マインツ武藤が放つ「ドイツ3年目の風格」 今季初戦2ゴールを導いた“淀みのない動き”

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DFBポカール1回戦で独4部相手に2得点、動きの良さに地元記者も驚く

「楽しみですね!」

 来週開幕するブンデスリーガに向けての武藤嘉紀の言葉だ。

 自信に満ち溢れた顔で答えていた。今、武藤は変革の時を迎えようとしている。

 マインツはDFBポカール1回戦で、4部リーグ所属のリューネブルガーSKハンザと対戦した。降り続ける雨により、試合会場のピッチはかなりスリッピーなコンディション。足を取られる選手が目立っていたなか、武藤はまるで動じることなくがっしりとボールをキープしたかと思うと、機敏なステップでスペースにボールを運んでいく。格下相手とはいえ、ファウル以外では止められないその動きの良さには、地元記者も驚いていたほどだ。

 ジャイアントキリングを狙うリューネブルガーは、立ち上がりから精力的な動きを見せ、球際では非常に激しく当たってきたが、そんな相手の意気込みをさらりと受け流すように、武藤が前半13分に先制点を挙げる。味方のシュートが相手DFに当たって跳ね上がった瞬間、そちらに一瞬気を取られた相手選手からスッと離れてフリーになると、ボールを拾ったチームメイトからのセンタリングをファーポスト際でヘディングで合わせ、ゴールを決めた。

 その後、一度は同点に追いつかれたものの前半終了間際に武藤が上手く誘って獲得したPKをDFダニエル・ブロジンスキが決めて勝ち越すと、後半15分には武藤がこの日2点目のゴールを決めて試合を決定づける。左SBブロジンスキからのセンタリングを、相手DFを上手くブロックしたまま素早くターンし、右足を振り抜いてゴール左に決めた。

際立ったゴールから逆算したプレー

 得点シーンだけではなく、武藤のプレーからは全体的に動きに淀みがない。ゴールから逆算したプレーができている印象を受けた。どうすればゴールできるか、どうすればゴール前でチャンスに絡めるのか。そこへのビジョンがあるから、その前の展開で流れを壊すことなくプレーに絡むことができる。

 そこには監督交代の影響もあるようだ。今季から指揮を執るサンドロ・シュバルツは、戦術家として首脳陣から高い評価を受けている。手詰まりになりがちだった攻撃に、流動性が見られてきた。

「かなりつなぐようになったんじゃないかな。今までちょっと(縦)一本が多かったですけど、真ん中でしっかりつないでいる。これが、ブンデスが始まっても勇気を持ってできればいいですね。チームとして前を向いて、ポジティブに捉えていければ、良い結果が出てくるんじゃないかなと思います」

 手応えを口にしながらも、より良いプレーをするためにチームへの注文も忘れなかった。

「強いて言うなら、組み立ての時に10番(マキシム)がちょっと下がってもらう傾向がある。そうすると自分が孤立しちゃって、ワンタッチではたけるところがない。あそこで取られるとピンチにもなると思うので、近くに誰かいるのがいいかなと思います」

「やっぱりブンデス開幕戦で点を取ってこそ」

 昨季までFWの主軸だったジョン・コルドバは、今夏にケルンへと移籍した。武藤には前線の柱としての期待がかけられている。

 最初のハードルは越えた。だが、先は長い。

「ブンデスの開幕がもっと大事なので、やっぱりそこで点を取ってこそ自分の進化だと思う」

 ドイツに渡って3年目、今季に懸ける思いは強い。怪我をすることなく主力としてシーズンを戦い抜くための、武藤の新たな戦いが幕を開けた。

【了】

中野吉之伴●文 text by Kichinosuke Nakano

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images