世界最大のネット通販のAmazonには、Amazonからではなく出品者から商品を購入できる「Amazonマーケットプレイス」が用意されています。このマーケットプレイスでAmazonのシステムを悪用した詐欺に遭った被害者が、Amazonに救済を求めた一連の経緯を公開しています。この詐欺は、Amazon利用者としては防ぐことが極めて難しい巧妙な手口となっています。

I Fell Victim to a $1,500 Used Camera Lens Scam on Amazon

https://petapixel.com/2017/08/11/fell-victim-1500-used-camera-lens-scam-amazon/

アメリカ・イリノイ州ギルバートに住む写真家のジエモウィット・ピアジキーさんは、これまでに中古のレンズをいくつも購入してきましたが、特段、問題になることはありませんでした。しかし、最近、Amazonで1500ドル(約17万円)の中古レンズを購入したところ、レンズを受け取ることはできずAmazonから返金対応を拒否されるという事態に陥っています。

事の経緯を時系列に並べると以下の通りになります。

2017年6月29日にピアジキーさんはAmazonマーケットプレイスで「Lana's Store」という出品者からキヤノンの70-200mm f/2.8IIレンズを購入しました。このレンズの市場価格は1500ドルから1600ドルであり、良品の中古品ということから1490ドルという価格は相応だったようです。なお、Lana's Storeは良いという評価を1つ得ているだけで、他に商品を売っておらず、単なる中古品を売る人だろうとピアジキーさんは考えていたそうです。



2017年7月8日にAmazonサイト内の注文ステータスの更新があり、「出荷された」という表記に変わりました。ステータス内にはUSPSの追跡番号も付加されていたとのこと。出荷されてから商品が到着するまでに時間がかかることはAmazonマーケットプレイスでの取引ではよくあることなので、ピアジキーさんは商品の到着を気長に待っていたそうです。しかし、ステータスが「配達完了」に変わると、レンズを待ち焦がれていたピアジキーさんの幸せは瞬時に消え失せたとのこと。



ステータス情報によると、商品は玄関まで届けられ、ピアジキーさんではない「名前がRから始まる誰か」が受け取りのサインをしたことがわかりました。そこで、ピアジキーさんは近隣の人に荷物を受け取った人がいないか確認しましたが、誰もが荷物は知らないという回答だったそうです。

USPSに配達証明の確認を行ったピアジキーさんは、サインの写しをメールで送ってもらえたとのこと。そこには、例のRから始まる姓で、Lから始まる名を持つ人物のサインが書かれてありました。USPSは受け取りの際に住所のファーストライン(地番を含む最終部分)を書いてもらうことになっているので確認すると、ピアジキーさんとは違う住所が書かれてありました。



ピアジキーさんは「間違った住所に商品を送ったのではないか?」と出品者にメッセージを送りましたが返事はなかったそうです。そこで、隣町にある商品が届いた住所にピアジキーさんは直接向かうことにしました。

該当住所の住人のL夫人はとても親切な応対をしてくれ、ピアジキーさんに対して受け取った商品について教えてくれました。以下の写真はL夫人が受け取った箱の写真。配達番号が「2305 0270 0000 4580 XXXX」で、ピアジキーさんが受け取ったUSPSの番号と一致します。



宛名は「Mr.Sxxxxx or Current Resident(Sさんもしくは現在の住人)」という表示だったとのこと。このSさんとは2017年5月に亡くなったL夫人の父親だそうです。つまり、L夫人は亡くなった父宛に届いた物だと考えて商品を受け取り、自身の名前である「Rから始まる姓でLから始まる名」のサインをしたというわけです。なお、ピアジキーさんが確認したところ、L夫人が受け取った商品は2枚のベーキングマット、梱包物の重量は8オンス(約230グラム)、送信者の住所はミネソタ州のアパートだったことがわかりました。



その後、ピアジキーさんが確認したところ、「ギルバート イリノイ」というフレーズと共に、ごく一般的な「亡くなったSさんの氏」をGoogleで検索すると、Sさんの死亡記事がネット上で閲覧可能な状態であることがわかったそうです。

ピアジキーさんがAmazonのカスタマーサービスに売り手が応答しないこと、商品が自分の住所に届けられていないことを伝えて、返金対応をしてもらうべくA-to-z保証(Amazonマーケットプレイス保証)の申請をしました。その回答は、「追跡情報によると、誰かがあなたの商品を受け取り、あなたの住所でサインしています。よって、番号111-5490204-451xxxxのクレームは閉鎖します。あなたの住所に商品が到着していることから、A-to-z保証の対象外です」だったそうです。



この回答に異議を唱えたピアジキーさんは、あらためて自身が署名をしていないこと、自分の住所には届いていないことを説明しましたが、クレームは閉鎖されたままだったとのこと。Amazonが追跡番号とイリノイ州ギルバートに届けられたことだけをチェックして、誰がサインしたかなどをチェックしていないのは明らかだとピアジキーさんはAmazonのカスタマーサービスの対応を批判しています。



ピアジキーさんは2017年7月27日にUSPSに配達証明を求めるようにAmazonのカスタマーサービスに依頼しましたが、断られたそうです。



その後も売り主のアドレスや以下の画像のようなUSPS配達証明などを添えて、Amazonに直接メールを送ってピアジキーさんは抵抗をしたとのこと。住所が違うことや自分のサインではないことに加えて、商品であるカメラのカタログスペックが3.2ポンド(約2キログラム)にもかかわらず、配達記録には梱包物の重量が8オンス(約230グラム)しかなかったことなどの事情もあらためて伝えたそうです。さらに、最後の望みを託したメールでは、Amazonのジェフ・ベゾスCEOに届くことを願って「jeff@amazon.com」をアドレスに追加したそうです。



しかし、最終的に届いたのは、「すべての事情を考慮した上で、A-to-z保証の対象外」という結論でした。



クレジットカード決済をしていたピアジキーさんは、カード会社に異議申し立てをしていますが、この交渉が不調に終われば、残されている手段はAmazonを相手取った少額訴訟しかないそうです。