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もくじ

ーオリジナル8シリーズの最大の問題点
ーあらたな試みが生んだ複雑性
ー8シリーズ不振 当時の対応とは
ー8シリーズ 走らせた印象は?
ー新型8シリーズ どうあるべき?

オリジナル8シリーズの最大の問題点

新型8シリーズの発表は、BMWの高級車への挑戦の悪夢を呼び起こすだけかもしれない。

その車名が20年もの間使用されなかっただけではなく、BMWはスーパー・ラグジュアリー・クーペから完全撤退をしていたのである。メルセデス・ベンツやベントレーが躍進するのを横目でみながら。

それもここまでである。BMWは、万を持して再度挑戦を試みる構えである。

新型8シリーズの導入を決断したのだ。BMWは、過去に犯した過ちを繰り返すことのないよう、今回は慎重に事を進めるようだ。

オリジナル8シリーズの最大の問題点は、そのクルマが何のために用意されたかを多くの人が理解できかなった事である。

ある者は、シャークノーズを持った6シリーズの上級移行モデルととらえ、またある者は、M1スーパーカーの再来を期待した。

300psを発するV型12気筒エンジンをボンネットに収め、それに繋がるのが6速マニュアルであれば、それがどのようなクルマになるのか期待が先行するのも無理はないであろう。

しかし、BMWは、E31 8シリーズをラグジュアリーなGTカーとして仕立てたかったのである。

あらたな試みが生んだ複雑性

GTカーとして仕立てたかっただけに留まらず、このクルマは同社のテクノロジーのショーケースでもあった。メルセデスができること以上を、BMWはできると、このクルマで世界に誇示したかったのである。

このことは、厄介な複雑性を呼び込み、BMWが考える究極のラグジュアリーを実現するためには、大幅な重量増加を余儀なくされた。

850iの重量は、635CSiに比べて300kgも重い、1800kgに達した。この重量増加がハンドリングに及ぼした影響は計り知れず、悪い予感は的中することになる。

6シリーズの軽快さや、現代版にアップデートされたM1スーパーカーを期待したひとびとは、雑な電子スロットルの躾けや役目を十分に果たしているとは言いがたいソフトなサスペンションに失望することになる。

追い討ちをかけるように、8シリーズが発表された1989年という年は、世界がリセッション入りし、5ℓの重量級のGTカーを訴求するには、よいタイミングとはいえなかった。

セールスは不調であり、BMW自身も過ちを犯したことを認めざるを得なかった。

幸いにも、BMWの動きは早かった。

8シリーズ不振 当時の対応とは

まず手始めに、トップレンジとして計画されていたM8の開発を中止し、その代わりにMディビジョンが850iのドライビングにテコ入れを行った、850CSiを導入した。

同時に、4ℓV8を搭載した840iも導入した。この時、BMWは、テクノロジーを誇示するのではなく、マッスルなGTカーを目指し、遅まきながら自身がその居場所をみつけるに至った。そして、後の1995年にフェイスリフトを決行する。

V12モデルは、326psを発する5.4ℓエンジンに、V8モデルは、刷新されたが出力は同等の286psを発し、トルクと燃費の向上を果たした4.4ℓエンジンに換載された。

さらに、V8モデルには、850CSiのボディキットとハードなサスペンションを搭載した、840Ciスポーツが追加された。

840Ciスポーツは、恐らく8シリーズの中でベストなモデルであろう。今日このクルマをドライブすると、当時BMWが8シリーズの問題に対して勇敢に立ち向かった、その様子を窺い知ることができるであろう。

ワイドなタイヤとハードなサスペンションを投じて、車体のロールを抑制しているが、これはグリップを得る為に大きな役割を果たし、このクルマがコーナーでスピードを維持する事に貢献している。

そのようなシチュエーションでこのクルマを運転するのはとても楽しい。

8シリーズ 走らせた印象は?

楽しいのだが、しかしタイトなコーナーでは、このクルマの自重が牙をむき、フロントはグリップを失いノーズは意図しない方向へ向き始める。事後的に何を施しても素性を覆すことはできない。

窪みや轍で足を捕られると、ハードなサスペンションの採用も伴って、衝撃はキャビンを直撃し、大きなGTカーとしては好ましくないキャラクターを示す。

8シリーズは、結局のところ妥協の産物であることがわかる。

ただ、欠点は多いが、8シリーズは愛すべきクルマである。

シャープなエクステリア、囲まれる様なインテリア、軽いアクセルでも魅力的な音色を奏でる840CiのV8エンジンは、何物にも代えがたく、ピラーレスのドアと巨大なサンルーフから成るキャビンは、オープンカーにも匹敵するほど開放的である。

さて、噂されている新型「8シリーズ」はどんなものになるのだろう?

新型8シリーズ どうあるべき?

今回BMWは、この最上級車で、同じ過ちを繰り返さない為に、奇抜な事は避けてくるであろう。

であるから、車名とボディスタイルが同じだからといって、多くの共通点を期待しない方がいい。

先駆者としてではなく、新しい8シリーズは既存の市場へエントリーする多くのクルマのなかの1台なのである。

E31とは、BMWが忘れてしまいたい失敗作であるか?

多分そうであろう。しかし、このクルマが提案した先進のテクノロジーや最上級車として確立させたイメージやステータスは忘れるべきではない。

それらは、他のBMWのレンジにも波及しているのである。このクルマはその生涯において、存在の理由があったクルマであり、また、BMWのプレステージなステータスを確立するにあたって重要な役割を果たしたクルマでもある。

このクルマの10年の生涯に直面したさまざまなチャレンジをして、8シリーズはBMWの底力を世界に知らしめたクルマという見方もある。

疑いようのない失敗作ではあるが、BMWの取った賢明な事後策によって、死地から救い出されたのである。