絶対に落とせなかった広島戦。試合前のミーティングではあえて危機感を煽ることなく、伸び伸びとプレーしてもらえるように努めた。(C) SOCCER DIGEST

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第21回。テーマは「危機感」だ。勝利が遠のいていた状況で、選手たちにはどのように接していたのか。今節を迎えるまでの心境や試合内容とともに話してもらった。
 
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[J1リーグ22節]仙台 1-0 広島/8月15日(日)/ユアスタ
 
 6月4日の14節・甲府戦(3-0)以来の勝利をホームで挙げられた。広島戦にむけては、前節までの結果を受けて自分の中では大きな危機感があり、それをどうやって選手のモチベーションに変えられるかを考えていた。
 
 前回のコラムにも書いたが、9日に行なわれた21節・磐田戦の翌日のトレーニングでは、選手たちの逞しさを感じられた。きっと「危機感」と「新加入選手のフレッシュさ」が相まって生まれたエネルギーだったのだろう。
 
 そして広島戦の前日の紅白戦は、緊張感の漂う質の高いゲームとなった。スタメンを入れ替えることによる競争意識の高まりがあったし、全員が虎視眈々と先発の座を狙っている雰囲気も伝わってきた。
 
 選手たちにも、「ホームでの広島戦は絶対に落とせない」という気持ちがあったはずだ。だからこそ、試合前のミーティングではあえて危機感を煽ることなく、伸び伸びとプレーしてもらえるように努めた。
 
 試合前のミーティングで選手たちには「攻守のバランスを取るなかで、守備の意識が高まっているのは良いことだ。でも、もう一回自分たちのやりたいこと、キャンプから目指してやってきたことに思い切りチャレンジしよう」と話してピッチに送り出した。
 
 パトリックやアンデルソン・ロペスら、相手の前線の選手たちの個の力は強烈だった。それでも、前半の立ち上がりやゲーム最終盤に押し込まれはしたが、無失点で乗り切れたことは自信を持っていいと思っている。
 
 初組み合わせの3バック(右から椎橋慧也、大岩一貴、増嶋竜也)の出来も良かった。普段であれば一貴を右ストッパーに配置しているのだが、今節はヒラ(平岡康裕)が出場停止。「対パトリック」が重要になるゲームで、「一貴を真ん中で」という案は即決だった。
 一貴を真ん中に置く布陣はルヴァンカップで少し試した程度なので、やり慣れていない部分もあっただろう。それでも、パトリックをほぼパーフェクトに抑えてくれた。若手の椎橋のカバーも完璧にこなす、まさに期待通りの働きと言っていい。
 
 また、その椎橋も好パフォーマンスだった。攻守でボールに対するポジショニング修正におけるマメさは、“らしさ”が存分に発揮されていた。走行距離は10.209kmで、3バックのなかではトップ。それは、数メートルの動き直しをサボらなかったからこその数字だろう。
 
 マス(増嶋)も強みであるビルドアップとハードな守備で貢献してくれた。広島に前からプレスを掛けられても慌てず、冷静にボールを回して回避することができていた。
 
 サポーターにも感謝している。この試合はアップの時から熱量が凄かった。普段とは違う出迎え方をしてくれて、「今日こそは」という強い想いを感じられた。試合後も同様だ。勝利後にのみ歌われる『AURA』をスマートフォンのライトをかざしながら歌ってくれていた。
 
 暑くなる前から「夏の夜空に合わせて」という計画があったのかもしれない。だが、なかなかそれを実現をさせてあげられず、8月中旬になってしまった。ようやく笑顔を届けられて「お待たせしてすみません」という気持ちと、「やはり勝つって素晴らしい」と改めて思った。
 
 ここから順位を上げていくために、降格圏に沈む広島をしっかりと叩けたのは大きい。下を見れば16位の大宮とは勝点7差で、決して油断はできない。
 
 しかし、上を見れば同じ7差で8位に浦和がいる。まだまだ上位に進出できると信じているし、そのための意識付けやトレーニングをこれからも続けていきたい。
 
構成●古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は8月19日に行なわれる22節・新潟戦の予定。お楽しみに!