総務大臣政務官のとき、公用車に子どもを乗せて認証保育所「キッズスクウェア永田町」に送迎したことが「週刊新潮」に報じられ、賛否両論が沸き起こった自民党の金子恵美衆議院議員(39)。総務省の見解では公用車の運用ルールでは問題ないというが、「政治家は国民との信頼関係が要」として公用車での送迎をやめた。

 実は、自身の子どもも待機児童になったことがあるという。自らの経験も踏まえた上で、公用車での送迎問題と、国として待機児童・保育政策はどうあるべきかを聞いた。

「議員特権」ではありません


新潟4区選出、当選2回の金子議員 ©文藝春秋

――公用車での保育園への送迎をやめたということですが、なぜですか?

金子 今回の件では、保育園送迎だけでなく、公用車そのものの是非や同乗者の基準など、議論が多岐にわたり、整理が必要だと考えました。総務省の運用ルールでは「保育園が公務を行う場所もしくは経路上にある」ことから、保育園送迎は問題ないとされています。

 しかし、公用車での保育園送迎が「常態化」していると、事実でないことを報道されたり、送迎先の保育園が私の職場である議員会館内にあることが伝わっていないなどの問題もありました。実際には、送迎と公務の時間が重なった場合の数回しか公用車を使用していません。大半は、夫(宮崎謙介元衆議院議員)が車で送るか、私や母がベビーカーを押して歩く形で送迎していました。

 もちろん、保育園送迎のためだけに公用車を呼びだしたこともありませんが、政治家のけじめとして一歩引くことを選びました。今後、子育てをしている方が政務官になったとき、公用車利用についてルールだけでなく、道義上、社会通念上も問題視されないための環境整備をしていきたいと思います。

――議員会館に保育園があるんですね。

金子 2010年9月、第二議員会館の地下3階に、東京都の認証保育所として設置されました。議員会館にあることから「議員の特権では」とも言われましたが、そんなことはありません。議員だけでなく、秘書やマスコミ関係者など、永田町近辺で仕事をしている人はオープンに利用できます。私も待機を経験し、空きが出てからようやく入所が決まったのです。

――与野党の議員から様々な意見がありました。

金子 野田聖子総務大臣は議員としても、ママとしても先輩です。公用車の利用について問題視するよりも、「金子さんを子育て世代の代表として応援できる世の中であってほしい」と言ってくださったのは心強かったです。

 他党でいうと、民進党の蓮舫代表でしょうか。「公私混同の感覚が絶対的に欠如している」という指摘でしたが、実のところ、民進党を含め他党の議員も同様に使っています。事実を確認したほうがいいのでは?と思いました。

――公用車のルールを議論すべきでしょうか?

金子 総務省はじめ各省庁ではルールがあります。しかし、これまで小さな子どもの育児をしながら政府の要職に就いた方があまりいなかったのではないでしょうか。前例がないということも、この問題を難しくしました。正しい公用車使用について、試行錯誤を繰り返し、そのことで次の政務官であれ、副大臣であれ、大臣であれ、ルールにのっとって、堂々と後ろめたくなく、公用車を活用できる環境をつくりたいです。

 先日、インターネット上のchange.orgというサイトで「総務省は公用車で保育園の送迎ができるルールを作ってください」と署名活動が行われていることを知りました。野田総務大臣に提出するそうです。私自身も、この問題をこのまま終わらせてはいけないと思っています。

地方では、定員割れの保育園も

――鈴木貴子衆議院議員が妊娠しましたが、「公人としての自覚が足りない」と言われたそうです。

金子 切迫早産で入院というときに心ない中傷があるのは非常に残念です。憤りもあり、応援の気持ちを込めて、ブログで応援させていただきました。私自身も切迫早産・切迫流産の診断を受け、同じように中傷された経験があります。

 衆議院議員は国民の信託を得て、100%の仕事をしないといけない責任があります。しかし、子育ても介護も病気も経験しない人ばかりの国会で、国民の気持ちに寄り添った政策が作れるのでしょうか。むしろ、こうした経験を糧に活躍できるよう、代理人制度やICT活用など、議員の働き方改革を進めるべきと考えています。

 また、女性も男性も体の仕組みを理解しつつ、お互いの性差を考える機会が学校教育で十分にとられていません。それは大事な教育の一つです。考えることができれば、自身や相手に優しくできます。性暴力もマタニティハラスメントも少なくなるのではないでしょうか。


衆議院第二議員会館 ©文藝春秋

――ところで、待機児童の現状を認識していますか?

金子 待機児童問題は全国一律で同じことが起きているわけではありません。首都圏、東京の中でも、通勤の要所では待機児童が増えます。都市部では、保育園を開設できる場所が不足して頭を悩ませています。一方、地方では、保育園の定員割れが起きています。存続が危ういのです。保育園を失うと、その地域では保育できないことになり、余計に子どもが減ってしまいます。さらに小学校までなくなれば、働く世代の人たちが流出しますし、文化も失います。閉園の危機は現実問題としてあります。子どもたちの取り合いも起きています。

――受け皿を作っているのに、なぜ待機児童が減らないのでしょうか?

