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まいど、"相場の福の神"こと藤本誠之です。この連載では、上場企業の経営者との面談から気づいた、藤本がすごいと思った、ユニークなビジネスモデルの企業をご紹介します。第3回は、「50万円で起業、日本の農家を元気にする企業」です。

○自由に作物を売れない日本の農業

日本の農家の大半は、自由に作物を、自分の売りたい値段で、売りたい場所で販売することができません。なぜなら、ほとんどの農家は農協(農業協同組合)に所属しており、農協を通じて、米や野菜や果物などの農産物を販売しているからです。農協は、JA全農(全国農業協同組合連合会)に連なる組織です。

JA全農のWebページには、「JA全農はJAグループの中で農畜産物の販売や生産資材の供給を通じて、消費者のみなさまと農家の方々を安心で結ぶ懸け橋になります」と書いてあります。農家に、種苗や農薬などの生産資材を販売、また農家が作った農畜産物を集荷して、卸売市場で販売しているのです。

農協は、その地域の農家からまとめて集荷するので、個々の農家は農協が決めた基準の作物を持っていくだけなのです。どのような値段で、どこに売るかは農協が決めるので、農家としては、販売手法や、販売場所、価格については、関与できない仕組みとなっています。

この従来のビジネスモデルを、「提携スーパーでの委託販売」というビジネスモデルで、打ち破ったのが、農業総合研究所(3541)です。

○農家が価格や販売先を自由に決められるプラットフォーム

農業総合研究所は、全国の生産者及び農産物直売所と提携し、全国67カ所の集荷施設で集荷した新鮮な農産物を主に都市部の約1,000カ所のスーパーなどの店舗の一角にインショップ形式の直売所で委託販売するプラットフォームを運営しています。

農家は農産物を規格にとらわれず自由に生産し、自ら販売価格や販売先を決めて出荷することができます。具体的には、農家が自由に好きな作物を作り、自由に個数、規格などを決めて袋詰めするのです。前日までの、農産物のスーパーでの小売価格、店舗ごとの販売動向などのデータをタブレット端末で確認することができます。そのデータを元に、農家自身がどの店舗で、いくらで販売するかを決めて、生産者、農産物の種別、販売価格などが印刷されたシールを、袋詰めしたものに貼ります。それを、農業総合研究所の集荷所に持っていくのです。

農家としては、スーパーの委託販売手数料、農業総合研究所のプラットフォーム使用料を差し引かれた残りが、手取りとなって受け取れます。消費者も、シールのデータを読み取れば、生産者やどのようにして作られた農産物が確認することができるのです。通常スーパーでは、同じ個数、規格、値段のものばかり並びますが、農業総合研究所の委託販売のコーナーでは、生産者によって個数、企画、値段が異なりますので、自由に選択して購入することも可能です。生産者、消費者ともに、自由に選ぶことができるのです。

こだわりをもって生産した農産物を"顔の見える"形で生活者に届ける流通が実現されています。

○代表取締役社長は元きゅうり農家

このビジネスモデルを作り上げたのが、農業総合研究所です。和歌山県和歌山市に本社がある「農業」×「IT」ベンチャー企業です。ITを駆使し、クリエイティブに新しい農産物流通を創造し続ける会社です。東京農業大学出身で、元きゅうり農家・青果店経営の経歴を持つ及川智正 代表取締役社長が、「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」を経営目標に、起業しました。

及川社長は、東京農業大学在学中に、「日本の農業を変えたい」と考えました。農家が自由に生産することが出来ず、自分で販売方法、値段も決められないことに、疑問を感じたからだそうです。日本の農業を変えるには、まずは農家になってみて、農家の気持ちを判分かる要があると考え、大学を卒業後、奥様の実家の和歌山県でキュウリ農家を始めます。

苦労をしながら、3年間の農家を経験したのち、大阪で青果流通を行い、農家から買い、販売店の小売りするビジネスを行いました。農家の時ときは、いかに良い作物を数多く作り、高く売ることを考えてきたのに、青果流通では、いかに農家から安く仕入れるかを考えてばかりいたそうです。そこで、「スーパーでの委託販売」というビジネスモデルを思いつき、たった50万円の資金で、起業したのが農業総合研究所です。

今後は、子会社の世界市場を通じて、日本の農産物を香港や台湾などアジアを中心に販売することを、検討しています。これが実現化すると、日本の安全で美おいしい産物を、農家が自分で販売先を決めて販売することが可能になります。

福の神の「ここがすごい」

農家が、自由に作物を作り、どこで、いくらで売るかを決められるという、工業製品では当たり前のことを、農産物で可能にしたビジネスモデル

農業総合研究所 (3541)東証マザーズ

■株式データ

株価 5,810円

単元株数 100株

予想PER(連) 110.67倍

実績PBR(連) 23.86倍

予想配当利回り 無配

時価総額 約122億円

* 株価データは2017年8月10日終値ベース

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○執筆者プロフィール : 藤本誠之

「相場の福の神」と呼ばれるSBI証券客員マーケットアナリスト。

年間200社を超える上場企業経営者とのミーティングを行い、個人投資家に真の成長企業を紹介している。「まいど! 」の挨拶、独特の明るい語り口で人気。日興證券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、財産ネット株式会社の企業調査部長。ラジオNIKKEIで3本の看板番組を持ち、その他テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。

日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジストAll About株式ガイド。

著書:『難しいことは嫌いでズボラでも 株で儲け続けるたった1つの方法』(SBクリエイティブ)など合計15冊