日立造船が開発した業務・産業用固体酸化物形燃料電池(写真: 日立造船の発表資料より)

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 日立造船は固形リチウムイオン電池を開発し、2020年までに販売を開始するようだ。Bloombergなどが報じている。これまでの液体電解質に変わって、固体の電解質を開発、独自の製品としている。トヨタの固体電池と比較するデータはまだないが、出力と耐久性、それに実用性では充電時間の劇的な改善が望まれている。各社の熾烈な開発競争が進んでいる。

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 半世紀ほど前、太平洋戦争後、日本の復興を支えてきた造船業が曲がり角に来た。韓国の台頭があったのだ。鉄鋼分野でも韓国材が台頭してきた。新日鉄の苦境だった。

 「構造不況業種」(石炭産業のように産業・経済の構造の中で縮小に追い込まれる業種)となった造船業では、業種・業態の変更を余儀なくされた。現在の半導体・液晶・家電のような状況だ。その中で日立造船は新規事業を求めて、巨体をくねらせていた。

 すべてを捉えられないが、コンピュータ・ソフトウエア開発産業が拡大する中、当然のように日立造船も手探りで進出していた。また現在主力のゴミ処理発電などのプラント製造、建設車両製造なども「陸機部門」と称して進出を図っていた。

 しかし造船業は「最も過酷な労働条件」と言われるように、橋梁建設などよりも労働環境は危険で過酷だったが、その溶接作業は船であることから、国家資格を持つ技術者に限られ、欠陥を出すことは許されない条件だった。大型タンカーを建造する時代、繁栄を極めた業種であったが、労働者は「炭鉱よりはまし」と言っていたのが現実だ。

 社長レースに破れた副社長が、新規事業会社に追いやられるシステムでは、対応するには困難だった。敗れ去って、隠居仕事で新規事業に取り組む構造は、どう見ても不合理であったが、その当時の日立造船は、まだ造船こそが主力事業と思い込んでおり、主流派の人材は造船部門に残りたがった。

 しかし、造船の製造と、建設車両の製造は、概念が違い過ぎた。「一品料理」と「量産品」との違いも受け入れがたい差であったようだ。買収した建設車両メーカーでは、コストカットだけが先行して、新規製品開発や、トヨタ生産方式などの取り入れに大きく後れ、現在IoTで先行するコマツ製作所などに、あがなう術はなかったようだ。また同じ日立グループの日立建機があったことから、日立造船の建設・産業車両進出は、量産技術の概念も理解できないまま霧散した。

 旧財閥系の企業だけあって、何とか業種転換に成功しつつ現在まで永らえてきたようだ。その努力は並大抵ではなかったであろうが、時間がかかり過ぎている。現在、日立造船の名前が残っていることは、むしろ幸福なことだ。三菱自動車のように三菱重工体質からの脱却に失敗する旧財閥系企業がある中で、今度は自動車産業に打って出られるチャンスを作り上げてきたのは称賛に値する。

 今度こそ「量産技術」の何たるかを良く学び、概念を取り違えないことだ。EVは産業構造に変革をもたらし、新規事業者だけでなく、古の企業にチャンスをもたらす素敵な革命である。かつての、社内の勢力争いに負けた副社長の隠居仕事ではなく、新進気鋭の社長が指揮を執ることが必要であろう。もう造船業は分離させたのであり、主力は交代した。もちろん業績順調な現在、抜かりはないであろう。