ふたりの経営者が読み解く鬼才、レイ・クロックは「英雄か、怪物か」

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米ハンバーガーチェーン、マクドナルドの創業者レイ・クロックを描いた映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』が公開されている。レイ・クロックといえば、冴えないセールスマンから一転、52歳のときに出会ったハンバーガーショップを世界最大のチェーンに創り上げた男だ。

Forbes JAPANは7月27日、KADOKAWAと共同で本作の試写イベントを実施。コモンズ投信の会長でシブサワ・アンド・カンパニー代表取締役の渋澤健氏、ウーバー・ジャパン執行役員社長の郄橋正巳氏を迎え、起業や経営、成功の秘訣などをテーマにしたトークセッションを行った(モデレーター:弊誌副編集長・谷本有香)。

谷本有香(以下、谷本):映画をご覧になって、ご感想はいかがでしたか?

渋澤健(以下、渋澤):一言ではとても言い切れない、複雑な気持ちですね。この作品は2回観ましたが、1回目と2回目とでは少し印象が違いました。最初は、レイ・クロックは完全な悪者だと感じました。マクドナルド兄弟が本当のファウンダーであり、レイ・クロックは彼らからマクドナルドを奪ってしまったヤツだと。

しかし、2回目にはちょっと違う印象を持ちました。彼は52歳でマクドナルドを「起業」したということになっていますが、その前は何度も失敗していました。それでも諦めずにチャレンジを繰り返したおかげで大成功を手にします。私自身30代まではサラリーマンをしていて、2001年に40歳で起業、その後2008年に第二の起業をしているため、彼の姿に励まされましたね。

郄橋正巳(以下、郄橋):本作を観る前は、レイ・クロックに対して「苦労人で成功を収めた人」というイメージしかありませでした。しかし映画を通して、マクドナルド兄弟からアイデアを奪う形でビジネスを成長させた、成功への執念や執着の強さに唖然としてしまいました。

ただ、私も2回鑑賞したのですが、2回目には彼の繊細な部分も垣間見えた。例えば彼は、自分が裏切った後の兄弟のことを考えて、顔を曇らせたりしますよね。レイ・クロックは、初めから事業を奪うことを目論んでいたのではなく、事業を前に進めたいという原動力があまりにも強いばかりに、彼自身も予期せぬ方向で物事が進んでいってしまったのだろうと感じました。

谷本:思い描いたビジョンや、成し遂げたいゴールに到達するためには、レイ・クロックのように何かを、あるいは誰かを切ることが必要な場面もあるかと思います。彼のような経営者像、リーダー像というのはアリなのでしょうか。同じ経営者として、お二人はどのようにお考えになりますか?

渋澤:アリかナシかといえば、アリですね。間違いなく。ものすごい成長を遂げて、マクドナルドというブランドに経営モデルを提供しましたから。

マクドナルド兄弟によるハンバーガーショップの誕生までには、兄弟が考え出したビジョンと、失敗を重ねてたどり着いた成功モデルがあった。品質の管理や維持、創業理念などを含めて、兄弟にはそのモデルを忠実に進めていきたいという思いがあった。そのために彼らは自分の手の届く範囲内の規模でビジネスを続けていくことにこだわったんですね。

ところがレイ・クロックは、二人が具現化したビジネスモデルを見て、もっと拡大させるべきだと主張した。経営者の役目が成長、拡大させるということなのだとすれば、彼から学ぶことはたくさんあるでしょう。彼がマクドナルドを拡大させたおかげで、いろんな意味で幸せになった人がいますし。

レイ・クロックのように大きく成長させることがいいのか、マクドナルド兄弟のようにこじんまりとピュアにビジネスを続けていくのがいいのか。どちらが正しいか、間違っているかではなくて、「自分がどちらを選びたいか」という価値観の話になると思います。経営者としてはどちらもアリですし、両方から学べるところがあるはずです。