この夏を境に、NBAの勢力図が一変しようとしている――。

 NBAファイナル終了からわずか1週間後、最初に動いたのはインディアナ・ペイサーズ(イースタン7位/42勝40敗)だった。

※各チームの数字は昨季レギュラーシーズン成績。ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。


アービング(左)とレブロン(右)のコンビをもう見ることはないのか

 現地6月19日、主力のポール・ジョージ(SF)が「2018年夏にFAとしてペイサーズを去る」とチームに伝達。その意向を受けて、何の見返りもなしにオールスター選手を失うことを避けたいペイサーズは、急遽トレード先を探した。

 FAとなる来夏、ジョージは地元ロサンゼルス・レイカーズでのプレーを希望していると噂されている。よって、今夏にジョージを獲得してもわずか1年でチームを去ってしまう可能性があり、このトレードにはリスクを伴う。それでも、オクラホマシティ・サンダー(ウェスタン6位/47勝35敗)が手を挙げ、ビクター・オラディポ(SG)、ドマンタス・サボニス(PF)との交換でジョージを獲得した。

 このトレードの結果、2016-2017シーズンMVPのラッセル・ウェストブルック(PG)とジョージとの「スーパーデュオ」が完成。今季のサンダーの攻撃力アップは疑う余地がなく、ウェスタンにまたひとつ要注目なチームが誕生することになった。

 一方で、ヒューストン・ロケッツ(ウェスタン3位/55勝27敗)にも強力なデュオが生まれている。ロサンゼルス・クリッパーズ(ウェスタン4位/51勝31敗)のクリス・ポール(PG)がロケッツに移籍し、ジェームズ・ハーデン(PG)&ポールという「リーグ最強のバックコートコンビ」が誕生したのだ。

 しかし、間違いなく強力なデュオではあるものの、昨シーズンのロケッツはハーデンがポイントガードを務め、すでに超攻撃的なチームとして成功を収めている。ボールを持つ時間の長いポールの加入によって、ロケッツはチームカラーを一変させる必要に迫られており、このデュオ結成には否定的な意見も多い。

 ただしこの移籍には、サンアントニオ・スパーズ(ウェスタン2位/61勝21敗)に加入する可能性もあったポール自身がハーデンとチームメイトになることを望んだとも伝えられている。バスケIQの高いポールには、スパーズよりもロケッツの一員になるほうが明るい未来が見えた、ということだろう。

 そしてこの夏には、新たな「ビッグ3」も誕生している。そのトリオを完成させたのはニューオーリンズ・ペリカンズ(ウェスタン10位/34勝48敗)だ。

 昨今のNBAはアウトサイドシュートがより重視されるなか、ペリカンズはデマーカス・カズンズ(C)とアンソニー・デイビス(PF)の「最強ツインタワー」を擁するインサイド主体のチーム。そこに今オフ、シカゴ・ブルズ(イースタン8位/41勝41敗)からFAとなった元アシスト王のレイジョン・ロンド(PG)が加入した。

「ビッグ3」誕生のために、カズンズが熱心にロンドを勧誘したという。ツインタワーに好アシストを配給できるポイントガードの加入により、他チームと毛色の異なるペリカンズがウェスタンの「台風の目」になる可能性はグッと高まったと言えるだろう。

 しかし、サンダーやロケッツ、ペリカンズに注目が集まるなか、今夏の補強でもっとも目立っていたチームはミネソタ・ティンバーウルブズ(ウェスタン13位/31勝51敗)だ。

 ウルブズはブルズとのトレードで、ザック・ラヴィーン(SG)とクリス・ダン(PG)を放出した代わりにオールスター選手のジミー・バトラー(SG)を獲得。同時にシックスマン・オブ・ザ・イヤーに3度輝いたジャマール・クロフォード(SG)と、堅守がウリのタージ・ギブソン(PF)もチームに加えた。さらにはユタ・ジャズ(ウェスタン5位/51勝31敗)に移籍したリッキー・ルビオ(PG)の後釜として、ペイサーズからFAのジェフ・ティーグ(PG)も獲得している。

 これらの補強によりウルブズの来季スターターは、ティーグ、バトラー、アンドリュー・ウィギンス(SF)、ギブソン、カール=アンソニー・タウンズ(C)と予想される。2015年新人王のウィギンスと2016年新人王のタウンズはともに成長著しく、将来はチームのみならずリーグを背負う逸材。また、バトラーとギブソンはブルズ時代、トム・シボドー現ウルブズ・ヘッドコーチのもとでプレーしていたので、新チームにアジャストするのは容易だろう。

