定時帰りの、腰掛けOLたち。

楽な仕事に給湯室での井戸端会議、充実したアフターファイブ。

”安定”という鎧を手に入れた彼女たちは保守的で、誰かが幸せにしてくれるのを待っている。

丸の内の大手損保会社に勤める愛華(26)も、その一人。典型的な腰掛けOLである彼女には、実はこんなあだ名がある。

“にゃんにゃんOL”、と。

元OLのアリサ(29)から檄を飛ばされ、年収1,000万の人に見向きもされない現実を見た愛華。

それを見ていたアリサは、今週のにゃんにゃん観察日記に何を書く...?




30歳までに結婚しないと行き遅れという恐怖


「だから、何度も言ったでしょ?ある程度のレベルの人のお嫁さんになりたいならば、自分の市場価値をあげなさい、と。」

さっきから、目の前に座って呑気にミルクティーを飲んでいる愛華たちに何度も諭してみるものの、何を言ってもふにゃふにゃしている。

先日の食事会の反省会をしたいと言われ、愛華と、愛華の同僚である結衣から呼び出された。

何の反省をするのかと思いきや、“アリサさんのようにキラキラしたい”、などと言う物凄く抽象的な相談で、思わず面喰らう。

「えぇ〜。どうやってですかぁ?毎日女磨きもしてるし、まだ26歳だし、十分だと思うんですけど。」

大げさに驚く愛華に対し、再び、大きなため息が出てしまった。

にゃんにゃんOLの唯一の武器。
それは年齢なのだ。

最も浪費が早く、人類みな平等に失っていく若さ。それが最大の武器ならば、愛華の売れる時期は、後3年しかない計算となる。

「若さで売れる時期は短いのに。30歳過ぎたら、どうやって生きていくの?」

年齢に対する過信と、そこに価値を重んじる比重の大きさ。だからにゃんにゃんOL達は、30歳までになんとか結婚しようと必死なのだ。

「でも愛華ちゃんは、素朴な感じがあるし、ちょっと小柄なところもチャーミングだから大丈夫だよ 。」

おっと...出ました!腹黒系にゃんにゃんOLの真骨頂。

女友達を褒める振りして、さりげなくディスるその性格の悪さ。結衣の発言に、思わず一人で笑ってしまった。


にゃんにゃんOLにもタイプあり!おさえておきたい3パターンとは


これさえ網羅しておけば間違い無し!典型的な3パターンとは?


にゃんにゃんOLにも、数パターンある。

まずは典型的な、愛華のようなタイプ。可愛いし愛されキャラなのだが、どこか主体性に欠ける。腰掛けOLでいることに焦りを覚えながらも、実際には何も行動しない。

これが最もマス(多勢)であろう。

続いては、結衣のような、一見おっとりして見えるが実は最も腹黒く、他人への執着心、顕示欲が異常に強い腹黒系。

これは通称ジョブチャレ(地方で就職し、3年間だけ東京勤務をする制度)組に多く見受けられるが、中途半端な東京出身者もいる。

そして最後に、腰掛けOLでいることに疑問を持ち始め、自分なりにキャリアを形成し、道を開こうとしている進化系だ。

結衣は典型的な、腹黒系だろう。

「ほら、私は一応彼氏もいるし、幸せだからいいんだけど...早く愛華が幸せになってほしいな。」

今の結衣のニャン語を翻訳すると、

「私は既に(社内恋愛でしかも既婚者だけど)彼氏もいるし、実家暮らしで生活も困ってないから。彼氏もいないなんて、可哀想。(せいぜい)頑張って良い人でも見つけたら?」

となる。そんな結衣に対して、何の疑問も持たずにニコニコしている愛華。

「結衣ちゃん、ありがとう。私、頑張るね。」
「愛華ちゃんなら、絶対大丈夫だよ。」

-この結衣って子、侮れないわね。

二人の綿菓子並みにふわふわとした会話を聞き、静かに観察を進めながら、『エンポリオ アルマーニ カフェ青山』から街ゆく人の流れを眺めていた。




「アリサさんは、和樹さんのことどう思いますかぁ?」

突如、話題は愛華の気になる商社マンの話になった。

慶應卒のイケメン商社マン、和樹。前回の食事会で爽やかな好青年だという好感触を持った。

「いい人だよね。愛華、デートとかしないの?」

「LINEはしてますよ。でもデートは、向こうが誘ってきてくれるのを、待っているんです♡」

ニコッと、あまりにも可愛い顔で微笑むので、それ以上何も言えなくなる。

「和樹さん、今は彼女がいなくて、募集中らしいんです。だから、可能性はあるかなぁって。デートに誘われたら、その前にエステ行って、ネイルもお直しにいかないとだから、早めに日程が欲しいのになぁ。」

咄嗟に、机の上に置いてあった携帯電話を手で覆ってしまった。

何故なら、和樹から何度となく食事に誘われていたから。


年齢からの呪縛に囚われると失う、大事なもの


女性のステージが変われば、寄ってくる男性のレベルも変化する


人とは不思議な生き物で、OLをしていた時の自分ならば、喜んでデートに行っただろう。商社マンの妻というタイトルに憧れ、その地位を願っていた。

しかし、自分で会社をするようになり、ある程度の稼ぎもできた今、男性を全く会社名などで見なくなった。

そのかわりに見るようになったのは、社会を生き抜くセンスと諸々の運用能力。そして何があっても一緒にいたいと思えるような頼れる愛。

「アリサさんは、結婚願望とかないんですか?」

結衣が、“同じ女性とは思えない”と言わんばかりの顔で見つめてくる。正直、結婚願望は特にない。

良い人がいれば結婚すればいいし、いなければ別に焦る必要もないと思っている。

「アリサさんは、いつも強くて、カッコよくて。憧れちゃうなぁ。」

大きな潤んだ瞳で、心底思っているかのような声を出す愛華。商社マンは、愛華のような純粋でおっとりした子を嫁にもらうべきだ。

でも、彼らは彼らで、なぜか無駄に理想が高く、要求が多い。

「世の中の、需要と供給のバランスって合わないものなのかなぁ。」

呟いた言葉は、自分でもびっくりするくらい大きな声になっていた。




お会計を済ませ、外に出ると強い夏の日差しが容赦なく降り注ぐ。少し外で立ち話をしただけでも、べっとりと汗をかくほど暑かった。

「アリサさん、今日はありがとうございました。」

日傘をさし、にこやかに去ろうとする愛華。そんな帰り際に、結衣が放った一言が耳に突き刺さった。

「でも、私はやっぱり結婚して幸せになりたいな。女性は28歳過ぎた途端に市場価値も落ちるし、その年齢になっても独り身でいられるのは、アリサさんだからですよね。さすがです♡」

-さ、さすがです?!

全く褒められていないことくらい分かる。が、明らかに結衣の考えは間違っている。

たしかに肌のハリツヤは日々失うかもしれないが、そんな市場価値、誰が決めたのだろう?

それに年齢ばかりに拘る男性は、総じて歳を取ったら若い女性に走る。

「結衣ちゃん...あなた、にゃんにゃんの中で最下位ランクね。」

呆然とする結衣を横目に、愛華にまたね、とだけ言い残し、スタスタと表参道の交差点へと向かった。

年齢に対するこだわりは、ある意味呪縛のようなもの。それに囚われている彼女が、とても可哀想に見えた。

世の中には、色々なタイプの女性がいる。
一体、幸せになるのは誰なのだろうか?

表参道の交差点から空を見上げると、真夏の太陽が輝いていた。

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こんなはずじゃなかったのに。夢見る花嫁からバリキャリへ大変身?