――通常、向こう2週間くらいの予定は皆さん埋まってるでしょうに。

「あの表情は忘れられない。申し訳ないことをしたと思いました。誰に話しても、物理的に無理だよ、考え直せと言われましたが、ご存知のとおり、性格上決めたことは曲げない人間ですので。たくさんご迷惑おかけしたぶん、良い試合、良い一日にしてお返ししたいです」

▼小嶺忠敏先生と古沼貞雄先生の卒業式を

――オープニングスペシャルマッチは、母校の国見OBと帝京OBの対戦です。

「これは、まったくの自分の思いつきです。恩師である小嶺忠敏先生と古沼貞雄先生。現在はおふたりとも国見と帝京から離れています。長く日本サッカーに貢献した偉大な指導者なのに、卒業式みたいなものをやっていないんですよね。たくさんのOBが集まるせっかくの機会ですから、みんなでありがとうございましたとお礼を言う場を作りたかった。故障から復帰したばかりなのに来てくれる大久保嘉人(FC東京)をはじめ、多くのOBが気持ちに応えてくれてうれしいです」

――昨年のホーム最終戦、大勢のサポーターが見守る引退セレモニーでは、クールな永井さんが感極まっていたのが印象的でした。

「年々、涙もろくなるね。幸せなことに、僕はタイトルを獲った回数が一番多いですよ。優勝して泣いたことは一度もないのに」

――よく言ってましたね。優勝してハッピーになって、なんで泣くの? と。

「1999年元日、横浜フリューゲルスで天皇杯を優勝したときもそう。あのチームにとって最後の大会だったからみんな号泣していて、特に三浦のあっちゃん(三浦淳宏)なんて顔をグシャグシャにしていたのに、オレだけ泣いていない。ところが、最近はめっきりダメです。昨日、自分が監督を務める東京Vユースは和倉ユースサッカー大会に出場し、ヴィッセル神戸U‐18にPK戦の末に勝ったんですが、それだけでもう泣きそうになりましたから」

――教え子の奮闘は、また別の角度から涙腺を刺激するでしょう。

「アイツらやるなあ、成長したなあ、と感激しきり。14日、みんなの前で泣きたくはないけれど、そこは自然の流れに任せます」

――はい、お気持ちのままに。それにしても、多士済々のメンバーが顔をそろえますね。

「長くやらせてもらったおかげで、たくさんの名選手と出会うことができました。ある意味、1993年Jリーグ開幕からの歴史を振り返られるようなメンバーだと思いますよ」

【プロフィール】
永井秀樹(ながい・ひでき)
1971年、大分県生まれ。国見高、国士館大を経て、1992年ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)に加入。華麗なテクニックとドリブルを武器に、清水エスパルス、横浜フリューゲルス、横浜F・マリノスなど、多くのクラブでプレーした。2016シーズンをもって現役を引退。現在は東京ヴェルディユース監督兼GM補佐。

■永井秀樹引退試合『OBRIGADO NAGAI』出場予定メンバー
【VERDY LEGENDS】
監督・松木安太郎
加藤善之、北澤豪、斎藤浩史、武田修宏、土屋征夫、富澤清太郎、藤川孝幸、藤吉信次、前園真聖、三浦淳宏、ラモス瑠偉、菊池新吉、菅原智、中村忠、西澤淳二、柳沢将之、山田卓也

【J LEGENDS】
監督・釜本邦茂
礒貝洋光、大榎克己、小野伸二、小村徳男、斉藤俊秀、齋藤学、澤登正朗、鈴木啓太、戸田和幸、永島昭浩、中田浩二、波戸康広、福田正博、本田泰人、松田直樹、山口素弘、石川直宏

インタビュー・文=海江田哲朗
1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディを中心に、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『フットボール批評』、『フットボールサミット』、『サッカーダイジェスト』など。著書に、東京ヴェルディの育成組織にフォーカスしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)がある。2016年初春、『スタンド・バイ・グリーン』を開設した。