ドイツのカッセルに出現した「パルテノン神殿」は、世界各国で出版禁止になった本で作られています。その数、なんと10万冊!

実はこのパルテノン神殿、以前アルゼンチンに建てられていたもの。では、なぜアルゼンチンとドイツなのか。ふたつの場所とこの作品に込められた思いには、ある密接な関係がありました。

「民主主義と思想の自由」
を表現したアート

Photo by ©Roman_Maerz

紀元前に世界初の民主主義が誕生した地、ギリシャ。そこに建てられたパルテノン神殿は、まさに民主主義と思想の自由のシンボルでした。

そのパルテノン神殿を10万冊の本で建てたのは、アルゼンチンのアーティストMarta Minujínさん。アルゼンチンは以前、軍事政権に独裁支配されていました。その当時、民主主義はおろか思想の自由もなく、軍が禁止した本は全て焼かれてしまいました。Martaさんはその時の自身の体験から、

「『民主主義と思想の自由』の大切さを、一般の人が参加できるモニュメントで表現しよう」

と心に誓いました。こうして作られたのが、この巨大なアート作品なのです。

アルゼンチンから
なぜドイツに?

Photo by ©Roman_Maerz

最初の作品は、軍事政権崩壊直後の1983年にアルゼンチンに建てられています。当時はまだ軍事政権のなごりがあったにも関わらず、禁止されていた本のみを使ってモニュメントを立てるという大胆な行動でした。

そして、今回はdocumenta 14というフェスティバルの一部として、ドイツの都市・カッセルの広場に建てられることになりました。実はこの場所、ナチス政権時代に、当時の禁止本が焼かれた広場なのです。

ある国では一般的でも
違う国では禁止本に

Photo by ©Roman_Maerz

この作品は、一般人から禁止本の寄付を募り、展示終了後は本を自由に持ち帰ることができるようになっています。後でみんなが持ち帰りやすいよう、展示中は本をプラスチックのシートで保護。本を寄付したり持ち帰ったりすることで、この作品のスピリットを共有できるというわけです。

Photo by ©Roman_Maerz

今回の作品のために世界中から寄付された本は、10万冊。禁止の理由も時代も様々です。そしてそれは遠い昔の話とは限りません。中には、今でも出版が禁止されている本だって混ざっています。

民主主義と思想の自由とは何か。改めて考えさせられる作品です。

Top Photo by ©Roman März
Licensed material used with permission by documenta 14