道しようとも支持率を回復しないことには思う存分の政治ができない。メディアを批判するよりも支持率回復の具体策を講じることこそが今は必要だ。

事後挽回の危機管理で一番やってはいけないことは他者を批判するだけの評論家的態度。客観的に状況を分析して自分以外の他者に責任があるような解説で満足してしまうことが最悪だ。危機管理は当事者意識を持って、他者批判ではなく、自分ができること・やらなければならないことを徹底してやっていくことが肝要だ。評論家は他者を批判するのは得意だが、じゃあ支持率回復のためには何をしたらいいの? という問いには現実的かつ実効的な策を提案することはできない。

ゆえに今回は、メディア批判は横に置いといて、安倍政権の支持率低下を招いた森友学園問題加計学園問題・防衛省の陸上自衛隊日報問題の3つの問題について、支持率回復のためにどのような事後挽回を行うべきかを具体的に論じます。

まずは森友学園問題について。森友学園に土地を売却した財務省側の記録が出てこないのは誰が考えても不自然。財務省自身や会計検査院による調査には限界があるので第三者調査委員会を立ち上げ、徹底的に調査をするべきだ。そしてその調査とあわせて、ただちに森友学園の敷地を掘り起こして、ゴミの有無の確認をしなければならない。ゴミが埋まっていたなら、8億円の値引きの根拠は正当だ。国会でぐじゃぐじゃ議論していたこと、特に野党が追及してきたことの意味がほとんどなくなる。敷地からそれなりのゴミが出てくれば第三者調査委員会の調査もそれ以後深く突っ込むことは不要になるだろう。

だが、ゴミが出てこなければ、値引き根拠は存在しなくなる。財務省のこれまでの説明が全て吹っ飛び、国民を誤魔化していたことになる。安倍さんはじめ日本政府は徹底して謝り、第三者調査委員会による徹底調査が必要不可欠になる。これまで国会でグダグダ議論していたけど、値引きの根拠が正当かどうかは敷地を掘り起こしてゴミの有無の確認をすれば一発で明らかになる。だからこそ、安倍政権は進んで敷地の掘り起こしをしなければならないし、それこそが森友学園問題の事後挽回策の決め手なんだ。

森友学園の敷地は、森友学園の破綻に伴って国の所有に戻った。ゆえにいつでも敷地の掘り起こしができる。安倍政権は直ちに実行すべきだ。

■佐川国税庁長官は逃げずに記者会見に応じるべき

さらに財務省の説明を一貫して担ってきた前理財局長の佐川宣寿氏は、国税庁長官に昇任したが、長官就任の記者会見を開いていない。このような態度は直ちに改めるべきだ。記者会見こそ事後挽回策の柱。国会での質問より、記者からの質問の方がきつい。佐川氏はこの記者からの質問にきちんと答える義務がある。国税庁と言えば、税の徴収という最大の国家権力を行使する機関。そのトップが国民への説明責任を果たさないとなると、民主国家の政府機関は非常に脆弱になる。

国家権力を行使する政府機関が、安定的に存続するためには、暴力と恐怖で国民を抑え込むか、国民からの信頼を得るかの2つしかない。民主国家はもちろん後者だ。あれだけ「記録は廃棄した」「記録は廃棄したけど適切に処理した」「さらなる確認はしない」を連発した佐川氏が国税庁のトップに就いたことを、納税者である国民は納得するだろうか。僕を始めとする事業主は税務調査を受けるが、必ず記録の有無が問題になる。記録がなければ納税者の言い分は通りにくい。このときに国民は今後黙って税務署の主張に従うのか。財務省は自分たちは法令に従っていると主張するが、国民に対してだけ厳格な保存義務を定め、自分たちには甘い保存義務のルールを自分たちで定めた財務省の態度振る舞いを、国民は納得するだろうか。

佐川氏の国会での説明に国民の多くは納得していないだろうが、それでも佐川氏の行為は処分等の対象ではない。そうすると理財局長から国税庁長官への昇任は財務省内では順当な人事だ。しかし、それはあくまでも財務省内部の話であって、国民目線からすれば、佐川氏をあえて国税庁のトップにする必要はなかったと思う。ここも安倍政権が国民の方を向いていない象徴例で、支持率低下の原因になっていると思う。

■首相夫人は「公人」、きちんとルール化を!

他方で、昭恵夫人の名誉校長就任については、安倍さんは反省の意をきっちりと示した。であれば昭恵さんの名誉職就任やその他の活動についてのルール、そして政府職員の随行・サポートのルールなどを厳格・明確に定めて事後挽回としての態度を示すべきだ。

首相夫人が完全なる私人であれば政府のサポートは基本的には受けられない。しかし首相夫人に公的な役割が一定あるとするなら政府のサポートも一定必要だろう。政府のサポートを付けるのであれば都合よく「私人だから」という逃げを許さない、公的な存在としてのルールが必要になる。

アメリカ大統領夫人はファーストレディーとして制度化され、政府のサポートを堂々と受ける代わりに一定のルールに服する。フランスにおいて、マクロン大統領が妻をファーストレディーとして位置付ける制度を作ろうとしたら、国民から批判の声が上がった。ファーストレディーのために予算を拡大するのはおかしいという理由で。これも国によって異なるだろうが、いずれにせよ無条件で何のルールもなく政府のサポートを受けることはおかしいことだ。

昭恵さんは政府職員のサポートを受けて日本各地や海外にも行っていた。自民党議員の選挙応援にも行っていたとのこと。そして何かあれば政府幹部に直接連絡もとっていた。ところが肝心のところでは私人という立場を強調して、政府職員とのやり取りやその他の記録については公文書性を否定し、公開を拒否した。これはご都合主義のほか何ものでもない。

昭恵さんがここまでの存在であれば、公的な存在としてきっちりとルール化すべきだ。今、昭恵さんは私人として自由な立場でありながら政府のサポートを受けているという一番楽な立場になっている。ここを徹底して見直すことが事後挽回策のポイントの一つだが、安倍政権の動きは鈍い。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.68(8月15日配信)からの引用・再編集版です。もっと読みたい方は、メールマガジンで!! 今号は《[決定版!実践危機管理]安倍政権支持率危機!なぜ謝罪・反省だけでは逆効果なのか?》特集です。

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 撮影=市来朋久)