防犯カメラが抑止力とならないこともある

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 急速に豊かになった中国だが、治安の面ではまだまだ問題も多いようだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

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 8月12日、中国のニュース媒体は一斉に短い動画を配信した。そのタイトルは〈90秒の魂が凍り付く恐怖 男は強姦を目的に屋内に引きずり込もうとした〉である。

 動画を再生すると、現れるのはマンションの扉。そこに黒いTシャツを着た若い男がだらしない足取りで現れる。そこでなぜか男はマンションの防犯カメラをにらみつけて中指を立て薄笑いを浮かべる。

 このとき同じマンションに住む女性には、「部屋のカードをなくしたのでエレベータで下に降りられないので助けてほしい」とうそをついて扉を開けさせた。そして、女性が扉を開けてエレベータに向かおうとした瞬間、男が女性を部屋に押し戻しながら自分も女性の部屋へと入ろうとしたのだ。

 緊迫した一部始終が防犯カメラに収められていて、後にニュース配信されたのだが、当然のこと恐怖の映像として中国で大きな反響があった(結果は未遂。他の住人が騒ぎに気付いて駆け付け、男は退散)。

 防犯カメラの映像が流出するのは中国では珍しいことではない。数年前には街角のATMの前で顔も隠していない強盗に襲われ、そのまま撃たれてしまう女性の映像が話題になったこともあった。

 中国社会の恐ろしい一面が露見した動画となったが、中国において強姦が極めて深刻な問題かといえば、それはそうでもない。

 世界の統計で比べて見れば日本よりも多いが、アメリカや南米、ヨーロッパに比べてはるかに少ない。中国でもそうした認識のようで、国内のサイトで強姦に絡む事件を検索してみても、出てくるのはほとんどがインドとアメリカ、スイスの情報ばかりである。

 むしろ現在の中国の社会問題としてとらえられているのは、子供に対する性犯罪で、これは2013年からの3年間で、ほぼ1日1件というペース(不完全な統計)というのだ。だが、映像を観る限り、怖いの確率ではなく、隣人を信用してうっかり扉を開けられないという事情だ。