暑さ真っ盛りの中で迎えるのが「お盆」です。地域によって日程の違いはあるものの8月13日が盆入り、16日が盆明けという地域が多いのではないでしょうか? そんなお盆のときによく見かける、きゅうりやなすの飾りもの。あれは一体何なのか……と思っている人もいるのでは?
野菜にわりばしを刺して、まるで動物のような形をしたものですがどうして、このような物がつくられるようになったのでしょうか。お盆に欠かせない「精霊馬」とは……。

「精霊馬」といえば、きゅうりとなすですね


精霊馬(しょうりょううま)って何?

お盆に里帰りしたときに、なすやきゅうりに割りばしが刺さった不思議な形の飾り物……。みなさん一度は目にしたことが見たことがあるのではないでしょうか? 先祖を迎え入れる大事な行事であるのにもかかわらず、少し愉快な形ではありますが……。このお供え物は「精霊馬(しょうりょううま)」と呼ばれるもの。実はこの不思議な形の精霊馬、ちゃんと意味があったのです。
お盆は、亡くなった先祖や家族を一定の期間だけ、この世に連れ戻すというもの。限られた期間ですから、できるだけご先祖様には長くこの世にいてほしいと思うのが親族の願いでしょう。
先祖をこの世に迎える「迎え盆」の際には早く呼び寄せるため、足の速い「馬」に見立てた「きゅうり」を、あの世にお見送りする「送り盆」の際にはゆっくり帰ってもらうため、足の遅い「牛」に見立てた「なす」を飾るということなのです。地域によって異なる場合もあるようですが、不思議な形の精霊馬にはしっかり意味があったのですね。

お盆の仏壇には精霊馬とお供え物

お盆の仏壇には精霊馬とお供え物


なぜ、「きゅうり」と「なす」なのか?

馬のようにすらりとした形の野菜も、牛のようにどっしりとした形の野菜なら、他にもあるのに……と思った方もいるのでは? きゅうりもなすもご存じのとおり、夏の野菜ですよね。しかも、これらの野菜は全国各区で収穫することができる定番野菜です。
旬のおいいしいものをお供えするという意味で、もともとはきゅうり、なすがそのままお供えされていたともいいます。一体いつから、精霊馬の形としてお供えされていたかは不明。にもかかわらず、これだけ全国区に広まっているということは、きゅうりとなすがどこでも食べられる野菜だからということも理由のひとつになっているのでしょう。
ちなみに、沖縄では「さとうきび」がお盆のお供え物として出てくるのだとか。こちらは、送り盆の際、先祖が帰るときに使う「杖」と見立てているようです。さらに工夫をこらしたものだと、とうもろこしやゴーヤなんてものもあるとか……。いずれにしても、旬野菜というのがポイントのようですね。

沖縄ではさとうきびを飾ることも

沖縄ではさとうきびを飾ることも


お盆が過ぎたから食べちゃおうは、NGです!

お盆が過ぎたら、精霊馬として使ったなすやきゅうりはどのようにすればよいのでしょうか? もったいないから食べてもいいんじゃないか……と考える人もいるかもしれませんが、それはNGです! ご先祖様が乗ったものですし、ふだんのお供え物とも少し意味合いが違います。もったいないといっても、食べるのはよろしくないとされています。
ひと昔前であれば、燃やす、川に流すというのがよしとされていましたが、今の時代なかなか庭で燃やすなんてこともできないでしょう。ですが、そのまま捨てるのも縁起が悪いもの。精霊馬として使った野菜は半紙などにくるんで、塩で清めてから捨てるのがよいといわれています。
―― 一見、こっけいにも見えるなすときゅうりでできた精霊馬。ですが、馬や牛に見立てたその形はご先祖様を思う親族の優しさの表れといえますね。帰郷された際に精霊馬を見かけたら、先祖や亡くなった家族に思いを馳せてみてくださいね。