釣りエサだけではもったいない

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ヌメヌメして食べる気にもならないミミズに似た生き物。釣りエサに使う以外は親しみを感じなかったゴカイを、私たちは「誤解」していたようだ。

フランスの研究チームがゴカイの血液には類まれな能力があることを発見した。活用すれば、人間の血液の代用物として人命を救ったり、移植手術に役立ったりする可能性が出てきた。

すべての血液型に適合、アレルギーもなし

AFP通信の「ゴカイがヒトの代替血液に貢献の可能性」(2017年8月7日付)によると、この研究を行なっているのはフランス西部ブルターニュで養魚場を経営している生物学者グレゴリー・レイモン氏。レイモン氏はAFP通信の取材に対し、こう語っている。

「ゴカイの血液中のヘモグロビンは、ヒトの血液の40倍以上の酸素を肺から各組織に運ぶことができる。また、すべての血液型に適合できるという利点もある。なぜなら、ゴカイのヘモグロビンは血液中に溶けて存在し、ヒトのように赤血球に含まれていないからだ。だから、血液型は問題にならないし、アレルギー反応も起こらない」

いいこと尽くめなのだ。レイモン氏はバイオ企業ヘマリナと提携、養魚場で年間130万匹のゴカイを生産している。2015年にゴカイの代用血液を使った臨床試験を開始、人間の腎移植10例に使われた。現在、フランス全土で60人の患者がこの臨床試験に参加している。ゴカイのヘモグロビン・パワーの秘密は、過酷な環境でも生き延びる生命力の強さによる。波打ち際に生息、砂の中に潜っているが、干潮で水から出ても8時間以上も生き延びる。ヘモグロビンにたっぷり酸素を蓄えているからだ。

この生命力の強さに注目し、日本の理化学研究所も2013年5月8日、「ゴカイが持つ無限の再生能力の仕組みを解明」と題する研究を発表した。それによると、ゴカイは胴を切断されても新しい体節を再生することができる。いくら切られても、切られた断面から増殖のシグナルが出て、細胞が列をなして順序よく追加されていく。そして細胞の列が5列になると新しい体節になる。こうして体節を事実上無限につけ加えることができる。この「規則正しい増殖のシグナル」の仕組みが解明できれば、人間の再生医学への応用が期待できる。

実は「国際ゴカイの日」もあり、尊敬されていた!

ゴカイの仲間は全世界に約1万種もいる。長さ数ミリから最大のものは3メートルにも達する。その巨大ゴカイ「オニイソメ」は海底の砂の中に潜み、近づく獲物は自分より大きい魚も丸飲みにする。2015年7月7日付「ナショナル・ジオグラフィック日本版」によると、世界中のゴカイの研究者が一堂に集まり、2015年から「7月1日」を「国際ゴカイの日」にすることを決めた。研究者は、英ロンドン自然史博物館、米スミソニアン自然史博物館などから参加した錚々たる顔ぶれだ。スミソニアン自然史博物館のカレン・オズボーン博士は、同誌の取材に対しこう語った。

「ゴカイのような素晴らしい生き物に、この日(=国際ゴカイの日)が来るのは時間の問題でした。ゴカイは食物連鎖の中で極めて重要な役割を担っています。ゴカイはあらゆるものに食べられますが、また、あらゆるものを食べているのです」

釣りエサだけにしておくのは、もったいないヤツなのだ。