「10分の無音」がiTunesでヒット・折畳翼機ICON A5、墜落は操縦ミス・AIで匂いを嗅ぎ分ける #egjp 週末版91

1週間のあいだに拾いきれなかったニュースをダイジェスト形式でお伝えします。今回は「"10分の無音"がiTunesでヒット」「折畳翼機ICON A5、墜落原因は操縦ミスと判明」「AIで匂いを嗅ぎ分ける技術」といった話題をピックアップしました。

折りたたみ翼式軽飛行機ICON A5の墜落事故、操縦ミスが原因と断定


米国家運輸安全委員会(NTSB)が、搭乗者2名の命を奪ったICON A5の墜落事故は、パイロットの操縦ミスが原因だったとの調査結果を発表しました。目撃者の証言によると、ICON A5は湖上を低空飛行したあとに山間の峡谷に侵入し、しばらく後に墜落したとのこと。

証言では、墜落の瞬間は峡谷の死角に入って見えなかったもののその直前にエンジン音がかなり上がったことから高度をあげようとしたと推測されます。NTSBによると、パイロットは峡谷に侵入した際、その先が開けている別の峡谷と勘違いしていた可能性が高いとしました。

NTSBの調査結果はICON A5の安全性の問題というよりパイロットの操縦・判断ミスが原因だったというものであし、数々の安全対策装備、墜落防止用のパラシュートまで備えるICON A5そのものの安全性には問題が、なかったと考えられます。

軽飛行機の事後原因でもっともポピュラーなのが地形との激突/墜落とされます。しかしそれは悪天候などの諸事情が組み合わさっていることが多く、晴天時に起こったこの事故は誤った知識や判断が引き起こした非常に不運なケースだと言えそうです。

[Source : NTSB]

AIで匂いを嗅ぎ分ける技術



ロシア・モスクワにあるHigher School of Economicsの研究者が、ディープ・ニューラルネットワークを利用した匂い検知器を開発しています。あらゆるガスの匂いを覚え込ませ鍛え上げることで、未知のガスに晒されたときにどのような影響があり得るかを認識できるとのこと。

要するに、デジタル式のカナリアを作っているということです。このセンサーは匂いを感知したとき、これまでに学習したガスのデータベースと照合し、同じまたは最も近い種類匂いを持つガスを導き出します。また類似した匂いのガスを検知できない場合は、新しいガスだと認識する仕組み。

ただ、ガスは目に見えず、一つの場所でも複数が入り混じって存在する場合もありえます。その点、このデジタル・カナリアは、複数のガスが混合している場合も1度の処理でそれらを個別に検出できるとのこと。

研究者らは「危険なガスが存在しうる鉱山などで活用できるよう、もっとAIを鍛えたい」としています。ただこの技術、どちらかと言えば鉱山だけでなく、軍用の毒ガス検出器としても需要が多そうです。技術の発展は悪いことではありませんが、これは使う機会が訪れないことを願いたい類の技術かもしれません。
[Image : Kali Nine LLC]

[Source : HSE]

ISS、深宇宙ミッション向け高性能コンピューターをテスト


8月14日に予定されているISS補給物資輸送ミッションでは、その積荷に新しいコンピューターが含まれています。このコンピューターはNASAとヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)が共同で開発したもので、今後1年間に渡り、火星やさらにその向こう側の深宇宙へち赴くミッションでの使用に耐えられるかをテストするとのこと。

火星やその先を目指す未来の宇宙探査では、探査機との通信や主要な計算処理はすべて宇宙空間で行われるようになります。これは約20分にもおよぶ火星と地球の間の通信ラグ、地球の自転による通信途絶が将来問題となることが予想されるため。

常に宇宙空間にいる拠点ステーションなら、リアルタイムに探査機への指示出しやデータの受信と分析を行える利点があるわけです。

NASAとHPEは、コンピューターのハードウェアは一般的なものを使う代わりに、動作を安定化させるためのソフトウェアを改良する方法を選択しました。このソフトウェアは、宇宙放射線量が突然上昇したときやその他動作に不具合を起こす可能性がある例外を検知したとき自動的に処理速度を下げたり、シャットダウン処理を実行してシステムを保護します。

