金正恩氏

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北朝鮮の金正恩党委員長が「雲隠れ」している。先月30日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射成功を祝う宴会に出席した後、北朝鮮メディアが2週間も正恩氏の動静を伝えていないのだ。

最近、正恩氏がこうして雲隠れした後、北朝鮮が弾道ミサイルを発射する例が続いている。北朝鮮が正恩氏の立ち会いの下、ICBM「火星14」型を初めて試射したのは7月4日だが、その前に正恩氏の動静が伝えられたのは6月20日だった。

普通のトイレはダメ

また、先月13日以降、動静の途絶えていた正恩氏は2週間後の同27日に祖国解放戦争(朝鮮戦争)参戦烈士の墓を参拝し、翌28日に「火星14」型の2回目発射実験を現地指導した。

こうした過去のパターンを踏まえると、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)戦略軍が発表した米領グアム周辺への中距離弾道ミサイル「火星12」型の発射計画が、実際に進められている可能性が浮上する。

このように、正恩氏が軍事行動の直前に雲隠れするのは、言うまでもなく身の安全を考えてのことだ。彼の警護を担当する護衛総局は、一般人と同じトイレを使えない正恩氏のため、専用機器を持ち歩くほど徹底しているという。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

もちろん、スケジュールは最小限の人員にしか伝えられない。一説には、正恩氏の動線は実の妹である金与正(キム・ヨジョン)氏が管理しているとも言われる。

正恩氏はこれほどまでに身の安全に気を使いながら、弾道ミサイルの実験のうち重要なものについて、必ず自ら立ち会っている。かなりの大きさがある弾道ミサイルは、移動するたびに米国の偵察衛星などによって捕捉される。つまり米軍からすると、弾道ミサイルが発射準備中にあるところをステルス戦闘機などで急襲すれば、正恩氏を殺害できる可能性が高いというわけだ。

そのようなリスクを冒しながら正恩氏が現地指導を続けるのは、何の業績もないまま父親からの禅譲により独裁者となった立場上、米軍に立ち向かって「勝利」した経歴を積み上げる必要があるからだろう。軍隊では、たとえ実験であっても、重要なものについては実戦同様の意味を持たせた「作戦」として行われる。正恩氏と北朝鮮の軍にとって、一連の弾道ミサイル発射がこの上なく重要な作戦であるのは疑いない。

このような、外部から見れば「暴走」にしか見えない行為も、数十回以上も繰り返した末に、北朝鮮が国際対話で何らかの成果を得ようものなら、それは立派に、正恩氏の業績になってしまう。

北朝鮮国民がいま、平和と安定した国際関係を望んでおり、それに背を向ける正恩氏に不満を募らせているのは間違いない。そういった意味において、彼らと我々は「味方」なのだ。

しかしそれも、いつの日か正恩氏が「立派な業績のある指導者」となってしまったら、どのように変化するかわからないのだ。