バンコク市内で元受刑者やボランティアらとともにリサイクルの化粧品を作る、元政治犯のポーンティップ・マンコンさん(左)(2017年7月24日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】陰鬱なタイの刑務所生活を輝かせるため、ポーンティップ・マンコン(Prontip Mankong)さん(29)と女性受刑者の仲間たちは、こっそりと台所から食用色素を持ち出し、ワセリンと混ぜ合わせ、手作りのリップグロスを作っていた。タイ王室を侮辱したとして不敬罪で2年間服役した後、元政治犯のポーンティップさんは今、刑務所の門の外側にいる。

 彼女はあの時と同じクリエーティビティーをもって、殺風景なことで悪名高いタイの刑務所にいまだいる女性たちのためにリサイクルの化粧品を作っている。世界の中でもタイは女性の収容率が高く、刑務所は受刑者であふれている。

「自由が制限された場所で、あのリップグロスは我々に自信と自己表現の感覚を取り戻させてくれた」とポーンティップさんは語る。彼女は風刺劇で演じた役が「王室をばかにしている」と当局にみなされ、投獄された。

 最近のある日曜日の午後、ポーンティップさんとほかの元受刑者らは、寄付された何千本もの口紅の上部をそぎ取り、色ごとにバスケットに仕分けした。それらの口紅は、きらきらとしたピンクとマゼンタの液状になるまでストーブの上で煮詰められる。そして小さな容器に注がれ、冷ましてから女性刑務所へと寄付されるのだ。

 すべてが足りない刑務所生活の中で、化粧品は比較的重要でないと思われている。だが、ポーンティップさんは、化粧品の寄付は女性たちの気分を明るくし、所持金を節約できるシンプルな方法だと考えている。女性受刑者たちの生活は、塀の外の一般の人たちと同じように金銭に頼っているからだ。女性受刑者たちは料理や工芸品の製作により、少しの稼ぎを得ている。収入の上限は1日10ドル(約1100円)まで。小さなコンビニエンスストアで生理用品や日用品の購入に当てられる。

「化粧品は高価で、手に入れるのはとても難しい」とポーンティップさんはAFPの取材に答えた。中には小さな刑務所の売店の化粧品を買い占め、値をつり上げて他の者に売る受刑者もいるという。このような闇取引は刑務所内でまん延しており、長めにシャワーを浴びたり鎮痛剤を入手したりといった慰めを得る唯一の手段が、所内での仕事や身内の者から得た現金となっている。「こうしたお金は刑務所ではなく、立場の強い受刑者のポケットに入る」とポーンティップさんは言う。快活だった彼女の口調も、獄中での体験を話し始めると勢いをひそめた。

■過酷な環境におけるコスメの意味

 タイの刑務所人口の爆発的な増加は、厳格な反ドラッグ法による。タイではメタンフェタミンの錠剤を数粒、所有していても、犯罪者として10年間投獄される。タイは人口に占める女性受刑者の割合が他国と比較して非常に多い。さらに国際人権連盟(International Federation for Human Rights、FIDH)によると3万9000人の女性受刑者うち80%以上が、ドラッグ関連の罪での服役だ。

 歴代のタイ政府は、ドラッグ法の改正や刑務所の超過密問題にはほとんど取り組んでいない。受刑者が眠るのは堅いリノリウムの床の上。しかも雑居房は混み過ぎていて、それぞれ横向きになって寝るか、手足を他人の上に重ねて眠ることになる。蛍光灯は一晩中つけられ、数十人もの受刑者が舎房の裏のたった1つのトイレを共有する。そこにはプライバシーを守るカーテンさえない。そのような環境の中では小さな慰めが大きな意味を持つ。

 ポーンティップさんのプロジェクトのために化粧品を集める支援をしたファッションブロガーのワティニー・チャイティラサクル(Watinee Chaithirasakul)さんは、「美容は支えになる」と語る。「あの場所で生活していく彼女たちの精神を支えることが大切だ」
【翻訳編集】AFPBB News