犬の性格は何で決まる?

犬の性格は飼い主に似るって本当なのでしょうか。そもそも性格とは何なのでしょう。心理学的にいうと、その動物が持っている「性格」は、遺伝、体質、気質、性格に分けられます。遺伝はもちろん、DNAによって規定される先天的な遺伝情報。その遺伝情報をもとに体質が作られます。体質は生まれつきの体の機能や性状のことで、それをベースにして発現する行動や感情のパターンが気質となります。ここまでは遺伝的要素が強く、つまり「先天的」なものです。生まれながらの性質、といったところでしょうか。
そして気質を元にして、周囲の環境や社会学習、飼い主さんとの関係といったことに影響されて形作られていくものが性格となります。つまり性格は「後天的」な影響が強いということです。

犬の先天的な性質「気質」をつくるもの:遺伝と犬種

犬の気質にも遺伝子が関わっていることが最近の研究で解明され始め、特に神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)は遺伝によって違いがあり、犬の気質にも関係することがわかってきました。また、攻撃性や衝動性、注意力なども遺伝によって決まってくるようです。

そして遺伝と非常に密接な関係がある「犬種」も、気質に関わるのではないかと考えられます。実は犬種による性格の違いは現在のところ研究中で明確にはわかっていませんが、例えば村山(2012)によると、例えば警察犬や狩猟犬は攻撃性が高く、反対に愛玩犬や牧羊犬は攻撃性が低くて反応性(飼い主への懐きやすさ)が高いのだそうです。犬種は特定の使役のために交配されてきたことを考えれば、そりゃそうだ、という感じもしますが、犬種が性格の違いに関係することが学術的にも証明されて始めたということなのでしょう。

犬の後天的な性質「性格」をつくるもの:環境、社会、飼い主

三つ子の魂百までといって、人間もそうですが犬も幼児期の環境や親・兄弟との関わりが成犬になってからの性格のベースをつくるといわれます。例えば社会化期に親・兄弟と離されてしまうと社会性が培われず、臆病で引っ込み思案な性格になるとされます。ただし、性格は一生変わらないわけではありません。社会化期を過ぎてからも、飼い主さんとの関係や飼育環境などによって性格が変わってきます。これが「飼い犬が飼い主に似る」という要因なのでしょう。

飼い犬は飼い主の性格に似てくる

ごく最近の研究(Iris Schöberl ,他2017)で、犬が飼い主の性格に影響されるという研究結果が報告されています。132人の飼い主さんに、自分の性格についてアンケート調査を行い、さらに飼い主さんと彼らの犬たちの唾液中のコルチゾル(ストレスで分泌されるホルモン)の量を計測しました。このことから、神経質、不安感のある飼い主さんの犬は、分離不安などの不安感を感じているといったことがわかり、飼い主さんの性格や態度が犬の性格に影響することがわかったのです。

飼い主さんの性格が犬に影響することは、ドッグトレーナーの方たちからすれば前から経験的に気づいていたと思います。例えば、飼い主さんが愛犬と散歩中、前から来た別の犬を見て「うちの子が飛びかかったらどうしよう」と不安になると、犬も不安になって通りがかりの犬に吠えてしまうといったことです。これは性格というよりは瞬間的な気分の変化かもしれませんが、こうしたことが長い間積み重なれば、犬の性格形成に影響を与え、不安感の強い犬になっていく可能性はあります。

まとめ

犬の性格を決めるのは飼い主さん、というのは言い過ぎかもしれませんが、あながち嘘とも言い切れません。犬は飼い主の鏡でもあります。敏感に感情を読み取り、飼い主さんが不安だと犬も不安になります。犬と一緒に過ごすときは、なるべくリラックスして落ち着いた態度で接することが重要でしょう。それが愛犬の精神的な安定にもつながるのです。

《参考》
村山美穂2012, 犬の性格を遺伝子から探る, 動物心理学研究, vol.62, No.1, p.91-99
https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/62/1/62_62.1.2/_article/-char/ja/
Schöberl I,他(2017)Psychobiological Factors Affecting Cortisol Variability in Human-Dog Dyads, . PLoS ONE 12(2): e0170707. doi:10.1371/journal.pone.0170707
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0170707


(博物館アドバイザー(元自然史博物館学芸員)提供:碇 京子)