横向き寝のほうがいいという(写真:AFLO)

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 ぐっすり眠れる高齢者は意外なほど少ない。厚労省の「国民健康・栄養調査」(2013年)によれば、60〜69歳男性の4人に1人が「夜間、睡眠途中に目が覚めて困ったことが週3回以上ある」と回答。5人に1人が「起きようとする時刻よりも早く目が覚め、それ以上眠れないことが週3回以上ある」と答えた。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏が言う。

「これら“睡眠力”の低下は様々な重篤な疾患を招く不眠症につながる怖れがある。高齢者ほど“危険な睡眠”を改めて適切に眠れるよう努力すべきです」

 東北大学大学院の研究チームが40〜79歳の男性約2万5000人に行なった調査(1994年)では、睡眠時間が1日6時間以下の人は、睡眠7〜8時間の人と比べて3年以内に前立腺がんを発症するリスクが38%高かった。

「人間の睡眠では、体を休めつつ大脳が活動するレム睡眠と、大脳が活動を休止して脳や免疫機能を回復するノンレム睡眠が、約90分周期で入れ替わります。睡眠時間が6時間以下ではこのサイクルが十分でなく、疲労が蓄積して免疫機能が低下すると考えられる」(梶本医師)

 一方、65歳以上の高齢者を対象とした調査では「寝過ぎ」が「物忘れ」を招くという結果も出ている。

 英ウォーリック大学のミシェル・ミラー教授が65〜89歳の高齢者に行なった調査(2014年)では、睡眠時間8時間のグループは、7時間のグループと比べて記憶力の低下が有意に大きかった。

 寝相がいいことは健康面では褒められない。就寝中の寝返りには体の歪みを治す効果があり、まったく寝返りをしないと腰や背中などが一晩中、体重の重みで圧迫される。高齢者は特に、血流が悪くなり腰痛や肩こりが発生する。

「うつ伏せで寝ると口腔が体重で圧迫されて歯並びが変化し、かみ合わせが悪くなる傾向がある」(同前)

 また、仰向けも喉の気道を狭くするため睡眠時無呼吸症候群のリスクがある。

「睡眠に最も適するのは『横向き』。気道を確保していびきを防ぎ、質の高い睡眠が得られるため、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβが排出され、認知症の予防に有効との研究もあります」(同前)

 横向きで寝るには、抱き枕が効果的だ。

 そして、「健康のために」と就寝時に冷房を切る高齢者は多いが、逆効果と梶本医師は指摘する。

「高齢者は暑さや喉の渇きに鈍感で、睡眠中に室温が上がっても気づかず熱中症になりやすい。また熱中症による脳機能の低下が睡眠時無呼吸を引き起こし、夜間の突然死の原因となる。今の時期、65歳以上の方は必ずエアコンをつけて寝てほしい」(同前)

 タイマー利用だと、夜中に暑さで目を覚ましてしまい、安眠が確保できない。朝まで「つけっぱなし」が基本だ。

※週刊ポスト2017年8月18・25日号