NHKが「攻めまくっている」?(画像は番組公式サイトのスクリーンショット)

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「あれが本物の風刺だよなぁ...」「ほんとすごい民放じゃ無理だわ」「攻めまくってる」

こうした声がネット上で相次いで寄せられたのは、2017年8月14日にNHK総合で放送されたコント番組「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」。現代社会への痛烈な風刺ともとれるコントの内容に大きな反響が寄せられている。中でも、特に注目を集めたのは年金問題を扱った「未来戦士ハライゾン」だ。

高齢者支え、身動き取れないヒーロー

「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」は、お笑いコンビ・ウッチャンナンチャンの内村光良さん(53)が「座長」を務めるコント番組。17年3月のレギュラー放送終了後、不定期で特集番組が放送されている。

今回の放送で大きな注目を集めた話題になった「未来戦士ハライゾン」は、日本の未来からやってきた正義のヒーロー「未来戦士ハライゾン」が、ムロツヨシさん(41)演じるサラリーマンを「ぼったくり」から救うために登場するという設定だ。

俳優の中川大志さん(19)と女優の石橋杏奈さん(25)が演じる2人の戦士で構成されている「ハライゾン」だが、一般的な戦隊ヒーローとは様子が違う。というのも彼らは1枚の板を持ち上げており、板の上には3人の高齢者が乗っている。この高齢者について、悪人が「変なじいさんたち」と指摘すると「ハライゾン」は、

「この上に乗っていらっしゃるのは、日本のために尽くしてきた高齢者のみなさん」
 「あなたたちの時代は、2人の現役世代で1人の高齢者を支えているけど、私たちが住む未来は2人で3人の高齢者を支えているの!」

と現実の社会的背景に言及しながら説明する。確かに、彼らの姿は高齢化社会の進行に伴って年金制度を支える現役世代の人数が減っていくことを説明する際に用いられるイラストさながらだ。

続けて「ハライゾンが来たから、もう大丈夫!」と正義のヒーローらしく宣言するも、彼らは3人の高齢者を2人で支えているので、なかなか自由に身動きが取れない。悪人を退治するために1人がほんの少しの間、手を放すと足場がグラつき板の上に立つ高齢者から

「わしたち、3人支えてるの忘れんなって!怪我でもしたらどうすんだ!」
 「それが、日本の功労者に対する態度か!」

などと罵倒される始末。正義のために動きたいが高齢者は落とないというもどかしい状況で彼らは自由な身動きが取れず、結局、サラリーマンは金をぼったくられてしまうという、ふがいない結末を迎える。

サラリーマンを救えなかったことを責められるとハライゾンは「晩婚や少子化にちゃんと向き合ってこなかったから」と3人の高齢者を2人で支えることになった原因について鋭く指摘しつつ、

「僕らたぶん、年金もらえません」

と悲しそうに語る。最後は内村さん演じる高齢者が「払い損」と戦士の名前「ハライゾン」が掛かっていることを告げ、「俺たちはギリセーフ」とこぼして、コントは終了した。

「面白かったけど、笑えない...」?

現代の日本社会における重大な課題の1つである年金問題について、「ハライゾン(払い損)」というシャレを交え、コミカルかつシニカルに描いたこのコントには、放送中から、

「すごいなLIFE ハライゾン これこんな真正面から ほんとすごい民放じゃ無理だわかっこいい」
 「昨日のLife、未来戦士ハライゾンに感激した。あれが本物の風刺だよなぁ...」

といった称賛の声がネット上に相次いで寄せられているほか、

「ハライゾンは...よくNHKでこのネタやったなぁ...。」
 「未来戦士ハライゾンは強烈だったな笑 NHK視聴者層のニーズと正反対のネタだった」

NHKで取り扱ったことへの驚きの声も出た。

一方で、支えている多くの高齢者を落すまいと注意するあまり自由な動きができない若者や板の上から声を上げる高齢者が登場する痛烈な風刺には、

「ハライゾンは考えさせられる笑いだった」
 「ハライゾン面白かったけど、もうすぐ未来がああなると思うと、改めてゾットした...」
 「ハライゾンは...、面白いし、いいけど、笑いながら胸の奥に何か残る感じ。なんか、『ちゃんとしなきゃなー...』とか考えてしまった」

といった声も上がり、「ハライゾン」に若年世代や数十年後の自分を重ねると、純粋な気持ちで笑えなかったという視聴者も少なくなったようだ。