今回のビジネス女子マナーは、アパレル関連会社勤務の太田美保さん(仮名・27歳)からの相談です。

「去年のことですが、お盆休みのお土産に、地元の名産だという漬物を持ってきた人がいます。私は嫌いだし、ひとり暮らしなので、もらっても困ります。捨てるのはもったいないし、相手にも失礼だと思うし……と、なんだか気まずい思いをしました。こういう場合、断ってもいいのでしょうか。その場合、どういう風にお断りすれば角がたちませんか?」

毎年、夏休みの時期になると、悩み多き会社の方へのお土産問題。ビジネス女子マナーでは、毎年「会社へのお土産は買わなければいけないものではない。買わなくてもいい。買うなら2000円程度までの個装されたお菓子をひとつずつ配ればOK」を謳っていますが、なかなか浸透しませんね……。お漬物を配る方がいたときは、どうしたらいいのでしょう。鈴木真理子先生に聞いてみましょう。

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 せっかくのお土産。「それ嫌い。いらない」では角が立つ

実は私も漬物が苦手。ですから、相談者さんの気持ちがよくわかります(笑)。

嗜好は人それぞれです。自分が絶対においしい、オススメと思っていても、必ずしも贈った相手が喜ぶとは限りません。

とくに、味付けの濃いものや、珍しい調味料が使われているもの、また話題性のために突飛な発想でつくられているものなどは、好き嫌いが大きく分かれてしまいます。

でも、だからといって、せっかくお土産を選んでくれた相手に、直接「これ、私嫌いなの」とストレートに言っては角が立ちます。本当のことは、言いづらいものです。人間関係にヒビが入らないように、「とりあえず受け取る」という人が多いのが現状でしょう。

受け取るその場で和やかに「NO」の意思表示を

しかし、ノーと言わない限り、相手は喜んでくれていると勘違いし、繰り返し買ってくることになります。
この連鎖を断ち切るには、できるだけその場で意思表示すべきです。

「ありがとう」とまずお礼を言った上で、「これ、〇〇さんの実家の名産でしょ?」と質問を投げかけて、会話のキャッチボールを促します。

そして、「実家の父が好きだから送ろうかな」など、話を自分のやんわりと自分のほうへ。「実は私は漬物が苦手で……」と伝えるのは、最後です。このように、相手の好意を評価しながら会話を進めていけば、気を悪くすることはないでしょう。

相手に対して、攻撃的な気持ちはなく、ただ苦手なことを伝えたい。自分の思いを察してもらえるように会話を組み立てていくのも、ビジネスシーンでは必要です。

「人に聞く」という体裁で自分の気持ちを伝えるというのも手

「そんなふうに言えない」という人は、別の機会に話をもちかけてみてはいかがでしょう。

たとえばランチや飲み会の席で、みんなに「苦手なものは何?」と質問してみる。目の前に、そのお土産がなければ、お互いに言いやすいです。

「私はチーズが苦手」「ボクはトマト」「アルコールが少しでも入っているお菓子はパス」なんて言い合う流れに乗って、「私はお漬物」って言っちゃいましょう。

敏感な人なら、「実は苦手なのに、お土産を受け取ってくれたんだ」と気づいてくれますよね。

鈍感な人は、また同じように買ってくるかもしれません。でも、もし相手が鈍感な人だとしたら、こちらがヘンに神経質に気を遣わなくてもいいんだと、楽な気持ちでいてください。

鈍感な人は、人に対しても大らかです。「今回も、実家の父に送りますね」など、さりげなく自分は食べないことを伝えるのでもいいですし、たとえば、「私は食べられないから、他の人にあげて」と言っても、そのままの文面で、素直に受け取ってくれますよ。

自分が嫌いなものをいただいて困った経験があると、人へのお土産を買う時にも気を付けなくては、と思ってしまいますね。

私の場合は、相談者さんと同じお漬物ですが、先ほどの例で紹介したチーズ、トマト、アルコール入りお菓子は、私のまわりにいる人から聞いた「嫌いなもの」です。

こういったことは、忘れてしまいがちですが、贈り物をするときの役立つ資料になります。誰が何が苦手か、あるいは好きか、といったことを聞いたら、手帳などにメモしておくといいですよ。

悩んだり選んだりで時間けっこうかけているのに、みんなに喜んでもらえることが少ないお土産……。割に合わないよなぁ。



■賢人のまとめ
そのまま「ありがとう」と嬉しそうに受け取れば、相手は喜んでもらえると思います。この連鎖を断ち切るには、その場で「苦手」をそれとなく伝えること。「私は苦手なんだけど、実家の母は喜ぶと思う」など、言葉を選んで。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

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