長々とお付き合いいただいたこの旅行記も、いよいよ最終回。海辺を抜けたら山間部を走り、能登半島の北西部に位置する輪島市へ。言わずと知れた「輪島塗」の街です。

■輪島塗のふるさとにて

輪島市文化会館には、世界最長の漆芸パネル「潮の奏(うみのうた)」が展示されています。漆芸作家63人の手で完成されたというパネルには、潮騒の中を飛ぶアジサシの姿が描かれていました。

漆の艶、繊細な細工の魅力とともに、どこか海の荒々しさや自然の峻厳な面持ちを感じます。

輪島塗は元来、生活のうつわとして発展を遂げたものなのだそうです。厚い木地、地元の土を用いた頑丈な下地、何代と使い続けても美しさを保つ上塗り。比類ない堅牢性や使い勝手の良さが、日本を代表する漆芸のビッグブランドの背景をつくりました。

そして絢爛豪華な蒔絵を施された器や、時代を超える芸術作品の数々も、その遺伝子を受け継ぎながら飛躍を繰り返して生まれたと思うと、なんだかかっこいい!

そんなことを思いつつCX-5のことを考えてみると、その基盤にはSUVの原義的な使命がはっきりと投影されているように感じます。例えば力を感じさせる足回りや、たくましい顔つき。街乗りにもきちんとハマるスポーティーでスタイリッシュな雰囲気。

しかし、それらはただ「SUVっぽさ」の記号としてあるのではなく、全体の演出と呼応して、あらたに新鮮で独特な世界観を作るための要素になっているような気がします。

ちょっと我ながらわけわからないことを言っておりますが、様式を尊重し、また様式のみに固執せず飛躍する。そんなところが、輪島塗とCX-5の似ているところかな?などと感じました。

■個人的おすすめスポット!

輪島を出てからは、一路、金沢方面へと向かいました。こちらの絶景は「機具岩 (はたごいわ)」。機織りの神様の伝説が語られる、高さ16メートルの女岩と高さ12メートル男岩が向かいあう夫婦岩です。女岩の方がでかい……。「いいぞ、機具岩!」縦横ともにラージな女性である筆者オススメのスポットです。

もう一つ。これは正直ないしょにしておきたいおすすめなスポットにたまたま出会いました。それは「道の駅 赤神」の食堂。魚の定食がすごいです。美味しすぎるので詳しくは書きませんが、お近くに行かれる際はぜひ寄ってみてください。

■超爽快!千里浜

ちょっとドライブから話が逸れました。さて、さらに能登半島の西岸を南下すると、名高い「千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイ」が。日本で唯一、クルマで走れる全長約8kmの砂浜です。

砂が細かくよく締まっているのでオフロード感はほとんどなく、ただただ美しい砂浜を走っているという爽快でちょっと不思議な体験ができました。

ちなみに運転し心地は。筆者は運転が下手でインプレッションを書けるようなアレではないのですが、CX-5はとても運転しやすいと感じました。もちろんSUVらしく視界が広く、座ってみて頼もしい感じ。とはいえ全幅は1840mm、動きはスマートで、すいすい運転できる印象でした。

しかも。これが実は大きいのですが、私の乗ったクルマにはアクティブ・ドライビング・ディスプレイ(フロントガラスに速度やナビが映し出されるアレ)とか、レーンキープ・アシスト・システム(はみ出ないように、とか、車線の中央を走れるように、とか、ステアリング操作をアシストしてくれるアレ)がついていました。これがまた!大変助かりました。

時速やルートは視点を動かさず確認できるので、見るともなしに頭に入ってきます。ステアリングの修正も、クルマがすっと手を添えるようにさりげなくサポートしてくれるので、下手な私でもあまりガチャガチャしませんでした。高速道路では特に、ストレスや不安感が少ない気がします。

さて。筆者個人の話なのですが、安全に替えられるものなどない、それは重々わかっていても、最新のシステムによって従来的な運転の楽しさは多少減ったりするのかな?というイメージもありました。

しかしCX-5について言えば、そんなことはなかった。様々なおもてなしがありつつ、走ることの楽しさや気持ちよさの純粋な部分は残されているのだなと、ちょっと感動した次第です。

■最後はソフト!

さらに南下し、旅の終わりに立ち寄ったのは、はくいちカフェ。

他の工芸品の部品として供給するために作られていた地場産業の金箔を、金沢の伝統工芸として知らしめたブランド「箔一」が手がけるカフェです。こちらは「金箔のかがやきソフトクリーム」。

カフェの店員さんが、切紙に挟まれた金箔を大事にピラリと持ち上げて、ソフトクリームに貼り付けてくれます。

エアコンの風にも揺れ、ソフトクリームの微妙な凹凸を如実に浮き上がらせるその薄さたるや!あまりに薄くて食べてもよくわからない。でも気分はお大尽。加賀百万石の時代から受け継がれる技術の文化を、文字どおり味わえるすごいメニューです。

あとですね、特筆すべきことにソフト部分が大変美味しい! 必食です。

■CX-5の日本的な美意識とはなんだったのか

ソフトおいしかった…というわけのわからない感想で終わった旅。

しかし2日間を通して、日本の美しさとCX-5を様々な角度から楽しみました。

CX-5それ自体が日本的であるかどうかは、正直なところよくわかりません。例えばヨーロッパの街並みにも、オーストラリアの赤い大地でも、東南アジアの濃い緑にも、このクルマは無理なく合いそうな気もするからです。また「これって和風でしょ?」と表立ってアピールするような押し付けがましさも感じませんでした。

ただ、自然であったり、人の暮らしであったり、工芸品であったり。日本の風土が育んできた、感覚や価値観。削ぎ落とされて、それゆえに豊かであること。理に反しないことの強さ。美しい日本の風景の中でクルマを観察してみて、そういったことを感じました。

CX-5の中の「日本」は、ディテールとして反映されているのではなく、エネルギーのように、あるいは気配のように、全体を満たしているものなのかもしれませんね。

多層的な意味で、やっぱり日本のエッセンスを感じさせるクルマなのかなぁ……。オリジナルな日本が色濃く残る能登半島を走って考えたのは、そんなことでした。

(文:くぼきひろこ/写真:ダン・アオキ)

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