中国には、北朝鮮から派遣された労働者が数万人いると言われている。北朝鮮の外貨稼ぎにも、中国東北地方の経済にも大いに貢献してきたが、彼らの雇用を取りやめる中国企業が続出している。

中国のデイリーNK対北情報筋によると、吉林省の一部の工場が、北朝鮮の貿易会社との話し合いの席で、「今後は労働者を雇用しない」と通告した。また、他にも契約の延長をしないことを決めた工場があるという。

北朝鮮の貿易会社は、3年から5年の契約で中国企業に労働者を派遣してきた。より高い賃金を求めて転職を繰り返す中国人労働者と異なり、離職率も給与水準も低い北朝鮮労働者は、労働力不足に悩む地域の企業にとって重要な存在だった。

延辺朝鮮族自治州にある琿春の工業団地では昨年、6000人以上の北朝鮮労働者を雇用し、今年はその数を8000人に増やす計画だった。

ところが、新たな対北朝鮮制裁が状況を一変させた。

国連安全保障理事会は5日、新たな制裁決議2371号を全会一致で採択した。これには、北朝鮮労働者の受け入れ人数を現在より増やすことを禁じる条項が含まれている。

このような動きは、決議が採択される前から起き始めていた。韓国の北朝鮮専門メディア、ニューフォーカスによると、中国当局は昨年3月、主に遼寧省と吉林省の企業を対象に北朝鮮労働者の雇用停止を非公式ながら指示した。

それを受けて、吉林省長白朝鮮族自治県は6月から北朝鮮労働者の受け入れを中止している。

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新たな制裁決議採択後に北朝鮮労働者の新規雇用、延長を取りやめる事例が確認されたのは、今のところ延辺朝鮮族自治州だけだが、中国政府が国際社会に向けて制裁を厳格に実行していることをアピールするため、同様の措置を全国に拡大するのは時間の問題と思われる。

これに対し北朝鮮当局は、契約期間が満了した労働者の帰国を遅らせ、別の外貨稼ぎ事業に投入せよとの指示を下したもようだ。

遼寧省丹東の服飾工場で働いていた一部の労働者は、帰国せずに指示に従い、北朝鮮レストランや北朝鮮系のホテルでアルバイトをしている。しかし、こんなことをしたところで焼け石に水だろう。

また、両国の企業が合意した貿易や合弁事業も次々に中止に追い込まれている。情報筋によると、貿易品目に制裁対象のものが含まれていたとして、北朝鮮に返品する事例が相次いでいる。

このような状況に中国企業はもちろん、中国東北地方の地域全体が困惑している。

減速局面に入ったとは言え、依然として高成長を維持している中国経済だが、北朝鮮に面している東北地方の3省に関しては落ち込みが激しい。中でも遼寧省は、2016年のGDP成長率が前年比で、中国の31の省、自治区、直轄市の中で唯一のマイナス(-2.5%)となった。

給与水準が低いため、働き手はよりよい賃金を求めて大都市に出てしまい、安定した労働力の確保が難しくなっている。だからと言って、給料を上げると工場が立ち行かなくなってしまう。そこで、北朝鮮労働者が重宝され、ある企業では従業員の9割に達していた。ところが、それも難しくなった。

人口約2500万の北朝鮮が繰り広げる核・ミサイル問題が、人口1億2000万の中国東北地方の足を激しく引っ張っているのだ。

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