また通常のコンピューターと同じアーキテクチャを採用することで、地上でのコンピューターの進歩をそのまま宇宙へ持っていくことができるという利点も得られるとのこと。

1年間のテストでその有効性が確認されるなら、NASAとHPEはさらに最先端のコンピューターをISSへ届ける計画です。2030年代と予想される火星への有人飛行にはまだ時間があるため、あと数年はこのようなやり方でソフトウェアを改善していけば、安価で高性能な宇宙用コンピューターもかなり熟成させられそうです。
[Image :Stocktrek Images, Inc. / Alamy]

[Source : NASA]

12光年の「ご近所」に4つの地球型惑星を確認


昨年、TRAPPIST-1に7つもの惑星が発見されたニュースは地球外生命体の発見にも大きな希望をもたらしました。ただ、その後の研究ではTRAPPIST-1の環境は必ずしも生命の存在に相応しくないとする研究結果も出ています。

一方、くじら座の方向約12光年という、宇宙ではかなりの近所にあるタウ星は、2012年には5つの惑星を従えていることがわかり、そのうち2つは恒星からの距離的に水が液体で存在しうるハビタブルゾーンに位置すると判明しています。

しかし、その後英ハートフォードシャー大学を始めとする国際的な研究チームは、このハビタブルゾーンにある惑星2つの軌道を、惑星同士の重力の影響も含めた新たな計算方法で導き出した結果、惑星として特定していた2つを除外、別に2つの惑星がタウ星に近い位置に存在することを特定しています。また、少なくとも4つの惑星は岩石質で、ハビタブルゾーンの2つはこれまでの推測よりも生命の存在に適する環境を備える可能性が高いとしました。

これら2つの惑星はタウ星からの距離が太陽から地球までの距離の約0.5倍および約1.25倍の位置にあります。太陽から地球までの距離の半分というとかなり暑すぎるのではないかと思うかもしれませんが、タウ星は太陽の78%ほどの大きさしかないため、これでちょうどよい範囲に収まるのだとか。

ただし、惑星だけの条件で見れば生命が存在できる環境にはあると推測されるものの、これら2惑星にはタウ星が持つ塵円盤由来の小天体衝突が頻繁に発生している可能性もあり、実際に生命が存在するかを知るはさらなる観測調査が必要です。

[Source : UC Santa Cruz]

10分間の無音楽曲がiTunesでトップ50入り


「A a a a a Very Good Song」と称するほぼ無音の楽曲がiTunesでリリースされ、米国iTunesのランキングで49位まで上昇する珍事が発生しています。iPhoneは多くのカーステレオにUSB接続すると、アルファベット順に自動的に楽曲を再生します。このため。毎度同じ曲が最初に流れるのに飽き飽きしているユーザーも多いとされます。

そこで、この「A a a a a Very Good Song」をiPhoneに入れておくことで、最初に好きな曲をユーザー自身が選曲する時間が確保できるとのこと。もし選曲するのを忘れて無音のままドライブをスタートしてしまった場合は、トラックの終盤で「そろそろ曲を変えようね」と教えてくれるとのこと。

無音楽曲と言えばジョン・ケージの「4分33秒」が有名ですが、過去にはSpotifyで、米国のインディーバンドVulfpeckの無音アルバム「Sleepify」が人気を博したこともありました。こちらはリスナーが睡眠する際に「Sleepify」を再生し続けてもらうことで、バンドがそのロイヤルティをツアー資金に充てようとした奇策でしたが、後にSpotifyに削除されるという憂き目にあっています。

おそらく今のところは、99セントで「A a a a a Very Good Song」を販売するSamir Mezrahiは笑いが止まらない状態のはず。ただ、iTunesが「A a a a a Very Good Song」の販売を停止する可能性は否定できません。そうなればVulfpeckの二の舞いとも言えます。ただiTunes自身も「A a a a a Very Good Song」から利益を得ていることは間違いなく、今後の判断が気になるところです。

ちなみに「A a a a a Very Good Song」はApple MusicやSporifyなどでも聴けますので、試しに聴いてみたい方はこちらもどうぞ...といってもほとんど無音ですが。
[Source : iTunes]