 もちろん今オフ、昨季王者のゴールデンステート・ウォリアーズ(ウェスタン1位/67勝15敗)もライバルたちのレベルアップをただ眺めていたわけではない。

 最優先事項だったステファン・カリー(PG)とケビン・デュラント(SF)の契約延長に成功しただけでなく、アンドレ・イグダーラ(SF)やショーン・リビングストン(PG)といった優勝時のコアメンバーの残留も成功。新戦力の補強にも余念がなく、昨季平均13.2得点・スリーポイントシュート成功率40.4%のニック・ヤング(SF)を獲得している。FA選手のヤングは他チームからもオファーを受けていたが、カリーやデュラント、ドレイモンド・グリーン(PF)から直接勧誘され、ウォリアーズを選んだと言われている。

 また、イースタンの覇者クリーブランド・キャバリアーズ(イースタン2位/51勝31敗)も負けてはない。2011年のMVPであり、昨季は平均18.0得点と輝きを取り戻しつつあるデリック・ローズ(PG)をニューヨーク・ニックス(イースタン12位/31勝51敗)から獲得。イースタンの覇権をやすやすと他のチームに渡すつもりはない。

 そのイースタンでキャブスの戦力に並ぼうと息巻いているのは、歴代1位のリーグ優勝17回を誇る名門ボストン・セルティックス(イースタン1位/53勝29敗)だ。

 昨季のプレーオフ、セルティックスはカンファレンス・ファイナルでキャブスと激突。結果1勝4敗で完敗したセルティックスは、今オフの目玉FAのひとりだったゴードン・ヘイワード(SF)を獲得した。ヘイワードは昨季平均21.9得点・5.4リバウンド・3.5アシストを記録するなど、リーグを代表するフォワードだ。さらにデトロイト・ピストンズ(イースタン10位/37勝45敗)からマーカス・モリス(PF)もトレードで手に入れ、今季はイースタンの覇権を狙えるまでの選手層となっている。

 その他の大物選手の去就についても触れておこう。

 今年7月に40歳になって引退も囁かれていたマヌ・ジノビリ(SG)は現役続行を表明し、スパーズ在籍16年目を迎える。元アメリカ代表のルディ・ゲイ(SF)も新天地にスパーズを選んだ。キャリア20年目となるヴィンス・カーター(SG)はサクラメント・キングス(ウェスタン12位/32勝50敗)、ポール・ミルサップ(PF)はデンバー・ナゲッツ(ウェスタン9位/40勝42敗)、ドワイト・ハワード(C)はシャーロット・ホーネッツ(イースタン11位/36勝46敗)へと移籍している。

 ここまで読み進めると、来季に期待の持てるチームはいくつか誕生したものの、文頭の「勢力図が一変しようとしている」という言い回しは大袈裟ではと思った方も多いのではないだろうか。しかしご安心を。移籍はほぼ間違いないが、どのチームへ移籍するか未定な大物選手があと2名いる。

 それが、カイリー・アービング(キャブス/SG)と、カーメロ・アンソニー(ニックス/SF)だ。この2名の移籍先次第では、2017-2018シーズンの勢力図は激変すると言っても過言ではない。

 アービングの所属するキャブスは、3年連続でファイナルに進出している超エリートチームだ。しかし、レブロン・ジェームズ(SF)がエースに君臨しているため、アービングは自身がより中心的な役割を担える状況でプレーすることを望んでいる。

 アービングが移籍を希望しているのは、スパーズ、ニックス、マイアミ・ヒート(イースタン9位/41勝41敗)、ウルブズの4チームと報じられているが、その希望が叶うかは不明だ。なぜならば、それらのチームがアービングを獲得するためには、相応の戦力を放出しなければならないからだ。

 ただ仮に、現戦力を維持できたスパーズや、大補強を敢行したウルブズにアービングが加入することになれば、ウォリアーズも上回る”スーパーチーム”となる可能性は十分にある。すでにウルブズのバトラーとタウンズは「アービングとともにプレーしたい」という意向をフロントに伝え、チームもトレード実現に向けて本格的に動いているという。

 一方、カーメロはニックスのフロントに「ロケッツへの移籍」を強く要望したと報道されている。現時点でニックスの希望する選手を用意できそうにないロケッツは、4チーム間によるトレードを成立させてカーメロ獲得を狙っているらしい。もしハーデン、ポール、カーメロがスターターに並ぶことになれば、王者ウォリアーズにとって脅威となるはずだ。また、ペリカンズのカズンズはカーメロに接触し、積極的に勧誘しているとも報じられている。

 果たしてアービングとカーメロは来シーズン、何色のユニフォームを着ているのか。そして勢力図はどう変わるのか――。今は首を長くして、2017-2018シーズンの到来を待ちたい。

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