数年前に、妻と私の仕事場兼住居として、古い家を購入した。家のまわりや庭的な部分には、建て主により庭木や山野草が植えられていて、ささやかながら季節の花々が楽しめる。だが……、光あるところには影がある。

 数本あるツバキの木に、チャドクガの毛虫が湧くのである。その毒針毛にやられるとたいへんなことになるという。

 毒針毛は目に見えないほど微細で、それが風や振動によって飛び、皮膚につくと炎症をおこすらしい。おちおち子供を遊ばせることもできない。

 数年前、その大発生をはじめて見たときは悲鳴をあげた。

「ぜんぶ抜く。ツバキぜんぶひっこ抜く!」

 だが、意外にも花を愛する妻は反対。植木屋さんと相談の上、1、2本抜くにとどまった。

 消毒剤を年2回ほどかけてもらっているが、それだけでは100%防ぎきれず、毛虫は毎年発生する。発見したら連絡するが、すぐ来てくれないことも多い。

 植木屋さんへの支払いは妻がしているので「毛虫退治、お前がやれ」というわけにもいかず、私がなんとかするしかない。

 普通のスプレー殺虫剤をかけると、毛虫が落ちて被害が広がるという。殺せばいいわけではないのがむずかしい。

 検索していきついたのが、表題の「チャドクガ毒針毛固着剤」。明解なネーミングだ。

 近所のドラッグストアにはおいてなかったので、ネット通販で買った。税込み1300円ぐらい。人生何を買うことになるかわからない。手袋をし、左手にはアウトドアなどで使う火バサミを持つ。もちろん長そで長ズボン。首には手ぬぐいを巻く。

 毛虫を発見したら、慎重に火バサミで葉をつかみ、スプレーを吹きかけ、毒針毛ごと固めてしまう。固着剤に殺虫成分は入っていないので即死はしないが、やがて窒息死する。

 ……こんなの読むのイヤかもしれないが、やってるほうはもっとイヤなんだ!! 『シン・ゴジラ』の、ゴジラを大量の冷却剤で活動停止させようという作戦、気分はアレで、慣れてくるとなかなか高揚する。脳内BGMはもちろん伊福部昭だ。

 ……とでも思わないとやってられない。

 固めた葉は剪定バサミで切りとり、ビニール袋に入れて燃やせるゴミに出す。終わるといつも体がかゆいような気がするのだが、今のところ被害にあったことはない。

 このパトロール&駆除を、春と初秋の年2回やるのが、毎年の恒例となった。

 植物の名前はなかなか覚えられないのに、チャドクガの生態にはちょっとくわしい、たのもしいんだか哀しいんだかわからないオヤジになったわけだが、これも運命、 といえるのかもしれない。

「チャドクガ、今日はあそことあそこに出てたからやっつけた」妻には必ずこのように報告し、「感謝してね」アピールをすることも忘れない。

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」で『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年8月22日・29日合併号)