金子 潜在的に子どもを預けたいと思っている人がいます。就業意欲がある女性が働くことで、それにともなって保育需要が増えているのでしょう。

――預けられない当事者からみれば残念な状況ですが……。

金子 いまも多様な保育サービスがあります。ただ、年齢ごとに差があります。私の子どもは1歳半ですが、この時期の子どもを預けたいという人は多いでしょう。

 しかし、0歳や3歳以上とも違いがあります。それぞれの年齢に合った、きめ細かな保育サービスを増やす必要があります。例えば、送迎・託児を顔見知り同士で頼り合う「子育てシェア」のAsMamaという新しいサービスがあります。

 預けられない方が子育てに縛られていると感じたり、子どもを預けることができないために仕事を諦めているのならば、子どもにかける予算を増やしていかないといけません。現実的には予算の問題がありますが、声をあげ続けないといけません。

――財源はどのように確保すべきでしょうか。

金子 「こども保険」というアイディアもあがっています。社会保障はこれまで基礎年金、高齢者医療、介護の3経費でした。子ども・子育て支援新制度によって、少子化対策も含む4経費になりました。これは歴史的な第一歩でした。

 また、消費増税という約束もあります。政治の中で意識的に子どもにお金をかけるという考えに変えていかなければなりません。「福祉ばかり充実させていくのか!」と批判されることもあります。しかし、子どもは将来、日本を支える人材、財産です。子どもへの投資は経済戦略であり、教育でもあるのです。決して後ろ向きな支出ではありません。

男性にも育児に参加してほしい

――保育士の給料が低いと言われています。どう解消しますか?

金子 責任とリスクを考えると、保育士の仕事には見合わない報酬だとよく言われています。そのため、離職率が高いのでしょう。そこで2017年度から、国では報酬を加算しました。それは政治的な支援策です。しかし、これだけで現場はおさまると考えていません。もっと重要なこととして、保育士のワークライフバランスが取れていません。子どもが好きなのに、自分の子を面倒を見る時間はないというのは本末転倒です。また、保育士のキャリア設計も明確ではありません。一保育士としての人生を考えた場合、どのようなスキルをつければ、どのようなキャリアを目指せるのかなどを考えないといけません。


©文藝春秋

――母親になって政治の姿勢が変わりましたか?

金子 もちろん、女性政策や子育て支援は市議会議員の時から取り組んできました。しかし、一人の人間としても、議員としても大きく見方は変わりました。子どもと1日向き合うことは「大変な社会的労働」です。自分の思うようになりません。例えば、子どものうんちをするタイミングとか、出かけようと思ったら泣き出すとか、必死で働いているお父さん、お母さんがいることを実感しました。それでも働きたいという人がいる。就労意欲がある女性が諦めないように、希望を叶えてあげたい。そう今まで以上に思うようになりました。

 男性の育児休業の取得率が上がっていません。私の夫もお騒がせしましたが、経験してみないとわからないことがあります。男性にも育児に参加してほしいです。育児休業を取得する男性が増えるよう、イクメン議連には頑張ってほしい。

 地元の祭でベビーカーを押していますと、若い現役の子育て世代の人たちに声をかけられることが多くなりました。「子育て支援をお願いします」と言われます。「あなたも同じ立場ならわかるでしょ?」という意味だと思います。そういう期待をいただいているのであれば、本当にそこをなんとかしないと、日本自体がもたなくなります。夫婦の関係にも関わります。ライフワークにしていきたい。

 病児保育の充実にも取り組みたいと思います。私も毎朝、息子の熱を測ります。37.5度を超えてしまうと、本人がいかに元気でも保育園には預けられません。ファミリー・サポートや自治体の独自のサービスがありますが、保育園に行くまでのところで課題が生じると、その日の予定が狂ってしまいます。病児保育が要望される理由がよくわかります。必要性が肌感覚としてわかってきました。

――今回の内閣改造で役職を離れましたが、今後の活動は?

金子 親の負担軽減として、乳児用液体ミルクを導入する勉強会を開いてきました。熊本地震の避難所支援で必要性が叫ばれました。最初に注目したのは小池百合子都知事(当時は衆議院議員)です。欧米にはすでにありますが、日本では認可されていません。国内製造を目指したいと思いますが、まだまだハードルがあります。そのため、まずは災害時の先行導入を考えたい。ストレスで母乳が出ない人や父親が活用したり、衛生環境が整っていなくてもミルクを用意できるからです。

 また、保育事故に関する調査・検証ができるようにしたい。チャイルド・デス・レビュー(CDR)は欧米では法制化されています。子どもの危険を少なくしたいです。最終目標は議員立法です。まずは党内で声をかけて、超党派の議連も目指したいです。

(渋井 哲也)