現在は流しのシステムエンジニアとして活躍するPBX氏

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一般の人々がファミコンで遊んでいた80年代、そしてケータイを初めて持った90年代。その裏では、海外のゲイチャンネルをぶっ潰したりするサイバーな遊戯に熱中する連中がいたのだった!

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■バチカンから北朝鮮まで国際電話かけホーダイ

今回、登場してもらったミスターPBX氏(以下、PBX)は、80年代から一般の電話やケータイへの造詣が深すぎるお方。そんな彼の電話、そして秋葉原に関する細かすぎて伝わらないお話とは?

PBX まー、一時は自宅でも国際電話の回線を常時つなぎっぱにして通話やネットをやってましたよ。そしたら、ある日突然、捜査員が10人ぐらい家にやって来てですね。

―は? いったい何が問題だったのでしょうか?

PBX 常時、国際電話の回線がつなぎっぱなしだったから“こいつは怪しい”となったんでしょう。なんか、国際的な犯罪シンジケートのアジトだと勘違いされたみたいですよ。ま、冤罪(えんざい)すよね(笑)。

―国際電話をつなぎっぱとか、通話料金がおかしなことになるじゃないですか?

PBX そらそうですよ。当時1分、200円ぐらいだったかな。

―一日の電話代が28万円超えてるじゃん!

PBX だから電話をタダがけできるソフト“ブルーボックス”を自作して使っていましたよ。

PBX まー、スティーブ・ジョブズも作ってたけど、アウトなやつです。捜査員が来たときも使ってましたね。

―さっきの冤罪じゃないじゃん! ちなみに、海外はどこへ電話をしていたのですか?

PBX バチカンから北朝鮮、どこでもかけましたね。当時は海外のBBS(掲示板)にハリウッドスターの電話番号とかアップされてて、そこに電話したりね。もちろん、海外の友達と普通に通話もしてましたよ。

―どんな会話を?

PBX 当時は、海外にもツーショットダイヤルがあって、そこには“ゲイチャンネル”もあるんですよ。その回線に忍び込んで“ビー・ビービー!”って信号音を出して、先に入ってたゲイを追い出す。そして部屋を乗っ取るんです。

―で、何をするんですか?

PBX そこへ海外の友達を呼んで通話してた。英語で普通の会話をしてましたよ。

―普通じゃありません!





■完全非合法地帯! 80年代の秋葉原

―ところで、PBXさんは80年代中頃の秋葉原へもよく通ったそうですけど、当時の秋葉原ってどんな場所だったのですか?

PBX みんな潰(つぶ)れちゃったけど、コピー屋がいっぱいありましたよ。

―コピーするものとは?

PBX パソコン用のソフトですよ。有名だったのが「マーズ・マーケティングカンパニー」というコピー屋です。台湾人のマー・ホーケイって社長が経営してて。

―その名前は、さすがに盛りましたよね?

PBX クラーク・マーとか、馬淵慶(まぶち・けい)とかいくつも名前があったんですよ。マーズにはソフトから取説まで、なんでもそろってた。それこそ、コピー版のほうが勝手にアップデートされてて、オリジナルの不具合が修正済みだったぐらいですよ(笑)。マーズは、“コピーソフトの殿堂”でしたね。

―その時代の秋葉原は、そんな店ばかりだったと?

PBX 大型の有名店でも閉店後に店長が常連を呼んで、店舗のパソコンを使って“コピー大会”とかやってましたよ。 お客も大学教授から有名企業の人まで普通の人たち。まだ“海賊版が違法”という認識がなかった時代ですからね。

―ちなみに現在、マーズはどうなったんでしょうか?

PBX 1987年にマー社長が逮捕されたんですよ。国内初の海賊版ソフト販売での逮捕者です。マー社長が逮捕されて店を閉めたあたりから、秋葉原が浄化されてきたんでしょうね。マー社長はひと財産稼いで、台湾の高雄にビル建てたらしいですよ。

―ちなみに、コピーソフトはどのような経緯で制作を?

PBX 元のデータは海外からです。大学のサーバーが、一番ソフトが豊富でした。そこからハッカーが盗んだものが、コピー屋に流通してた感じですかね。なかには米軍経由とかもありましたよ(笑)。これも、普通じゃ絶対に入手できないようなソフトがあってすごかった!

―それ、逮捕じゃ済まないレベルかと! この時代のハッカーたちはどんなことをしてたんですか?

PBX 基本、お金儲(もう)けでやる連中じゃなかったですね。サイトを乗っ取って、そこを書き換えるのが面白かった。イタズラばっかりですよ。

―具体的には?

PBX 例えば企業のサイトだったら、そのトップページを改変する。トップに“フェラチオしてる動画”を出現させたりとかですね(笑)。あとは、フーゾクのサイトを乗っ取ったやつもいた。値段とか女のコの画像を入れ替えてしまう。そうしたら、そのフーゾク店の電話がパンクしてましたね。



 

―ところで、PBXさんがそもそも電話に興味を持ったきっかけとは?

PBX 公衆電話ですよ。

―昔、外国人がよく販売してた偽造テレカ的なやつ?

PBX そんなんじゃありませんよ。まず公衆電話本体を“バチバチ!”ってショートさせるんです。

―完全にアウト!!

PBX そこに秋葉原で買ったパーツで自作したブツを接続すると、通話し放題だったんですよ。

―それ、偽造テレカ以上に悪質なやつ! 最近のスマホなんかにも造詣が深いんですか?

PBX まー、電話はなんでも好きですね。iPhone買っても、OSをAndroidに替えるとかやってましたよ。携帯の回線もいっぱい持ってますからね。一時、通信費の請求が60万円以上来てましたよ。

―今でも毎月そんなに払ってるんですか?

PBX そんなことないですよ。今月は20万円ぐらいかな。

―それでも十分すぎかと! そろそろ話題の格安SIMとか使ったらどうですか?

PBX あんなの速度が遅くていろいろとやれませんよ。一般の人にもオススメしませんね。

―一般の人は、いろいろやりませんから!

(取材・文/直井裕太 協力/クーロン黒沢)