buri327 / PIXTA(ピクスタ)

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 マネジメントにおけるコーチングのアクションは、マネジャーが業績などの事実を把握すること、マネジャーが解決策の仮説を立てること、マネジャーとメンバーとで方向性のすり合わせをすること、マネジャーとメンバーとで方向性の合意を形成することに分解できる。仮説の立案は、メンバーのモチベーションファクターをふまえて行うと、仮説の確度が高まる。(『メンバーの「やる気の源泉」を見極めると、チームは動かしやすくなる!』より)

 仮説立案をした上で、マネジャーとメンバーとで方向性のすり合わせをするのであるが、演習をしてみると、コーチングによるすり合わせをしようと頭の中で思っていても、実際にメンバーと対話する際に口に出るのは、トップダウンの命令になってしまうというケースが実に多い。

 コーチング理論を、何冊も書籍で学習しても、コーチング研修を何時間受講しても、実際の対話でコーチングを発揮できなければ、何の意味もない。そのような人をコーチングが出来る人とは、言わない。逆に、コーチングの書籍を一冊も読んでいなくても、コーチング研修を受講していなくても、コーチング話法を繰り出すことができる人は、コーチングが実践できる人と言える。

 では、どうすれば、コーチング話法を繰り出すことができるようになるだろうか。コーチング書籍を何冊読んでも、コーチング理論研修を何度実施しても、コーチングを実践しろ、実践しろと何度唱えても、コーチングが出来るようにならない。

 演習を通じて、さまざまな方法を実施してきたが、現時点で、最もコーチングを実践しやすくなる方法は、コーチングの5質問を繰り出すことのロープレを行うことだ。それもわずか2時間で体得でき、実際に話法展開できるようになるとすれば、身に付けてみたいと思わないだろうか。

◆ダメ出しは効果を出さない

 コーチングの5質問とは、次の質問だ。

・やってみてどうでしたか
・うまくいったことは何ですか
・うまくいかなかったことは何ですか
・どのように改善していきたいですか
・そのためにどのようなサポートを得たいですか

 トップダウンの命令をやめて、考え方のすり合わせをしようと言っても、すぐにその話法を繰り出すことができる人は少ない。しかし、身に付けたいスキルを分解して、コアとなるスキルを見極めて、コアスキルを反復演習する分解スキル反復演習型能力開発プログラムを用いれば、話法を繰り出すことができるようになる。

「〇〇が駄目だろう」とダメ出しだけしても、メンバーは腹落ちしない。メンバーの状況をふまえずに一方的に指示をしても、すり合わせはできない。「ああしろ、こうしろ」と命令しても、相手を巻き込むことができないのだ。

 そこで、まずは、現状を把握するために、「やってみてどうでしたか」という質問をすることが、コーチングの5質問の第一だ。メンバーがどのように現状を捉えているか聞く質問であり、その後、課題を浮き彫りにしていくための導入だ。この質問は、マネジャーが「虚心坦懐に聞く耳を持っている」ということを、そのような表現を一切使わずに、メンバーへ伝えることのできる質問で、コーチングの導入のために不可欠な質問だ。

◆相手の口を閉ざさずに質問する

 第二の質問が、「うまくいったことは何ですか」という質問だ。誰しも、失敗したことは話しづらい。成功したことの方が、一般に、口は軽くなる。まずは、うまくいったことから質問することが鉄則だ。

 マネジャーとメンバーのこれまでのコミュニケーションの仕方によっては、メンバーが「またダメ出しされるに違いない」と先回りして、第一の「やってみてどうでしたか」の質問の後に、すぐダメだった事例を答え始めるケースがある。そうした場合には、ダメだった事例の話は聞いた上で、「うまくいったこともあるだろう」という第二の質問を投げかけ、軌道を戻すことが大切だ。メンバーがダメな事例を話し始めたからとって、ダメ事例への対応の会話に流れて行ってしまっては、コーチング面談は成立しない。