ウサイン・ボルト【写真:Getty Images】

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400mリレーで故障、「悲劇のラストラン」の原因に…「我々はルールに従うしかない」

 陸上の世界選手権(ロンドン)の男子400メートルリレー決勝で、ジャマイカのアンカーを務めたウサイン・ボルトはレース中に左太もも裏の痙攣を起こし、まさかの途中棄権。陸上界のレジェンドは衝撃のラストランとなったが、引退会見では故障の要因となった「寒すぎる招集場」の真相を明かし、長時間待機させた主催者側に嘆いている。地元紙「ガーディアン」が報じた。

 五輪で金メダル8個、世界選手権で金メダル11個という輝かしいキャリアを誇った英雄のラストランの衝撃は、未だ冷めやらない。

 400メートルリレーで最終走者のボルトはトップ付近でバトンを受けたが、直線に差し掛かった瞬間、足を引きずって失速。苦悶の表情を浮かべ、コースに転がるように倒れ込んだ。まさかの途中棄権が、競技人生最後のレースとなった。

 衝撃の夜から一夜明けた13日(日本時間14日)、ジャージに身を包んだボルトは拍手の中、引退会見に登場した。

「私はファンと大会にも別れを告げたんだ。自分が長年に渡り、支配してきた2つのイベントがあった。全てに別れを告げた。泣きそうになった。涙が出そうだったが、そうはならなかったんだ」

 記事によると、ボルトはこのように語り、五輪、そして、世界選手権に君臨し続けた男は、ボルト伝説に幕を引くことを改めて宣言した。

ボルトが語る招集場の真相は? 「メダル授与式の間に電光掲示板の裏に連れていかれ…」

 左太もも裏の痙攣により、王国ジャマイカの5連覇の夢は潰えた。レース前に寒い招集所で待機させられたことがボルトの故障の原因になったとして、レース後にはチームメートは口を揃え、主催者側のレース前のアスリートに対する配慮のなさを糾弾していた。

 それは、当事者のボルトも同感だった。

「あれはあり得ない。自分は少し張りを感じていたので、ウォーミングアップの必要があることをわかっていた。コーチも『待機所でできるだけ体を温め続けていくように』と再三確認してきた。しかし、彼らは2つのメダル授与式が行われている間に、電光掲示板の裏に連れていかれて、そこで10分か、15分待たされた。風も強かったんだ」

 ボルトは真相を明かした上で、こう嘆いたといい、出場選手は温度の低い招集所からレース前に屋外で待機を命じられ、さらに冷たい風も吹くロンドンの夜は常夏のジャマイカで過ごしてきた30歳のベテランの体の熱を奪ったようだ。

 レース前に「なんであんたらは自分たちを外に出したんだ?」と疑問と怒りを吐き出したことも明かしたが、「我々はアスリート。ひたすらルールに従うしかないんだ」とも語ったという。

 しかし、条件はどの国も同じ。運営面に課題は残ったが、陸上界のトップを走り続けてきたレジェンドは、悲運な幕切れをしっかりと受け止めていた。